派手なアクションだけでなく、狂気やスゴみ、そして人間の機微も、完璧なまでに演じ切った柳楽優弥さんと笠松 将さん。こうして織りなされた壮大な人間ドラマこそ、『ガンニバル』シーズン2ならではの醍醐味です。ドラマの見どころを語った前編に続き、後半ではそこからふたりが受けた影響、そして世界に向かう決意を明かします。

柳楽優弥さん
俳優
(やぎら・ゆうや)1990年生まれ、東京都出身。2004年公開映画『誰も知らない』で、「第57回カンヌ国際映画祭」男優賞を最年少の14歳で受賞。近年の出演作は、映画『ディストラクション・ベイビーズ』『HOKUSAI』、ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』『母、帰る~AIの遺言~』『ゆとりですがなにか』シリーズ、『ライオンの隠れ家』など。
笠松 将さん
俳優
(かさまつ・しょう)1992年生まれ、愛知県出身。2013年から本格的に俳優として活動する。2020年『花と雨』で長編映画初主演を果たし、近作ではドラマ『君と世界が終わる日に』(Hulu)、配信作品『全裸監督2』(Netflix)、『The Narrow Road to the Deep North』(Prime Video)、日米合作『TOKYO VICE』(HBO max)、配信作品『ガンニバル』(ディズニープラス)などに出演。2022年、CAAとの契約を発表し、国内外で活躍する。2023年、個人事務所設立。

英語の勉強は、いつまでたっても七転び八起きです

「ターニングポイントとなる作品になりました」(柳楽さん)

――激しい格闘とアクション、長期にわたる地方ロケ…と大変な現場を経験して、自身の変化や成長はどのように感じていますか。

笠松:柳楽さんが最初に「破壊」「再生」というテーマを挙げましたが(詳しくは前編で)、僕にしてみると「葛藤」と「覚悟」の物語だったかと思います。ストーリーは重たいし、やっててしんどいけど、同時にシーズン1から2にかけて自分の人生のいろんな覚悟と決断をしたタイミングとも重なって。特別な作品になりました。
実はその前後でも、いくつか作品に参加して、高いレベルに必死でくらいついて。その中に『ガンニバル』があったのですが、「やりきった」と心底思えて、志高い仲間といい作品にも出会えて…。なんていうか、これ以上のものがこの先できるんだろうか、と考える時期がありました。燃え尽きたのとも違う、気持ちはすごく前向きなんだけど、しばらくは「いいかな」という感じになったのは、初めてでした。

柳楽:僕もめちゃくちゃ刺激を受けたし、成長できたと思います。そもそも、『ガンニバル』(シーズン1は2022年配信)は、ディズニープラスの日本作品としては初期につくられたものといっていいでしょう。だからこそ、いい作品にしたいという思いがみんな強かった。それでも、シーズン1の撮影時はまだ「世界に届ける」ことを意識しづらかったのですが、配信開始後にいい反響を受けて、それが自信になって。自分のなかでは、ターニングポイントとなる作品です。

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自分のなかでは、ターニングポイントとなる作品です。(柳楽さん)
――いま改めて、「Jドラマ」(=世界配信の日本ドラマ)が世界に誇れるのはどんなところにあるでしょうか。

柳楽:日本には、ドラマをたくさんつくってきた圧倒的な経験があります。そこに、映画の現場に感じるハートの強さや誠意が合わさったのが、Jドラマだと思います。アメリカにも韓国にも素晴らしいドラマはたくさんあるけど、2000年前後の日本のドラマはやっぱりおもしろいし、僕自身も大好きです。最近自分がドラマを体験して改めて感じたのは、ストーリーやつくり方のうまさでした。その知恵と技術をさらに応用していけば、Jドラマはすごいものになる。世界を席巻する時代が、5年以内には絶対に来ると思ってます。そのとき、自分がちゃんと準備できているかどうか、とても大事ですね。

笠松:それ、あまり言うとみんなに気づかれちゃいますよ(笑)。

柳楽:じゃ、大声では言わず、虎視眈々とやっておこう。

笠松:それから日本のドラマはやっぱり原作がいいですよね! アニメや漫画、歴史もの…。

柳楽:うん、原作は日本ものがいちばんすごい!

