夢の話だと思っていた宇宙旅行に行ける未来が、すぐそこまで迫っています。

宇宙はこれまで、宇宙飛行士など特別な訓練を積んだ人しか行くことができない場所でした。しかし、近年は民間企業が一般人を乗せて宇宙へ行くプロジェクトの開発が加速。まだ予定段階ですが、試験が順調に進めば2019年にも実現する可能性があります。

今回は、世界初の商業的な宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック社と提携し、日本人向けの宇宙旅行サービスを取り扱うクラブツーリズム・スペースツアーズの代表・浅川恵司さんに、気になるお値段やプランの内容、宇宙旅行で一体どんな景色が見られるのかなどを伺いました。

世界初の民間企業による宇宙旅行を目指して

すでに民間人が宇宙へ行ったが……お値段は55億円!

過去に実施された宇宙旅行として、ロシアのスペースアドベンチャー社の事例があります。このプロジェクトは、2001年4月から2009年9月までに計7人の民間人を国際宇宙ステーションまで送り届けるものでした。

ただし、これは完全な民間資金ではなく国家資金の援助があってのもの。その上で最初の旅行者の参加費は、8日間の滞在で2,000万ドル(約23億円)。最終的にはなんと5,000万ドル(約55億円)にまで費用が跳ね上がったのだとか! さらには6か月間のロシアでの訓練が必須など、一般人にとっては現実的ではありませんでした。

「スペースアドベンチャー社の例を考えると、すでに民間人の観光による宇宙旅行は実現しているといえます。ただ、私たちがイメージしているプランはもっと安価で、民間資金だけで行われるもの。長期の訓練を必要としないものです」(浅川さん、以下同)

現在、完全に民間での宇宙旅行を進めている企業は世界に数社ほど。その中でもっとも実現に近づいているのは、クラブツーリズム・スペースツアーズの提携するヴァージン・ギャラクティック社と、アマゾンCEOのジェフ・ベゾスがオーナーを務めるブルー・オリジン社の2社です。

この2社が目指す宇宙旅行は、ともに「準軌道飛行」と呼ばれるもので、合計2時間ほどのショートトリップになります。一体どんな旅なのでしょうか。ヴァージン・ギャラクティック社の例をみてみましょう。

ロシアの有人宇宙船「ソユーズ」

高度100kmで体感する、4分間の宇宙観光

窓の外には青く美しい地球が広がる無重力空間

株式会社クラブツーリズム・スペースツアーズ「10分間でわかる宇宙旅行」

出発地はアメリカ・ニューメキシコ州。民間宇宙港「スペースポート」に集まった参加者は、フライトスーツを着て宇宙船『スペースシップ2』に乗り込みます。『スペースシップ2』は母船『ホワイトナイト2』に運ばれ、高度15kmの上空で切り離されると、ロケットエンジンが点火。マッハ3.3という高速で宇宙空間へと向かいます。

ホワイトナイト2とスペースポートアメリカ。参加者はここから宇宙へと旅立つ
ヴァージン・ギャラクティック社のパイロット用フライトスーツを手がけるのは、山本耀司氏がディレクターを務めるアディダスのファッションライン「Y-3」。参加者もファッショナブルなスーツで宇宙へ旅立てるかも?

この時、体にかかる重力は約3G。地球の約3倍の重力を感じながら、90秒ほどで高度100kmに到達します。その間、窓の外を見るのを忘れずに。高度が上がるにつれて、空の色がコバルトブルー、紫、藍色、そして漆黒へと変わっていきます。

打ち上げは日中。地球では青く見える空は、宇宙では昼間でも漆黒に染まる

高度100kmに到達すると、約4分間の宇宙観光。シートベルトを外して、このツアーの目玉である無重力空間を楽しめます。窓の外には青い地球が見え、漆黒の宇宙空間には宝石のように澄んだ星が浮かびます。わずか数分間ではありますが、忘れられない体験になることは間違いありません。

宇宙観光が終わると、再びシートベルトを着用し、地球へと帰還。帰り道は6Gの重力を体に受けながら、出発した宇宙港へと戻っていきます。

参加条件と、待ち遠しい開始時期は?

条件は「健康な方」。 現在までに19名の日本人が申し込み!

