上半期にスイスで発表された時計をはじめ、2019年も多くの新作時計が誕生した。それらのなかから、紳士の手元にふさわしい時計とは何か?創刊以来、「真の名品」を希求し続けてきた本誌が、時計&ファッションに精通する審査員を迎えお届けする誌上時計祭。各界の識者によって選出された2019年を代表する至極の1本を部門別に紹介する。

第2回「MEN'S Precious WATCH AWARD 2019」審査の流れ

1.ハイコンプリケーション
2.アイコンウォッチ
3.クラシカルウォッチ
4.シンプルエレガントウォッチ
5.デイリーラグジュアリーウォッチ
6.ペアウォッチ
7.トゥールビヨン
8.ラグジュアリースポーツウォッチ
9.クロノグラフ

2019年に発表、発売された、38ブランドの新作を、上記の9部門にカテゴライズ。7名の審査員とMEN’S Precious編集部で5点満点で採点し、合計点数が最も多い時計を各部門のグランプリとして選出。ほか、審査員の私的「今年の一本」に個人賞を授与する。


MEN'S Precious WATCH AWARD 2019を受賞した時計のラインナップ

ハイコンプリケーション部門:パテック フィリップ「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー Ref.5212A」

「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー Ref.5212A」●自動巻き ●ステンレススティールケース×カーフスキンストラップ ●ケース径/40mm ¥3,650,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー Ref.5212A」●自動巻き ●ステンレススティールケース×カーフスキンストラップ ●ケース径/40mm ¥3,650,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)

受賞の決め手!「複雑に絡む要素を簡潔に表し、チャーミングな意匠に落とし込んだ」(マーク・チョーさん)

本作を特徴付けるのは、ダイヤル最外周の月表示の内側に記された数字にある。これが、ISO(国際標準化機構)に準拠した週番号だ。先端をT字にかたどったポインター針が、これを指し示す。評価の高かったオリジナルのフォントは、デザイナーが手書きで起こしたものを転写する手法を採用。

孤高の存在として頂点に君臨するパテック フィリップ「カラトラバ」


アイコンウォッチ部門:A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1『25thアニバーサリー』」

「ランゲ1『25thアニバーサリー』」●手巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/38.5mm ¥4,890,000(A.ランゲ&ゾーネ)※世界限定250本、予約受付終了
「ランゲ1『25thアニバーサリー』」●手巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/38.5mm ¥4,890,000(A.ランゲ&ゾーネ)※世界限定250本、予約受付終了

受賞の決め手!「25年前の栄光の瞬間、その威光を、今に伝える名品」(上根 亨さん)

ブランドのアイデンティティとなるアウトサイズデイトと、時分表示とスモールセコンド、パワーリザーブをアシメトリーに配置したフラッグシップ『ランゲ1』。発表当時は従来の時計ダイヤルの概念を覆すデザインだったが、25年の時を経て名品として定着。その美観を改めて実感できる、ブルーの涼感が印象的だ。

ドイツのウォッチメーキングの金字塔!A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1『25thアニバーサリー』」


クラシカルウォッチ部門:NH WATCH「NH TYPE 1B」

「NH TYPE 1B」●手巻き ●ステンレススティールケース×カーフレザーストラップ ●ケース径/37mm ¥1,800,000(NH WATCH)
「NH TYPE 1B」●手巻き ●ステンレススティールケース×カーフレザーストラップ ●ケース径/37mm ¥1,800,000(NH WATCH)

受賞の決め手!「ダイヤル、針、ロゴ表記まで鬼気迫るでき栄え」(上根 亨さん)

飛田氏が愛する1930年~’50年代のヴィンテージウォッチを現代の技術で再現。耐食性の高い904Lステンレススティールを超高精度微細加工機で、複雑な形状も美しく仕上げる。30㎜径の「ETA7750ヴァルジュー」をベースに新たな機構を組み込んだ手巻きムーブメントを開発して搭載。

1930年〜'50年代のヴィンテージを現代の技術で再現したNH WATCH「NH TYPE 1B」


シンプルエレガントウォッチ部門:グランドセイコー「エレガンスコレクション SBGK006」

「エレガンスコレクション SBGK006」●手巻き ●18Kイエローゴールドケース×クロコダイルストラップ ●ケース径/39mm ¥2,100,000(セイコーウオッチお客様相談室)
「エレガンスコレクション SBGK006」●手巻き ●18Kイエローゴールドケース×クロコダイルストラップ ●ケース径/39mm ¥2,100,000(セイコーウオッチお客様相談室)

