地中海沿岸を7泊8日かけて航行するラグジュアリークルーズ船、セブンシーズ エクスプローラー。
ワンランク上のオールインクルーシブスタイル(申し込み時に支払う旅費に、船内での宿泊費や食費など基本的な料金がすべて含まれ、その都度支払いが生じないスタイル)が特徴で、些末なことに気を取られることなく、優雅に船旅が楽しめます。寄港地ツアーもほとんどが無料。
この最高峰といわれるクルーズ船での旅を紹介している本シリーズ、4回目の本記事では、船はフランスの海岸線を進み、プロヴァンスのマルセイユへ。フランス最古にして、パリに次ぐ都市を巡りました。
金色の聖母マリアが見守る、フランスで最も歴史が長い港町
マルセイユでの寄港地ツアーには、アヴィニヨンやサン・レミ・ド・プロヴァンスなどプロヴァンス地方を回るプランが多彩にあります。とはいえ、フランス最古であり、パリに次ぐ都市のマルセイユを素通りするのはもったいない。そこで4時間コースの「マルセイユ・シティ・ハイライト」をチョイス。ツアーもいいけれど、船内での時間も楽しみたいですから、短めのコースにしてみました。
ギリシャ系のフォカイア人によって紀元前600年に築かれた天然の良港・マルセイユは、以来、世界各国から人々が訪れ、さまざまな伝統文化が混じり合ったメルティングポットな港町です。隆盛と衰退を繰り返し、地中海における覇権を争ったことも。そのため旧港の入口には、聖ヨハネ要塞と聖二コラ要塞、ふたつの石造りの城塞が両脇をがっしりと守っています。
街の中心である旧港には、ヨットやプレジャーボートがびっしり。太陽の光が白いマストに反射して、ヴァカンス気分を盛り上げます。湾の突き当りのベルジュ河岸には毎日、横づけした船から水揚げしたばかりの魚を売る屋台が並びます。鮮魚を見繕う人々、その上空をけたたましく鳴きながら飛び交うカモメたち、活気に満ちた朝の風景です。
クルーズ客を乗せたツアーバスは旧港を見下ろす丘の上に立つ、ローマ・ビサンチン様式のノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院へ。鐘楼の上にはこの街の守護聖人、聖母マリアがキリストを抱いて、街や港、航海に出る船を見守っています。人々は親しみを込めて“ボン・メール(良き母)”と、聖母マリアのことを呼ぶそうです。
ゴールドをふんだんに使った、精緻な壁画の美しさに心奪われる聖堂からテラスへ出ると、海抜154メートルから見渡す、地中海のパノラマビューが広がります。深い藍色の海に浮かぶ白い石灰質の島々のひとつには、小説『モンテクリスト伯』で描かれたイフ島も。この島は16世紀に要塞が建設され、それが後に牢獄として使われ、政治犯や伝染病の患者などが投獄されました。小説では主人公が無実の罪でここに囚われるのですが、それはあくまでも創作のはず。けれど、実際に“エドモン・ダンテスの牢獄”という独房もあるのだそうです。
水飛沫きらめく噴水のロンシャン宮は市民の憩いの場
ツアーバスは続いて、19世紀に建造されたロンシャン宮へ。ここは干ばつと水不足対策のために、デュランス川から市内へ引いた運河の終点に、7年かけて建てられた宮殿です。翼を広げたような建物の中央から、水飛沫を立てて水量たっぷりの噴水が流れ落ちています。周囲の芝生には、涼を取りに訪れた地元の人々がくつろぐ姿も。賑やかな旧港とは趣が異なる、のんびりとした空気を感じます。
バロック様式のふたつの尖塔が天を突くレフォルメ教会の前を通り抜け、旧港へと続くのが、メインストリートのカヌビエール通り。かつて縄や網の工房があった地域だったことから、“麻”を意味する“カネーブ”が語源になったそう。約1キロメートルにわたる通りには、18~19世紀に建てられた堅牢な石造りの建物が連なっています。街路樹の木漏れ日が外壁に揺れ、なかなかの風情ですが、どれも長方形の建物ばかりで、どこか味気がない? というのも、商業で栄えたマルセイユでは富裕層の興味の対象は、経済がもっぱら。他の都市のような時代ごとに移り変わる建築様式の豪邸が比較的少ないのだそうです。
ツアーの締めくくりは自由行動。お土産にマルセイユ石鹸を探すことにしました。自然素材のみで作った無添加の石鹸で、肌に優しく、きめ細やかな泡が特徴。旧港の露店のお兄さんの手づくりのものを購入。満足して船に帰りましたが、あとになって、名物のブイヤベースを食べ忘れたことが、少々の心残りに……。
マルセイユからポール・ヴァンドルを経てフランスを去り、次の国はスペインです。
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ラグジュアリークルーズ「セブンシーズ エクスプローラー」シリーズ
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- TEXT :
- 古関千恵子さん ビーチライター
公式サイト:古関千恵子ホームぺージ
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- WRITING :
- 古関千恵子
- EDIT :
- 安念美和子