聞くだけでわくわくしてくる宇宙旅行ですが、参加条件はあるのでしょうか。

「18歳以上の方であれば、基本的にどなたでも参加できます。3G、6Gと地球上よりも重力がかかりますが、健康であれば問題ありません。フライト前には3日間の訓練を受けていただきますが、内容ははっきりと決まっていないものの、無重力状態での基本的な体の動きなどを学ぶくらいで、あとは循環器系、脳神経などのチェックが主なので、通常の健康体の方であれば難しいことはありません」

現在、すでに19名の日本人が申し込みをしているそう。申し込みをされているのは男性が15名、女性が4名。男性は7割が企業の社長で、やはりお金に余裕がある人が多いそうです。

「みなさん『死ぬまでに宇宙に行ってみたい』『宇宙から青い地球を眺めてみたい』という強い思いで参加を決めていますね。旅行が好きで、南極やアフリカの奥地などの行きにくい場所も制覇した人、パイロット免許を持っていて空が好きな人などもいらっしゃいます」

開始時期は「安全になってから」

次に気になるのが安全面。ヴァージン・ギャラクティック社では2014年のテスト飛行時に墜落事故が起きたこともあり、安全性には万全を期します。

「当初、宇宙飛行は早ければ2008〜9年ごろに実現予定でしたが、開発が遅れ、その中で2014年には事故が起こってしまいました。そのため、ヴァージン・ギャラクティック社は『安全になるまで営業はしない』と言っています。そのため早ければ2019年の打ち上げを予定していますが、さらに遅れる可能性は大いにあり、確実な開始時期を言うことはできないのが現状です」

7月に行われたテスト飛行にて、スペースシップ2は高度52km、マッハ2.47(時速3,026km)を達成。宇宙まであと48km!

気になるお値段や、値下げの可能性は?

目指すは「高級車1台分」

では、気になるそのお値段は? 浅川さんによれば、現在の参加費用は1名あたり25万ドル(約3,000万円)。ロシア・スペースアドベンチャー社の5,000万ドルに比べるといぶん下がりましたが、まだまだ行ける人が限られる金額です。今より安価になる可能性はあるのでしょうか?

「宇宙旅行が実現し、さまざまな企業が実施するようになれば、価格は確実に下がっていくでしょう。2014年にJAXAと行った『宇宙旅行市場調査』では、ご紹介した内容での宇宙旅行の適正価格は600万円とされています。そのため私たちも、将来的にはこの位に下がることを期待しております。」

600万円というと、およそ高級車1台分。これならば参加できる人も増えそうです。高級車を買うか、2時間の宇宙旅行を楽しむか。そんな選択肢に悩む未来が、もうすぐやってくるかもしれません。

広がる旅行プラン 宇宙に滞在できる計画も

「宇宙ホテル」12日間滞在プランは10億円から

もっとも早く実現しそうなのはヴァージン・ギャラクティック社のような準軌道飛行ですが、他にもさまざまなプランがあります。

アメリカのアクシオン・スペース社は、国際宇宙ステーションに10日間滞在できる計画を2020年までに実施予定。滞在費用は5,500万ドル(約61億円)です。

宇宙開発スタートアップ企業のオリオン・スパンも、宇宙に滞在できるホテル「オーロラ・ステーション」の計画を発表。上空320kmの軌道上に打ち上げた人工衛星で、無重力空間の宇宙遊泳、1日約16回の日の出と日の入りの観察が楽しめます。南極、北極両方のオーロラを宇宙から見られる可能性もあるのだとか! お値段は12日間で950万ドル(約10億円)。

また、今後宇宙旅行がメジャーになれば日本から準軌道飛行の打ち上げの可能性もあるそう。

「高度100kmからは、だいたい1,000km先まで見ることができます。仮に東京で打ち上げると、上空から九州まで見える計算です」

実施するには法律の整備などさまざまな問題があるそうですが、ぜひ実現してほしいですね。

「月の裏側観光」ができる日も遠くない!

さらに、浅川さんは宇宙旅行が目指す到達点として、こんな話も語ってくれました。

「やはり、月に降り立つことはひとつのゴールだと思っています。その最大の目玉は、地球から決して見ることができない月の裏側観光。月の裏側は太陽の光が届かない暗闇で、頭上には地球上では見ることができないほどの満天の星空が広がっているんです。月は片道3日で行けるので、最短で1週間あれば実現できます。まずは高度100kmからですが、いずれは民間人が月面旅行をする未来がやってくると思っています」

月の裏側は誰も踏み入れたことのない土地。そこから見えるのは、漆黒の宇宙に広がる無限の星かもしれない

宇宙飛行士のガガーリンが史上初の宇宙飛行を行ってから、およそ半世紀。民間人が宇宙へ行ける未来まであと少しです。「やっぱり地球は青かった!」しみじみとそう言ってみたくありませんか? 夢が現実になるようなこの壮大なプロジェクト、宇宙にロマンを感じる方は、ぜひ詳しく調べてみてくださいね。

 
浅川恵司さん
クラブツーリズム・スペースツアーズ代表取締役社長
(あさかわ けいじ)2005年クラブツーリズム(株)に転籍。ヴァージンギャラクティック社宇宙旅行の日本での公式代理店交渉をまとめ、日本でのマーケティングや販売活動に携わる。2014年1月、「世界初の民間宇宙旅行」を日本で専門に販売するクラブツーリズム・スペースツアーズの社長に就任。
※プロジェクトの詳細は浅川さん著作「集合、成田。行き先、宇宙。」にて。

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WRITING :
小沼 理
EDIT :
大村実樹(東京通信社)