受賞の決め手!「次世代を担うクラシカルウォッチのGS流模範回答」(関口 優)さん

グランドセイコーらしいメリハリあるデザイン。「ザラツ研磨」と呼ばれる職人技が生み出す歪みのない鏡面立体のイエローゴールドケースは、39㎜の小ぶり感に加えて、11.6㎜の厚さも相まって控えめなエレガンスを宿す。ひとつひとつのディテールが繊細につくられ、ジャパンプロダクトの気高さを語る。

国産マニュファクチュールの雄!グランドセイコー「エレガンスコレクション SBGK006」


デイリーラグジュアリーウォッチ部門:ヴァシュロン・コンスタンタン「フィフティーシックス・オートマティック」

「フィフティーシックス・オートマティック」●自動巻き ●ステンレススティールケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/40mm ¥1,160,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)
「フィフティーシックス・オートマティック」●自動巻き ●ステンレススティールケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/40mm ¥1,160,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

受賞の決め手!「世界最古の歴史より誇れる洒脱なデザインとタダ者じゃないオーラ!」(岡村佳代)

老舗ゆえの豊富なアーカイブから1956年のモデルをリファインした『フィフティーシックス』コレクション。ジュネーブに拠点を置く同社の象徴「ジュネーブシール」を、三針モデルではあえて取得せず、幅広いファン層の獲得に挑んだ。実用的な48時間パワーリザーブを装備。

現存する最古のウォッチメーカー『ヴァシュロン・コンスタンタン「フィフティーシックス・オートマティック」』


ペアウォッチ部門:ブレゲ「クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル」と「クラシック 9068」

上/「クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル」●自動巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/38mm ¥2,570,000・下/「クラシック 9068」●自動巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/33.5mm ¥2,880,000(ブレゲ ブティック銀座)
上/「クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル」●自動巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/38mm ¥2,570,000・下/「クラシック 9068」●自動巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/33.5mm ¥2,880,000(ブレゲ ブティック銀座)

受賞の決め手!「熟練の技術を要する高温焼成が生み出す、美しきブレゲの青」(並木浩一さん)

美しいグラン・フー・エナメルとコントラストをなすのが、シルバーパウダーを焼きつけたブレゲ数字とブレゲ針。クラシカルにして実用性を兼ね備えた三針デイトに。

パートナーと同じ時を刻むのに最良なブレゲのペアウォッチ


トゥールビヨン部門:F.P.ジュルヌ「トゥールビヨン・スヴラン・ヴァーティカル」

「トゥールビヨン・スヴラン・ヴァーティカル」●手巻き ●プラチナケース×カーフストラップ ●ケース径/42mm ¥27,600,000(F.P.ジュルヌ東京ブティック)
「トゥールビヨン・スヴラン・ヴァーティカル」●手巻き ●プラチナケース×カーフストラップ ●ケース径/42mm ¥27,600,000(F.P.ジュルヌ東京ブティック)

受賞の決め手!「ダイヤルに対して垂直にセットされたトゥールビヨンは前代未聞」(松山 猛さん)

フラッグシップモデル『スヴラン』に加わる新機構。トゥールビヨンには、ジュルヌ氏が得意とするル「モントワール機構」を装備して、トルクの安定を図り、高精度を追求。トゥールビヨンでは珍しく、ステップ運針するデッドビートセコンドも搭載する。通常の2 倍の速度で回転する様は圧巻。なお、エナメルダイヤルはブランド初となる。

ユニークさ極まるF.P.ジュルヌの最新作「トゥールビヨン・スヴラン・ヴァーティカル」


ラグジュアリースポーツウォッチ部門:ロレックス「オイスター パーペチュアル ヨットマスター 40」

「オイスター パーペチュアル ヨットマスター 40」●自動巻き ●18Kエバーローズゴールドケース×オイスターフレックスブレスレット ●ケース径/40mm ¥2,522,000(日本ロレックス)
「オイスター パーペチュアル ヨットマスター 40」●自動巻き ●18Kエバーローズゴールドケース×オイスターフレックスブレスレット ●ケース径/40mm ¥2,522,000(日本ロレックス)

受賞の決め手!「実用的であることをやめない、スポーツウォッチへの矜持を感じる」(関口 優さん)

ヨットセーラーのニーズに応えるゴールドウォッチの40㎜モデル。2019年新作には、14件もの特許を取得する新世代ムーブメント「3235」を搭載。耐衝撃性や耐磁性、エネルギー効率などにおいて優れる。両方向回転ベゼルやマットに仕上げたダイヤルのブラックが、金色を引き締め静かな迫力を添える。

