知らずのうちに、ぶっきらぼうな言い方になってしまったり、家族に話すような言葉を使ってしまったりしていませんか? 確かに打ち解けることも必要ですが、特にビジネスの関係では「親しき仲にも礼儀あり」。丁寧な言葉遣いは、意外とできていないかもしれません。
そこで今回は、普段の意識がけのためにも、日本サービスマナー協会認定講師の上田由佳子さんに、つい使ってしまいがちな雑なフレーズを丁寧な言葉遣いに直していただきました。
上田さんによると、「きちんとした敬語はもちろん必要ですが、日常で使うには慇懃無礼(いんぎんぶれい)、つまり丁寧すぎてかえって無礼になることもあります。TPOに応じて使い分けてください」とのこと。これを踏まえて見ていきましょう。
NGなフレーズを「丁寧な言葉遣い」に直すとどうなる?
それでは実際に、雑で無礼なフレーズを、上田さんに丁寧な言葉遣いへと修正していただきました。
■1:「ぶっちゃけ、どう思いますか?」
【丁寧な言葉遣い】
「率直なご意見をお伺いしたいのですが、どのようにお考えでしょうか?」
「実際のところ、どのようにお考えでしょうか?」
「『ぶっちゃけ』とは『打ち明ける』が変化して『ぶち明ける』⇒『ぶっちゃけ』となった若者言葉。隠すことなく話すという意味です。テレビドラマや芸能人が使用していたことで流行った言葉ですが、くだけすぎる言葉ですので、品格のある話し方とはいえません。他の言い換え表現には、『本音を言うと』や『ありていに言えば』などがあります」
■2:「私的には良いと思うんですけど」
【丁寧な言葉遣い】
「私といたしましては、よろしいかと存じます」
「私といたしましては、問題ないかと存じます」
「私としては、差し支えないかと思います」
「『私的には~ですけど』という言葉は、『自分は良いと思うが、他の人はわからない』など、自分の主張をあやふやにし、逃げの姿勢が伝わってしまう言葉です。『私としては』、『内容に関しては』などのようには具体的ではなく、抽象的で意味が曖昧になり、相手にあやふやに伝わってしまいます。
以前、流行語大賞に入賞した、いわゆる若者言葉。やはり公式なきちんとした言葉ではないため、品格のある言葉とは言えずカジュアルすぎる言葉です。また『思う』は敬語ではありませんので、丁寧語の『思います』、謙譲語の『存じる』を場面に応じて使うと品格のある話し方になります」
■3:「お世話様です!」
【丁寧な言葉遣い】
状況に応じて、
「お世話になりました」
「お世話になっております」
「その節は大変お世話になりました」
「『お世話様です』は感謝の気持ちを込めた言葉ですが、『お世話になりました』や『お世話になってありがとうございます』を略したフランクな言葉による挨拶として使われます。『自分のために~してくれてありがとう』という思いをカジュアルに伝えるものですので、目上の方などに使うのは不適切です。感謝の気持ちを伝えるときはきちんとした敬語で伝えるということが、品格のある大人といえます。ただ、郵便や宅配便の方が荷物を届けてくださったときなど、日常的な関係においては、『お世話様です』を使っても問題ありません」
■4:「なるほどですね」
【丁寧な言葉遣い】
「おっしゃる通りです」
「左様でございますか」
「『なるほど』という言葉は、自分のものさしがあり、相手の意見に同意するときや自分がそれに対して納得する際に使います。目上の方を自分が評価していることになってしまいます。相槌として使ってしまいがちですが、特に目上の方には使用しないようにしましょう。また『なるほどですね』という言葉は文法としても正しい言葉ではありませんので、言葉遣いとして不適切です。方言として使っているところは例外です」
■5:「すいません」
【丁寧な言葉遣い】
「大変失礼いたしました」
「申し訳ございません」
「お恥ずかしい限りです」
「『すいません』という言葉は、『すみません』がなまった言葉です。ですので、日常会話では間違いとはいえませんが、品格のある言い方とはいえません。ただ『すみません』にしても、敬語ではなくカジュアルな表現のため、目上の方に対しては謝罪のときには『申し訳ございません』『大変失礼いたしました』などを遣い、依頼するときは『恐れ入りますが…』などのクッション言葉を遣います」
■6:「ちょっとそれはできません」
【丁寧な言葉遣い】
「申し訳ございませんが、そのようなことはいたしかねます」
「あいにく、そちらについてはいたしかねます」
「『ちょっと』はこちらの意思を察して欲しいというやわらかい表現に聞こえますが、『自分とは関係ないけど、できないことになっている』と無責任にも聞こえます。次に『それはできません』という言葉は直接すぎて、威圧的です。クッション言葉を遣い謙譲語で『いたしかねます』と続けることで、できないことを本当に申し訳なく思っているということを表します。また大和言葉の『心ならず』という『自分の気持ちとは反していますが』という意味の表現を遣うと品格もさらにアップしますので、おすすめです」
例:「心ならずもお断りした次第です(いたしました)」
■7:「コーヒーになります」などの「~になります」
【丁寧な言葉遣い】
「コーヒーでございます(をお持ちしました)」
「『~になります』は主に変化や無かったものが新しく形状をなすこと、行為の結果ある状態になることを表す言葉ですので、『コーヒーになります』はコーヒーに変化するということになってしまいます」
■8:「もう帰っていいですか?」
【丁寧な言葉遣い】
「お先に失礼させていただいてもよろしいでしょうか」
「そろそろ、帰らせていただいてもよろしいでしょうか」
「この場合の『もう』という言葉は、“いい加減にしてほしい”といった思いが込められていると受け取られ、嫌気が差していると感じ取られかねません。また『帰っていいですか?』は、許可を得ている言葉ですが、『帰りたい』という思いが強く感じられ、要求しているように感じます。状況にはよりますが、許可を求める際は要求ではなく依頼系で丁寧に伝える事が品格ある大人の話し方です。先に帰ることが分かっているときには、『このあたりでお暇(いとま)させていただきます』とお伝えすると、より品格がワンランクアップするでしょう」
丁寧な言葉遣いは、相手はもちろん、遣っている自分自身もなんだか心が穏やかになり、その謙虚さや礼儀正しさも伝わります。ちょっとした言葉遣いではありますが、一度見直してみてもいいかもしれません。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利