丸くて大きな耳、小さな手足、ふっくらまんまるとした身体に、細くてフワフワのなめらかな毛。うさぎとハムスターの良いとこ取りをしたような姿が「妖精みたい」とも言われる、ネズミの仲間のチンチラ。
最近では、SNSでその愛くるしい姿を投稿する飼い主も多く、話題となっています。一方、野生種は「高級毛皮」として乱獲された過去があり、絶滅危惧種に指定されている希少な動物でもあります。
そんなチンチラの特徴や魅力、飼育のポイントを日本で唯一のチンチラ専門店「ロイヤルチンチラ」のプロデューサー兼マネージャーであり小動物飼育研究家の鈴木理恵さんに伺いました。
噂のチンチラってどんな生き物? チンチラの生態とその魅力
ここ5年でジワジワと人気が広がっていきているという、チンチラ。特に約2年前から流通が頻繁で、日本より一足早くチンチラが人気になった中国や香港に次ぐ、大きな市場に成長しているのだそう。
なぜ、近年チンチラの人気が広がってきたのでしょうか? その魅力について鈴木さんに教えていただきました。
見た目や動きが面白い
「そのままでも十分かわいい上に、仕草もユーモラスでかわいいです。寝姿もさまざまで見ていて飽きないですね」(鈴木さん)
例えようのない毛並み
チンチラの外見の魅力のひとつ、毛並みの素晴らしさも忘れてはなりません。毛色は原種のグレーだけでなく、ベージュ、モザイク、ホワイト、バイオレット、ブラックベルベットなどの種類があります。そして、その手触りはフワフワとってもエアリーでなめらか。なんとも形容しがたい感触です。
頭が良い
「チンチラは手を器用に使います。手が使える動物は脳の進化も顕著。個体ごとに性格の違いはありますが、コミュニケーションをとればとるほど頭が良くなるので、飼い主さんの接し方次第で変わりますよ。いつも私も飼い主さんにお渡しする時からどうなるか、楽しみにしています」(鈴木さん)
日常的に使っている言葉はだいたい理解できるようになるため、話しかけるとちゃんとリアクションをしてくれます。もちろん、自分の名前も覚えるので、コミュニケーションをとるのが楽しくなりそう。
友だちのような関係
「野生のチンチラは集団行動で生活しているので、犬のように主従関係にはなりません。ですから飼い主のことも自分と同等に見ているので、依存するような関係にはならないんです。例えば、抱っこされたい時は自分から来ますが、いつも抱っこされたいわけではないですね」(鈴木さん)
そうしたフラットな関係が飼い主にしてみると楽しく、友だちといるような感覚になるのだそうです。
明るい・楽天家
「とにかくチンチラは陽気です。そしてハングリー精神も旺盛で、あきらめない。そういう前向きな姿勢に励まされると皆さんおっしゃいます。やると決めたらずーっとひとつのことをやっています。しかも夜行性ですので、もしかしたら夜中から明け方まで熱中して動き回っているかも。怒らず、見守ってあげてくださいね」(鈴木さん)
チンチラを飼う時のポイント
育てられた環境を確認
健康で元気なチンチラを家に迎えるには、そのチンチラが良い環境で育てられたか判断を。衛生的でストレスが少ない環境は、病気になりにくく丈夫に育つために欠かせません。
また、正しい判断をするために、事前に飼育書などを読んで、チンチラについて自分なりに理解しましょう。
「事前に知識を身につけておけば、床材が掃除されているか? 臭くないか? 温度管理は適正に行われているか? など、見分け方のポイントがわかるはずです。下見の時点で少しでも疑問に思ったらやめておくほうが良いですね。また、小さい赤ちゃんチンチラはかわいく、つい選びたくなってしまいますが、免疫力が高く健康な個体を迎えるために、母乳をしっかりと飲んで十分育った、3か月以上の子をおすすめしています」(鈴木さん)
自宅で飼う環境を整えるには?用意すべき3つのポイント
■1:思い切り走り回れる大きな横長の「ケージ」を用意
チンチラは本来高山の岩場で暮らしているため、思い切り走り回れる大きな横長のケージがベストです。しかし、日本では住宅事情的に横長のケージを設置するのは難しいため、縦に延ばしていくものが主流となっています。
