前回、おにぎりを最高においしく食べるための条件を教えていただいた一般社団法人おにぎり協会の代表理事・おにぎり通の中村祐介さんに、今回は人気の具の背景や、おにぎりと具の相性について教わります。
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シャケ・ツナマヨ・明太子が人気の理由
LINEが利用者約36万人に対して行った好きなおにぎりの具アンケート結果のランキングの総合トップ3には、男女ともに「シャケ」「ツナ/ツナマヨネーズ」「明太子/辛子明太子」がランクインしていました。この3種の具について、なぜ人気なのか、おにぎりの具としての適正、相性などを中村さんは次のように解説します。
シャケ
「シャケが日本人の朝食と切っても切れない関係なのは、塩鮭が保存食として日本で古くから愛されてきたから。そして、冷めても比較的おいしいことから、おにぎりの具として定番化していきました。また、鮭にはDHAやEPA、ビタミン類だけでなく赤い色素成分には抗酸化作用のあるアスタキサンチンが含まれていて栄養価も高いことも魅力です」(中村さん)
ツナ系・明太子系
「ツナ・ツナマヨネーズと明太子・辛子明太子は、いずれもおにぎりの世界では新顔定番。どちらも1980年代ごろからおにぎりの具として普及しはじめています。どちらもコンビニエンスストアで売られはじめて人気を得ました。
ツナマヨはおにぎりのこれまでの具材と比べ、脂っ気もあり、食べ応えがありました。明太子や辛子明太子はごはんの友として愛されてきた具材なので味が強め。周囲を米でかためるおにぎりの具材としてはぴったりでした」(中村さん)
おにぎりの具はお米との相性で選ぶべし!
おにぎりの具にはたくさんの種類がありますが、具との相性は何で決まるのでしょうか?
「お米との相性です。さっぱりしたお米には、さっぱりした具材がよく合うように、しっかりとした味のお米にはしっかりした味のものがよく合います。好みのお米の個性を考えて、具材を合わせるマリアージュを楽しんでみてください」(中村さん)
さっぱりしたお米なら、梅やシャケ、青菜系など。しっかりとした味のお米なら、明太子や昆布、ツナマヨ、チーズなどが合うようです。
究極に贅沢でおいしい「おにぎりの具」とは?
次に、中村さんがこれまで食べてきたおにぎりのなかで、贅を極めており、最高級だと感じられたおにぎりの具について教えていただきました。
キャビアのおにぎりと丁寧につくられたおにぎり
「わかりやすい例だと、キャビアのおにぎり。明太子同様魚卵なので、おいしかったです。ただ、お米をしっかり選び、炊飯からにぎるところまで注意を払って丁寧につくられたおにぎりは、具のない“塩おにぎり”でも絶品です」(中村さん)
「御幸町 田がわ」「分とく山」のおにぎり
「最近食べておいしいな、と思ったのは京都の会席料理『御幸町 田がわ』さんで食べたおにぎりでしょうか。ミシュラン1つ星のお店ですが、コースの後に残ったご飯をおにぎりにしてくれて持って帰ることができるんです。それがおいしかったです。
また、おにぎり協会設立時から教えをいただいている『分とく山(わけとくやま)』の野崎洋光さんのおにぎりも絶品です。思いをこめてしっかりにぎったものというのは、それだけで贅沢だと感じます」(中村さん)
「御幸町 田がわ」のおにぎりの具へのこだわりは?
中村さんが絶賛している「御幸町 田がわ」のおにぎり。果たしてどのようなこだわりがあるのでしょうか。それを探るべく、具へのこだわりも合わせてご主人の田川喜章さんにお聞きしました。
まずはおにぎりの具の中身から!
「具はお惣菜系中心です。切干大根やひじき、きんぴらごぼうなどをご飯に混ぜ込んでにぎっています。また、具は毎月変えて、前月と来月とでかぶらないようにしています。先日、中村さんがいらっしゃったときは、実山椒とおじゃこを炊いたものをつくりました。また、今月はコースで出す牛肉のスジの部分と牛すじをしぐれ煮にしておにぎりにしています」(田川さん)
そのお惣菜は、お店でいただけるコースの最後に出てくるご飯に付け合わせとして出されるものなのだそうです。お土産に持たせてくれるそのおにぎりは、最後のご飯のお供が使われていたのです。
ところで、にぎり方にもこだわりがあるそうですよ。
「全体的に、ふわっとにぎります。できるだけ、表面だけをしっかりにぎり、あとはふわっとさせています。形は三角です」(田川さん)
そんな田がわのお土産おにぎりのおいしさの秘密は?
「そうですね、『おいしくなれ』という気持ちでしょうか。また、化学調味料を使っていないので、違和感なく入ってくるのかもしれませんね」(田川さん)
お話を聞いているだけでおいしそう! 絶品おにぎりには、具はもちろん、にぎり方や思いなど、いろんな秘密が隠されているようです。
おいしい具は自分で見つけていくのが一番
最後に、中村さんは、自分でおいしい具を見つけていくことを勧めています。
「おにぎりの具は、お米との相性次第でおいしくなりますので、自分で見つけていくのが一番です。僕個人は、梅干しや鰹節など何周かして、結局、定番のシャケなどに戻っていますが、また変わるかもしれません。
日本だけでなく、世界のあらゆる具材におにぎりは合うと思っていますから、これからもさまざまな組み合わせを考えていきたいですね」(中村さん)
世界では今、日本のおにぎりが注目を集めています。例えば、アメリカのサンフランシスコには、「Onigilly(オニギリー)」というおにぎり専門店があります。JETRO(日本貿易振興機構)のレポートによると、Kearnyカーニーストリート店では、「高菜、梅、しいたけ」が人気の具だそうです。なかなか渋いですよね。
公式サイトのメニュー表 では、野菜、肉、魚と3ジャンルに分かれており、野菜には「高菜、梅、照り焼き豆腐、ひじき、レンコン、味噌ナス、しいたけ」、肉には「そぼろ、照り焼きチキン、スパイシーベーコン」が、魚には「味噌ツナサラダ、スパイシーシュリンプ、タラコ、スノークラブ、うなぎ、サーモン、天ぷらシュリンプ」がありました。意外と豪華なラインナップです。
今は、世界的な視野でおにぎりに合う具をそれぞれが模索し、見つけていく時代。Instagramでも「#onigiri 」のハッシュタグがつけられた投稿には、実にバラエティーに富んだものが国内外から紹介されています。これらをヒントにしてみるのもよさそうですね。
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問い合わせ先
問い合わせ先
- 御幸町 田がわ
- 営業時間/18:00〜20:30(最終入店)
- 定休日/不定休
- TEL:075-708-5936 完全予約制
- 住所/京都府京都市中京区夷川通御幸町西入松本町575-1
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- Precious.jp編集部