職場で、上司や先輩の依頼通りにやっていたのに、できあがったものを提出したら「違う」とダメ出しされた、なんてことありませんか?

このように、言うことが二転三転する人というのは、どこかしらに必ずいるものです。しかし毎日、長時間を過ごす職場でのコミュニケーションは、仕事をスムーズに進めるためにも上手にこなしたいですよね。

そこで、なぜ言うことがコロコロ変わるのか、そういう人に対してのNG対応、コミュニケーションを円滑にするための意識やすべきことについて、コミュニケーションコーチの山崎洋実さんに教えていただきました。

言うことがコロコロ変わる人に対してのNG対応3選

■1:相手の言ったことを自分の解釈で勝手に進める

依頼されたときに質問することが必須
依頼されたときに質問することが必須

言うことがコロコロ変わる人は、「自分の世界の中の感覚でしゃべっているだけで、実はコロコロ変わっているわけではない」と山崎さんは言います。例えば上司から「これ、できるだけ早くやっておいて」と言われた場合、「はい、わかりました」と答えてしまって、トラブルになった。そんな経験はありませんか? それは自分の解釈で勝手に進めるから、すれ違いが起こり、うまくいかないのだそうです。

「同じ日本語でも解釈の仕方は人それぞれなので、『できるだけ早く』は人によって違うんです。今週中と思う人もいれば、今日中と思う人もいる。頼む人は今日明日中と思っていたのに、受け手は2、3日中と思っていたら、トラブルになるのは当然ですよね。だから、何かを依頼されたら、ただ『はい』と答えるのではなく、『それって、こういうことですよね?』『◯日までですか?』と自分の言葉に置き換えて確認することが大事です」(山崎さん)

細かい性格の人、きっちりやりたい人は大雑把に言われるのが嫌だから、「こういう感じでいいですよね?」「イメージありますか?」などと、いちいち確認してくるのだそうです。会話の記録が取れればいいけれど、いつもそれができるわけではないので、いい直すことで、相手と同じ絵が描けているか、しっかり確認しましょう。

■2:コミュニケーションを端折る

相手がわかっている前提で話を進めないように!
相手がわかっている前提で話を進めないように!

さらに山崎さんは、「現代人はみんな忙しいから、コミュニケーションを端折る傾向がある」と指摘。言うことがコロコロ変わる人に対しても同じことをすると、トラブルになりやすいのでNGだそうです。

「例えば、先日映画を見に行ったとき、夫は英語の勉強があって行けなかったので、私が義理の父母と一緒に映画に行きました。夫は映画館まで送ってくれ、『帰りも迎えに来るよ』と言ってくれました。

しかし、帰るときに義母が『わざわざたった10分の距離を迎えに来させるのは悪いから、タクシーで帰ろう』と言うので、タクシーに乗りました。夫に『迎えに来なくていいよ』と連絡しようとしたところ、着信があり、すでにその映画館のあるショッピングモールにいるというのです。

私は夫と落ち合う約束をしていなかったので、『来て』と連絡してから来ると思っていたのですが、夫は映画の終わる時間を調べて、それに合わせて迎えに来ていたんですね。お互い自分の中の解釈で受け取っているから、すれ違いが起きてしまいました」(山崎さん)

LINEの使い方には、特に注意が必要。短い言葉のやり取りだと主語が抜けて誤解を招きやすいので、なるべく待ち合わせなどは5W1Hが必須。1回でもきちんと伝わるように、なるべく相手にわかりやすい言葉や文章を選び、無駄なすれ違いのない、効率的なコミュニケーションを心がけたいものですね。

■3:相手と自分の物差しの違いを確認しない

人それぞれパターンが違うと思うこと
人それぞれパターンが違うと思うこと

実は、山崎さん自身も言うことがコロコロ変わる人と思われる傾向があるとか。

「私は割とフィーリングで物事を決めることがあります。例えば、私の講座は5回セットで基本的には返金不可としていますが、『入院して2回受けられなかった』という人には事情も事情なので2回分を返金しました。

