地中海沿岸を7泊8日かけて航行するラグジュアリークルーズ船、セブンシーズ エクスプローラー。この最高峰といわれるクルーズ船での旅を、全5回でご紹介していきます。本記事は3回目。

地中海沿岸を7泊8日かけて航行するセブンシーズ エクスプローラー。“究極のオールインクルーシブ”といわれるだけあって、寄港地でのほとんどのツアーも料金に含まれています。船の針路はイタリアからフランスのコートダジュールへ。寄港したアンティーブを起点に、内陸の中世の町を歩いてみました。

「香水のキャピタル」グラースで、世界でひとつだけの香りづくり

石造りの家並みが続くサン・ポール・ド・ヴァンス
16~17世紀に建造された石造りの家並みが続くサン・ポール・ド・ヴァンス。夏は観光客で賑わいますが、他の季節の光も美しいそうです

フランス・コートダジュールでの最初の寄港地はアンティーブ。9タイプあるツアーメニューには、ニースやカンヌなど魅力的な地名や、地元のマーケットでの食体験やオリーブオイル体験、もちろん寄港地のアンティーブなど、興味深い内容ばかり。その中で俄然興味を引いたのが、グラースでのパフュームづくり&サン・ポール・ド・ヴァンスの8時間ツアー(有料)。自分だけの香りをつくってみたい!

アンティーブから車で約40分に位置するグラースは、ラベンダーやバラ、ジャスミンなど薫り高い花々のフィールドに囲まれた土地。16世紀に香水づくりが始まり、18世紀には「香水のキャピタル」と呼ばれるまでに、その名が世界に広まりました。シャネルNo.5が生まれたのも、ここグラースです。

老舗香水ブランド、フラゴナール
創業1782年の老舗香水ブランド、フラゴナール。工場見学ができます

香水づくりはフラゴナール香水歴史工場に隣接した建物にて。まずは香水の歴史や種類、成分など基本のお勉強から始まり、香りを嗅いでイメージを参加者同士でディスカッションするなど、まるで学校のよう。そしてお待ちかねの香水づくりです。各テーブルには数本のボトルとビーカー、スポイトなどが用意され、さながら化学実験です。3種の白いキャップのボトルがオレンジ、シトロン、ベルガモットのベースとなる香り。それにマンダリンやネロリ、ラベンダーなど6種の香りを加えていきます。

フラゴナールにて、香水作り
かわいい実験室のような雰囲気

私が目指す香りのイメージは、「初夏の気分」。ベルガモットをベースに、ヴェルヴェンヌ(レモンバーベナ)やネロリを加えてみます。くんくん。どうも、違います。もっと爽やかな感じにするには? と、さらにヴェルヴェンヌとラベンダーをプラス。さらに、あれもこれもと加えすぎて、何がなんだかわからなくなってきたところに、各テーブルを回っていた先生が救世主のように登場。つくりたい香りのイメージを伝えると、テスターの紙に鼻をつけて深く吸い込み、目を閉じて印象を膨らませているようです。

香水作りのアドパイスをする先生
先生が香りから想起されるイメージを膨らませ、的確なアドバイスをしてくれます

「プチグレインを加えてはどう? トップノートはスモーキーなフランキンセンス、ベースは春の森のような香りよ」

世界に一つだけの手作り香水
世界でひとつだけ、自分でも二度とつくれない配合の、「夏至」という名のパフューム

少しずつプチグレインを加えて、思い通りの爽やかな香りに到達。香水のタイトルはフランス語で「夏至」を意味する「Equinoxe」にしました。手書きのラベルを貼り付けて、完成。世界でひとつだけ、自分の香りです。

パフュームづくりの後はフラゴナール香水歴史工場の見学、そして併設のショップでお買い物。新作を含め、オーデコロンやソープなど、充実した品ぞろえ、お値段もリーズナブルです。

芸術家たちを魅了する丘の上の小さな村へ

サン・ポール・ド・ヴァンス
古代ローマ時代から防衛施設が築かれ、教会を中心に人々が移り住んだサン・ポール・ド・ヴァンス

グラースから東へ向かい、多くのアーティストの心をとらえた中世の村、サン・ポール・ド・ヴァンスへ。光が美しいこの村を、19世紀に見出したのは、色使いが印象的な画家ポール・シニャックやラウル・デュフィなど。そして1920年代、シャガールやマチス、ピカソなどの歴史に名を刻む巨匠たちがこの村に滞在しました。そのきっかけとなったのが、小さなホテル「ロビンソン」です。

おしゃれなレストランやカフェが並ぶ街並み
城塞内にはステキなレストランやカフェがあちこちに
ラ・コロンブ・ドール
かつての「ロビンソン」、今は「ラ・コロンブ・ドール」として営業。レストランだけでも訪れてみては?(要予約)

城塞の入口近くにあるホテル「ロビンソン」のオーナーは絵画コレクターでもあり、画家には宿泊料の代わりに作品を渡してもらうことを提案。画家たちは長期滞在しながら、じっくりキャンバスに向かったそうです。現在は「ラ・コロンブ・ドール」と名前が変わったものの、当時の作品が惜しげもなく飾られ、「美術館のようなホテル」の異名をとっています。けれど、一度だけ盗難に合い、シャガールの作品以外、ほとんどの作品が消えてしまったことが。なぜ、シャガールの作品が盗まれなかったのでしょう? 実は、サイズが大きすぎて、部屋から出せなかったのだそうです。

ペタンクの広場
ペタンクでボールのラインを読む男性。木陰にあるのは、イヴ・モンタンがかつて経営していたカフェ

「ラ・コロンブ・ドール」の近くのペタンク(フランスでポピュラーな球技)の広場では、鉄球を真剣に転がす人々の姿が。その奥には俳優にしてシャンソン歌手のイヴ・モンタンが経営していた「カフェ・ド・ラ・プラス」があります。イヴ・モンタンがシモーヌ・シニョレと出会い、結婚式を挙げたのも、この村です。

城塞内にあるアートギャラリー
城塞内には、斬新なモダンアートのギャラリーも
マーク・シャガールの墓石
マーク・シャガールの墓石。石を供えるのはユダヤの慣習だそうです

城塞内は車両通行が禁止されています。16~17世紀に建造された建物が軒を連ねる石畳の小道や石造りの階段を歩いていると、画家たちが光と色彩を求めてこの村へ訪れた気持ちがわかるような気がします。そして村の南端の墓地には、20年間もここに暮らした画家シャガールと2番目の妻が眠っています。

アンティーブから足を延ばして、中世の名残が香る2つの村グラースとサン・ポール・ド・ヴァンスへ。次の寄港地は、フランス最大の港町マルセイユです。

問い合わせ先

シリーズ「セブンシーズ エクスプローラーで行く!麗しの地中海クルーズ」

この記事の執筆者
TEXT :
古関千恵子さん ビーチライター
2018.10.23 更新
ダイビング雑誌の編集者を経てフリーに。海外旅行専門誌でもビーチを担当。月に1~2回、海外を中心に国内外のビーチリゾートへ通うこと、かれこれ四半世紀以上になる。女性誌の旅記事、ライフスタイル誌の連載、ウェブの連載ほか、共著に『奇跡のリゾート 星のや竹富島』など。世界のビーチガイド「World Beach Guide(http://www.world-beach-guide.com ) 」主催 好きなもの:海でボーッとすること、ボディボード、ダイビング、ビーチパーティー、Jazztronik、H Zettrio、渋谷Room
公式サイト:古関千恵子ホームぺージ
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WRITING :
古関千恵子
EDIT :
安念美和子