竹製のレールを涼しげに走る水に流れるそうめんをいただく「流しそうめん」。そうめんをすくい上げるのが楽しく、子どもから大人まで一緒になって夢中になれる野外イベントです。夏の思い出として記憶している方もいらっしゃるのではないでしょうか? なんと、流しそうめんでギネス記録に挑戦し、地域興しをしようとしてきた人たちもいるのだとか。
そこで、ギネス記録と同じ長さの流しそうめん台をつくるのはどのぐらい大変なのか徹底取材! 竹を使った流しそうめんの魅力に迫ります。
今回、流しそうめんについて教えてくださったのは、2011年に当時のギネス記録を更新した世界流しそうめん協会 会長の上田悠貴さん。「7月〜8月は、地域のイベントなどでも流しそうめんをすることが多く、当協会でも全国を出張して回っています」と快活に語る上田さんに、お話を伺いました。
ギネス記録は3km以上!流しそうめん台をプロに頼むと、いくら?
ギネス認定記録1位は、奈良県御所市の3,317m
現在の流しそうめんの距離でギネス記録1位は、2016年8月奈良県御所市の挑戦記録です。その長さ、なんと3,317m。東京スカイツリーの高さの5倍以上にもなります。
流し始めからゴールまで、そうめんの旅は1時間以上に及んだそう。この挑戦は無事、ギネス認定条件を満たし、現在ギネスのサイトにも掲載されています。
ギネス1位の流しそうめん台、プロがつくると約400万円!
全長3km以上となかなかイメージできないスケールのギネス記録。そうめんがしっかり流れる台を用意するだけでも大変そうです。もし、プロに同じ長さの流しそうめん台を依頼すると、ズバリいくらかかるのでしょうか?
「3,317mの流しそうめん台を製作するとしたら、竹の伐採から加工、設営まで含めて300〜400万円ぐらいでしょうか。かなり大掛かりになります。立地や手に入る竹の状況にもよりますが、竹は400〜500本は必要になりますね」(上田さん)
竹500本ともなると、まず使える竹を探して伐採するだけでもかなりの手間と時間がかかりそうです…! このギネス記録を打ち破るのはなかなか至難の業ですね。
個人でつくるのは意外と大変!竹の流しそうめん台をつくるポイント
直径8〜13cm、ある程度の太さが必要。個人でつくると竹の用意が一苦労
半分に竹を割ったシンプルな流しそうめん台は、ギネス記録は難しくても、家庭や地域のイベントで楽しむ規模であれば簡単につくれそうに思えます。しかし、上田さんによると個人で製作するのも大変なのだそう。
「流しそうめん台に適した竹は、直径8〜13cm程度のもの。ある程度の太さが必要です。一般の方はこのサイズの竹を手に入れるところから、なかなか大変でしょう。もし近くに竹林があったとしても勝手に切るわけにはいきませんからね。また、竹の伐採には鋸(のこ)や鉈(なた)を使います。慣れない方にとっては、なかなかの大仕事です」(上田さん)
丸一日かかるかも?職人だからできる、竹の加工
適したサイズの竹が手に入ったら、竹を加工します。鉈を使って縦半分に割って節を丁寧にくり抜き、最後にささくれをなくしツヤを出すために磨きをかけます。上田さんは、これも「職人の仕事」と語ります。
「さまざまな竹細工をつくっている職人にとっては、流しそうめん台はシンプルです。でも、それは職人だからできること。スパンっと綺麗に割ることも、竹を傷つけることなく綺麗に節を取り除けるのも技術あってこそできます。もしご家庭で竹を割るところから始めると、竹1本・長さ1.3mの台をつくるのに丸一日はかかるのではないでしょうか」(上田さん)
自宅や地域のお祭りで流しそうめんを楽しむときのポイント
竹製の流しそうめんセット、家庭用は¥3,500〜購入可能!