また別の回で、2回欠席した方がいても、連絡しないで休んだ人には返金しませんでした。すると主催をしてくれている事務局の方から、『それは何で? 同じ2回欠席なのに返金する人としない人がいる……違いがわからない』と言われました。言っていることが毎回違うと思われているのですが、私もそういう傾向があると自覚しています。その場合は、それを先に周囲に伝えておいたほうがいいです」(山崎さん)

だから、コロコロ変わるのが嫌な人は、相手にとっては何がポイントか、どこが線引きか聞くといいのだそうです。つまり山崎さんの場合は、連絡がないという点が嫌だということが確認できます。

「その人のパターンは感覚的なので、変わらないし、他人には変えられないもの。でも、折り合いをつけるポイントはあるんです。だから、詳しく聞くと、ここまで大丈夫というのがわかってきて、納得して動けるようになります。ここまでならいいだろうと予測がつくので、振り回される振り幅が狭くなるのです」(山崎さん)

人は想像がつかないことに対して、ストレスを感じます。とくに、言われたことをきちんとやるタイプの人ほどストレスになりやすいので、自分がそういうことに振り回されるのが苦手なのだと自分を知ること、そして、そうならないように対策を取ることが重要です。

「真面目にやる人ほど大変ですよね。自分はコロコロ変わることに弱い、のりしろが狭いとわかっている人は、振り回されないように、相手の物差しとの違いを確認しましょう。同じことをしても、言うことがコロコロ変わると思わない人もいます。たとえ変わっても想定内なら『ほらね』となる。上手にかわせる人のほうがストレス耐性はあると思います」(山崎さん)

そもそもコミュニケーションは自分を知ることが大事だと、山崎さんは強調します。

「どこにいても、苦手な人、合わない人はいます。少しでも自分と違うと理解ができない。しかし、みんなそれぞれのパターンを持っているだけのこと。それぞれの物差しが違う、と言うことをまず前提にしておき、その上で相手の何に反応しているのか、また自分はどのようなパターンを持っているのかを知っていると対処がしやすいです」(山崎さん)

前提として、考え方の軸を伝えたいという山崎さん。

「大事なのは、やり方ではなく考え方。例えば表面的なところで『こういう人への対応はどうしたらいいですか?』と聞かれて答えるのは簡単ですが、その通りにピタッとうまくいくケースばかりではないでしょう。対応の仕方はひとつではありません」(山崎さん)

確かに人は十人十色。誰ひとり同じ人はいません。

「自分はなぜこの人が嫌なのかを知ること。コロコロ変わるのが嫌っていうのは、自分の反応です。コロコロ変わる人を、それほど苦手と思わない人もいます。自分はここまで許せる/許せないという境目が見えてくれば、自分がどこに反応しているのかがわかる。それを知ることで妥協点も見つかり、10許せないのが8になったら、生きやすくなる。手放してもいいことが増えると楽になりますよ。自分とうまく付き合うことが大事です」(山崎さん)

相手と自分は違うものと考え、自分のキャパシティーを広げていくことでストレスは減っていきそうです。

*

山崎さんによると、人の三大悩みは人間関係、お金、健康だということですが、相手の心の仕組みがわからないと、そして自分の考え方の根底がないと、人間関係で困ることになります。

特に人間関係にはコミュニケーションが重要。相手に「こうやるといいよ」と言って変わることを求めても変わらないものが、その人のものさしやパターンを知って、自分のアプローチを変えることで結果が変わることもあるそうです。

相手は自分の鏡だと考えて、今回教えていただいたことを実行したら、職場に限らず、あらゆる人間関係がスムーズにいくはず。さっそく今日から、できるところから始めてみましょう。

山崎洋実さん
コミュニケーションコーチ
(やまさき ひろみ)コーチングをベースにした“ママのイキイキ応援プログラム”の講師。講座はクチコミで全国に広がり、今や海外にも拡大、受講者数は延べ5万人超。近年では企業研修・講演のオファーも増えている。著書『苦手な人が気にならなくなる本』(日経BP社)など。
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この記事の執筆者
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WRITING :
あわいこゆき