並みいるライバルたちを押しのけて頂点に立ったロレックス「オイスター パーペチュアル ヨットマスター 40」


クロノグラフ部門:オメガ「スピードマスター アポロ11号 50周年記念 リミテッド エディション ムーンシャイン™ゴールド」

「スピードマスター アポロ11号 50周年記念 リミテッド エディション ムーンシャイン™ゴールド」●手巻き ●18Kムーンシャイン™ゴールドケース×18Kムーンシャイン™ストラップ ●ケース径/42mm ¥3,710,000(オメガお客様センター)

受賞の決め手!「腕時計の枠を超えて、人類の偉業を称えるゴールドのトロフィー」(上根 亨さん)

1969年に、1014本限定でつくられた『スピードマスターBA145.022』のデザインを、素材を変えてほぼ忠実に再現した本作。最新の、オメガ独自のムーンシャイン™ゴールドは、オリジナルに比べ、淡い色合いや経年変化への耐性を持つ。変わらぬ輝きを50年後も見せてくれそうだ。

話題性だけでなく実力を備えたオメガの名作クロノグラフ


メンズプレシャス WATCH AWARD 2019審査員の方々

上根 亨さん
(株)カミネ 代表取締役社長
1906年から続く神戸の老舗時計宝飾店の4代目。幅広い時計への造詣に基づき、各方面からの信頼も厚く、現在6店舗にまで拡大を果たした。日本を代表する専門店のひとつとして本国との繫がりも深い。「昨今とみに進化した高級時計業界は、ますます魅力的な時計を消費者に提案していくでしょう」
関口 優さん
『HODINKEE Japan』編集長
時計専門誌編集長を経て、2019年11月にローンチされたインターナショナルオンライン時計メディアの日本版『HODINKEE』編集長に就任。時計界では若手に数えられる30代ながら、その深い見識を生かし、時計関連のトークショーなどにも精力的に登壇。時計愛好者のファンも多い。
並木浩一さん
桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリスト1990年代からスイス時計取材を行って四半世紀。独自の視点によるアカデミックな論評を武器に数々のメンズ誌に寄稿。機械式時計の魅力を伝え続ける。「2019年はメンズウォッチの豊作年で、ワインでいうグラン・ミレジム。分散した新作発表会により、各社切磋琢磨しているためでしょう」
マーク・チョーさん
「アーモリー」「、ドレイクス」共同経営者ロンドン生まれ。香港とNYに展開し、世界中の洒落者が注目するセレクトショップ、「アーモリー」を共同創業。クラシカルなスタイルに似合うシンプルウォッチを多く所有する時計通でもある。「派手さはなく、落ち着いた美しさを持つ時計が好み。手仕事による繊細なディテールを重視します」
松山 猛さん
作家・エッセイスト
数々の著作を持つ作家であり、『帰って来たヨッパライ』や『イムジン河』などの名曲を残した作詞家でもある松山さん。’70年代からの時計通でもあり、スイス取材にも足繁く訪れている。A.ランゲ&ゾーネは、日本上陸前にスイスで現物を見て惚れ込み、上陸するやいち早く入手した逸話も。
山下英介
本誌クリエイティブディレクター
クラシックに軸足を置いた「オタク」とも呼ぶべきファッション愛を前面に打ち出す本誌クリエイティブディレクター。「ジェントルマンスタイルにもフィットするエレガントな時計が増えています。マッシブな時計を好む富裕層の趣味もシンプル傾向に変容しているとの話も聞き、今後が楽しみです」
岡村佳代
ウォッチ&ジュエリージャーナリスト
腕時計の魅力に開眼して以来、スイスの新作発表会に通い続けて20年。ジュエリー価値に重きを置かれがちなレディスウォッチ界で、機械式の魅力を説き続ける伝道師的な存在として知られる。メンズウォッチにも造詣が深く、いい意味でマニアックになりすぎない女性ならではの視点は、『MEN'S Precious』でも健在だ。

※掲載した商品は、すべて税抜です。 

<出典>
MEN'S Precious冬号「寅さん」とヴィンテージ
メンズプレシャス冬号
【内容紹介】山田洋次監督インタビュー/「寅さん」のダンディズム/ミスターヴィンテージ、草彅剛の私物も大公開!/紳士の世界遺産、ヴィンテージ名品/MEN'S Precious WATCH AWARD 2019ほか
2019年12月6日発売 ¥1230(税込)
この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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