笠松:海外の撮影現場も経験してきて、時間の使い方や効率のよさはやっぱり日本がすごいなと感じました。一方で、海外作品はマーケティングやブランディングがものすごくうまい。両方のいいところを合わせていったら、どの国にも敵わないエグい作品ができると思ってます。

笠松 将さんと柳楽優弥さん
時間の使い方や効率のよさはやっぱり日本がすごい(笠松さん)

「英語の自己紹介だけはめっちゃうまくなりました」(笠松さん)

柳楽:お互い、英語はずっと頑張ってるよね。でも、いつまでたっても七転び八起きで。

笠松:いや、ほんとそれです。

柳楽:前の日は調子よくしゃべれて、このままいい感じでいけるんじゃないか?と思った翌日には全然話せなかったり。アップダウンがあるのは仕方ないと思うけど、やっぱり語学学習には支え合う仲間が必要なんですよね。

笠松:本当にそう思います。とりあえず今のところ、自己紹介だけはめっちゃうまくなりました。もう何度もやっているので。でも、もっと作品を観てくれる人を増やすために、上手にアピールできるようになりたい。柳楽さんは何度か海外の学校で学んでいらっしゃいますけど、ほかにどんな勉強をやってますか?

柳楽:AIのアプリと会話してるよ。

柳楽優弥さん
もっと作品を観てくれる人を増やすために、上手にアピールできるようになりたい(笠松さん)
――では改めて、『ガンニバル』シーズン2の見どころを教えてください。

柳楽:このドラマは、ひとつの小さな村が舞台ではあるけれど、扱っているのは普遍的なテーマだと言えます。だから、空想だけのとんでもなく遠い話ではないんです。僕らが生きている今は、少し前の「普通」がもう普通ではなくなったり、いろんなことがニュースタンダードとして塗り変わっている。自分だったら…、時代や場所が変わったら…と、考えながら観てもらえればと思います。

笠松:そうですね、物語の時代は違うけれど、現代の世情に置き換えてみれば、その縮図が村の中にあると言うこともできます。
誰でも社会のなかで生きていれば、どこかの組織に属したり、なんらかのポジションを背負ったりするもの。ドラマでは、それぞれの役がそれぞれの悲痛を叫んでいます。観る方も、自分はどこの誰に近いんだろうと思いながら見ることができる。そこがいいところであり、見どころだと思います。

笠松 将さんと柳楽優弥さん
ひとつの小さな村が舞台ではあるけれど、扱っているのは普遍的なテーマ(柳楽さん)

『ガンニバル』シーズン2

都会から遠く離れた山間の“供花村”に、家族と共に駐在として赴任した阿川大悟(柳楽優弥)。警察官としての信念で真相を探る大悟だが、やがて村の穏やかな日常が“おそろしい”顔を見せ始める。次々と起こる不可解な出来事に、友好的だがどこか不気味な村人たち…大悟はすべてに疑心暗鬼になり、狂気の淵へ追いつめられてゆく。シーズン2では、村の秘密を守ろうとする後藤家がついに一線を越え、警官隊と衝突。おかしいのは自分か、やつらなのか…“人間の本質”を暴く、驚愕の結末とは。全ての鍵は、呪われた一族・後藤家の過去にあった…。
2025年3月19日(水)よりディズニープラス スターで独占配信中。

■原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
■監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦
■脚本:大江崇允、廣原暁
■プロデューサー:山本晃久、半田健
■アソシエイトプロデューサー:山本礼二
■出演:柳楽優弥、笠松 将、吉岡里帆

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この記事の執筆者
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PHOTO :
三宮幹史(Trival)
STYLIST :
長瀬哲郎(柳楽さん)、柴原啓介(笠松さん)
HAIR MAKE :
勇見勝彦(THYMON Inc.)(柳楽さん)、MIZUHO(Vitamins)(笠松さん)
EDIT :
南 ゆかり