世界流しそうめん協会では「多くの人に気軽に、本格的な竹の流しそうめん台を楽しんで欲しい」と、竹製の流しそうめんセットをオンラインショップ「流しそうめん.com」で販売しています。
セットには竹のレールと竹でできた三脚がついており、届いたら組み立てるだけ。1.3mのレール1本のセットは¥3,500(税込)。パーティーやバーベキューなど大人数のイベントにぴったりなレール3本入り(全長6m)のものは¥12,000(税込)で購入できます。
「竹製の流しそうめんセットは、すべて京都の天然の竹を使っています。竹は非常に繊細です。表面の青さと断面や内側の瑞々しい色合いを楽しんでいただくために、注文を受けてから制作する『受注生産』としています。そのため、発送まで約5日お時間をいただいております。イベントなどで使う日が決まっている場合は、早めにご確認ください」(上田さん)
竹の扱い、気をつけるポイントは「カビ」
上田さんによると、竹の流しそうめんセットの取り扱いで気をつけたいポイントはカビなのだそう。
「天然の竹は、多くの水分を含んでいます。そのため、時期や保管方法によっては、すぐにカビが生えてしまう可能性もあります。特に一度水を流して使用すると、カビが発生する可能性が高くなります。保管状態によっては複数回使えることもありますが、基本的に1度のみの使用とお考えください」(上田さん)
また、協会で販売している流しそうめんセットでは、カビを防止するために発送前に水を使った洗い処理は行っていないそう。そのため、使用直前にレールに熱湯を流して殺菌処理を行い、タワシなどで汚れを落とすことも準備のポイントだそうです。
ベストは水場がしっかりしていること。出張サービスの利用も
実際に流しそうめんを行うときはどんな設備環境が必要なのでしょうか? 上田さんによると、レールを置ける広さがあれば特に条件なくどこでもできるそう。
「理想的なのは、水を引いてレールに流せる環境と排水環境があることです。でも、水場がなくても工夫次第で簡単に楽しめます。屋内、屋外どちらでも構いません。流しそうめん台を置いてみんなで囲めるスペースがあることが、唯一の条件でしょうか」(上田さん)
また、協会では流しそうめんの出張サービスも行なっています。
「2011年のギネス世界記録樹立に関わったスタッフが、全国みなさんの町、会社、イベントへそうめんを流しに行きます。季節を問わず、1年中受け付けています」(上田さん)
出張サービスの申し込みは、開催地と希望のレールの長さ、参加人数を伝えるとスムーズなのだそうです。
本格派な竹製と、便利なプラスチック製。それぞれの魅力は?
最近ではプラスチック製の流しそうめん台も出てきています。竹製とプラスチック製にはそれぞれのいいところがあると上田さんは話します。
「プラスチック製の利点は、その手軽さです。洗って保管すれば毎年使えますし、軽いので持ち運びもしやすい。その点、竹製は虫やカビが発生する可能性から翌年は使えませんし、持ち運ぶのにもそれなりの重さがあります。
一方で、竹製にはプラスチックでは再現できない重厚感があります。外側の緑、内側のクリームがかった白。優しい艶があり、見た目はやはり竹製のものがいいですね。また、囲んだレールや流れる水からほのかに竹の香りがするのも魅力です。出張流しそうめんのイベントでは、必ず竹製のものを使っています。
手軽に何度も楽しむならプラスチック製、天然の竹の香りと重厚感を感じる本格的な流しそうめんを体験するなら竹製がおすすめです」(上田さん)
子供も大人も一緒になって、笑顔が広がるところが魅力
今では夏のお祭りで定番となった流しそうめんですが、その始まりは意外にも最近。最初に流しそうめんが行われたのは昭和30(1955)年なのだそうです。
「割った竹に水を走らせ流す形が一般的に全国に広がったのは、宮崎県高千穂にある『千穂の家』というお店が始まりです。お店の入り口には『昭和参拾年創業 元祖流しそうめん』と書かれた看板があります。
ただ、水にそうめんを流す文化の発祥は諸説あり、沖縄では琉球時代にそうめんを流したという話もあります。夏場に水とそうめんで涼む文化は、古くからあったようです」(上田さん)
宮崎のお店で始まった流しそうめんは、なぜ全国に広まったのでしょうか。流しそうめんの魅力を上田さんに伺いました。
「なんといっても、みんなが笑顔になるところです。子どもから大人まで横に並んで、そうめんを真剣に取ろうとする。キャッチできると、一緒になってワイワイ盛り上がるんです。その一体感と『取れた!』というときに自然と笑顔が広がるところが、流しそうめんの大きな魅力です」(上田さん)
集まった人が一緒になって盛り上がる流しそうめん。お祭りやイベントの楽しみに取り入れてみませんか? 涼しげでさっぱりするだけでなく、笑顔が広がって参加者みんなの仲が深まりますよ。もし町や会社など、比較的大人数で実施したければ、ぜひ世界流しそうめん協会に出張のご依頼を。プロの手による、天然の竹の流しそうめんを楽しめます。思い思いにこの夏を涼しく過ごしましょう。
問い合わせ先
- 世界流しそうめん協会
- Mail:info@nagashisoumen.com
- 営業時間/9:00〜18:00
TEL:050-3553-0774 - 住所/京都府綴喜郡井手町多賀西北ノ代52-5(NPO法人JAFREC内)
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 廣瀬 翼(東京通信社)