12月は、タクシーを利用する機会が頻繁にあるもの。とにかく最速で目的地に向かいたい、大荷物を抱えている、残業や飲み会で終電を逃してしまった……などなど、タクシーを利用するシチュエーションや目的はさまざまですが、あなたはいついかなるときも、節度のある振る舞いを心がけているでしょうか?

タクシードライバーは、1日に何人ものお客を拾い、目的地まで運んでいますが、なかには運転手から見て、ちょっと困った行動をとる人もいるのだそう。ドライバーとしては、内心「おいおい……」と思いつつも、立場上なかなかはっきりと口に出すことはできないようです。あなたの乗車マナー、大丈夫!?

今回は、カリスマタクシードライバーで『タクシー運転手になって人生大逆転』などの著書がある下田大気さんから、タクシー利用時の乗客のNGマナーについてお話をうかがいました。

タクシー利用時の「乗客」のNGマナー10選

■1:交通量の多い交差点で、タクシーを拾おうとするのはNG

タクシーが停まってくれないのには理由が…
タクシーが停まってくれないのには理由が…

タクシーを拾おうと手を挙げているのに、「空車」表示があるタクシーにスルーされた経験はありませんか? 実はそれタクシーを拾う場所に問題があるのかもしれません。

「交通量の多い交差点で停車するのは危険で、後続の車にも迷惑をかけるおそれがあります。乗車希望のお客様の姿が目に入っても、安全の観点からスルーせざるをえないという点は、ご了承いただければと思います」(下田さん)

確実にタクシーを拾うには、横着せずにタクシー乗り場まで移動しましょう。

■2:キャリーケースをシートに乗せるのはNG

キャリーケースを持ち込むときは要注意
キャリーケースを持ち込むときは要注意

キャリーケースなど大荷物を持ってタクシーに乗り込もうとすると、運転手さんから「トランクを利用されますか」と提案されることがあります。その際、「いえいえ、結構です!」と自分で車内に荷物を押し込むと、迷惑になってしまうおそれが……。

「後部座席が少し狭いような場合、キャリーケースを床に置けず、座席に乗せるお客様がときどきいらっしゃいます。特に雨の日などはトランク類のローラーで座席のシートが汚れてしまうので、車のトランクを利用していただいたほうがありがたいです」(下田さん)

運転手さんに自分の荷物を運んでもらうのは悪いから……などと遠慮しないこと。床に置けないキャリーケースは、トランクに収納しましょう。

■3:行き先を告げる際に、マイナーな地名を挙げるのはNG

全ての建物名を記憶するのは不可能
全ての建物名を記憶するのは不可能

「タクシードライバーは、できるだけ担当地域の地図を頭に入れるように努めていますが、それでも隅から隅まで完全に把握しているわけではありません。お客様の告げた地名がマイナーだと、どこだかわからないことがあります。

特に、困るのは建物名ですね。もちろん、六本木ヒルズなど超メジャー級なら大丈夫ですが、『住友第二ビルまで』などと言われて、すぐにピンとくるドライバーはほぼいません。

マイナーな行き先の場合、住所を言っていただくほうが確実です。住所がわかれば、道に疎い新人ドライバーでもナビでチェックできますので」(下田さん)

取引先の企業が入居しているビル名などは、自分にとってはおなじみでも、ドライバーにとってはそうとは限りません。住所で伝えるか、最寄のメジャーな地名に言い換えるようにしましょう。

■4:「とにかく急いで」と、むやみにドライバーを急かすのはNG

どんなに急いでいてもスピード違反はできない
どんなに急いでいてもスピード違反はできない

タクシーを利用するメリットの1つは、公共交通機関よりもスピーディーな点。とはいえ、「とにかく急いで!」とドライバーをむやみに急かすのは考えものです。

「できるだけ迅速に目的地までお届けしたいのはやまやまなのですが、無茶な運転で道路交通法違反をするわけにはいきません。『もっとスピード出せないの』や、『あっちの車線のほうが空いているのに』といったご要望を出されると、ドライバーとしては困ってしまいます」(下田さん)