「チンチラは素早く走りますが、実はあまり上下に飛びません。そのためケージを縦に大きくする時は、ステップを細かく設置して落下しないようにしましょう。また、掃除しやすいかどうかも重要です。最近ではチンチラの飼育により適したケージが販売されているので、それを選ぶといいでしょう」(鈴木さん)
チンチラ同士は相性の良し悪しがかなり違うため、通常は1つのケージに1匹、という飼い方がおすすめ。もしもすごく相性の悪い2匹を合わせてしまうと、激しい小競り合いがはじまってしまうことも。また、狭すぎるとストレスが溜まり、体調を崩しやすくなってしまいます。
■2:温度湿度管理ができるエアコンを用意
とても重要なのが、温度と湿度の管理。チンチラが過ごしやすい環境は、室温22℃前後、湿度40%未満が理想です。
この環境をを日本で実現するにはエアコンを常時つけっぱなしにするしかありません。これはチンチラの生死にかかわるかなり重要なポイントですので、しっかり管理を。購入後に電気代がネックとならないように、事前に自宅のエアコン機能や、電気代プランなどを確認しておきましょう。
■3:食事や床材などの消耗品を用意
チンチラは草食動物です。主食はイネ科の葉や茎(牧草)で、1か月で乾燥牧草1㎏程度を消費します。その他に、床材や砂浴びの砂などの消耗品を合わせて、飼育費用は最低1か月、5000円程度。
「チンチラをお迎えする環境を整えるには、生体の価格のほかに5〜6万円の初期費用が必要になります。これから先、20年を共に過ごす家族になるので、できるだけ良い環境を最初に整えて、快適な生活を約束してあげてください」(鈴木さん)
チンチラを買う時の注意点
チンチラのストレスを溜めない
チンチラは頭が良いため、メンタル面での配慮が必要です。
「例えば、いつもケージから出して部屋の中で運動させているなら、毎日欠かさず出してあげるようにしましょう。人間の気ままな都合で出したり出さなかったりすると『今日はなんで出してくれないのだろう?』『仕方ない、あきらめよう』と、ストレスを溜めてこんでしまいます。
逆に、構いすぎもストレスになります。いずれにしてもストレスが溜まりすぎると元気がなくなって敏感になり、心身ともに病気になってしまうことがあります」(鈴木さん)
チンチラの寿命と飼い主の年齢
チンチラの寿命は約20年。長生きする動物ですので、飼う方も長いお付き合いをする覚悟を持って迎えたいものです。
「お客様には必ず、20年生きることをまずお伝えしています。その上で最後まで責任を持って飼うことがきるかどうかを考えていただくようにしています」(鈴木さん)
飼い主のアレルギーにも注意
もうひとつ、飼う前に注意したいのが飼い主のアレルギーです。チンチラの主食はイネ科の牧草なので、イネ科の花粉症の方は要注意。また、砂浴び用の砂もかなり粒子が細かい上に砂浴びの時はまき散らしますので、喘息の方には向きません。
「実は、自分のアレルギーを認識している方はその時点で飼うのをあきらめたり、対処するようにしたりできるためむしろ問題ないのです。一方、アレルギーの自覚がない方は、飼ってしまってからアレルギー反応に悩まされないためにも、事前にチェックしておくと良いでしょう」(鈴木さん)
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今回取材に協力していただいた「ロイヤルチンチラ」では通常、チンチラを購入しても当日は連れて帰れません。環境を整えて、次回、お迎えに来てもらうようにしています。
話を伺いながら、チンチラを単なるペット=商品ではなく、自分の子どものように考えており「他のお家に迎えられ幸せに暮らして欲しい」という想いが伝わってきました。
親友のように心を通わせることができるかわいいチンチラをお迎えして、毎日をずっと楽しく暮らしてくださいね。
問い合わせ先
- ロイヤルチンチラ
- TEL:03-3722-7221
- Email:info@royalchinchilla.com
- 営業時間/火・金曜15:00~19:00 、土・日・祝日13:00~19:00
- 定休日/不定休
- 住所/東京都大田区田園調布2-46-2
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 加藤良子
- EDIT :
- 廣瀬 翼(東京通信社)