交通違反によって、免許停止にでもなろうものなら、タクシードライバーにとって死活問題です。運転手のみなさんも最短・最速ルートで行こうと一生懸命なので、プレッシャーをかけないようにしましょう。

■5:急に運転の指示を出すのはNG

急に「右曲がって」と言われても…
急に「右曲がって」と言われても…

「お客様からのリクエストでもうひとつ困るのは、『そこ右に曲がって』などと急に運転の指示を出されることですね。

急な指示には対応いたしかねますし、もし指示通りに運転しようとすると、事故につながるおそれもあります。運転の指示は『次の信号を渡ったら右折』など、できるだけ前もっていただけると、助かります」(下田さん)

特に、自分で運転しない人は、ドライバーの感覚がつかめないので、このNGをやらかしがちかもしれません。逆に、指示が早すぎて困る……ということはないので、できるだけ前もって希望の道筋を伝えましょう。

■6:ドライバーに無理難題な質問をするのはNG

ドライバーを困らせた「究極の質問」とは?
ドライバーを困らせた「究極の質問」とは?

上記以外で、お客さんとのコミュニケーションで困ることがないか尋ねてみたところ、こんな回答が……。

「カップルで乗車されて、後部座席で喧嘩を始めてしまうお客さんがいます。それだけならまだいいのですが、『ねぇ、運転手さんどう思います?』とジャッジを求められると……。ドライバーとしては、どちらの味方につくこともできないので、究極の質問ですね。

実際、知人のドライバーで、地雷を踏んでしまった者がいます。彼女さんのほうが『どう思います? 私は悪くないですよね?』というような質問を投げかけてきたので、とりあえず同意するような返事をしたら、お連れの男性が激怒してしまい大変だったそうです」(下田さん)

運転手の立場になれば、こうした質問がNGなのはすぐに理解できますが、お酒を飲むなどで判断力が鈍っていると、ちょっと怪しいかもしれませんね。くれぐれもドライバーに意見を求めるような質問は、慎みましょう。

■7:車内で「においのキツイもの」や「手の汚れるもの」を飲食するのはNG

飲食は原則OKだけどこれはNGかも
飲食は原則OKだけどこれはNGかも

タクシーは電車やバスよりもプライベートな空間で、ある程度、自由な振る舞いが許されるイメージがありますが、飲食はどこまでがOKなのでしょうか?

「タクシー内では基本的に飲食はOKです。ビールなどを飲まれるお客様もいらっしゃいます。

ただ、飲食物で困るのは、においのきついものですね。たとえば、ファストフードなどは車内ににおいが残りやすく、直後に乗ったお客様が不快な思いをされることがあります。

あと、油やケチャップのついた手でシートをべたべた触って汚してしまうお客様もいらっしゃるので、手が汚れる食べ物も控えていただければと思います」(下田さん)

車内でくつろいで飲み食いしているお客に向かって、「それやめて」はタクシードライバーからは言いづらいもの。においや汚れが残るおそれのあるものは、自重しましょう。

また、車内で飲食しないにしても、においをきついものは持ち込むだけでも迷惑になるおそれが。袋を重ねるなどして、できるだけにおいが漏れないようにしましょう。

■8:車内で眠ってしまうのはNG

車内で居眠りするととんでもない事態に!?
車内で居眠りするととんでもない事態に!?

睡眠不足が続いていたり、お酒をしこたま飲んだりした状態だと、車内でついウトウトしてしまうかもしれません。ただ、女性の1人客がタクシー内で熟睡してしまうと、思わぬ事態を招いてしまうおそれが……。

原則として、ドライバーはお客様の身体にむやみに触れることはできません。とりわけ、女性のお客様の場合、揺さぶって起こそうとすると『変なところを触られた』というトラブルにもつながるおそれがあるので、より慎重な対応が必要です。

場合によっては、交番に車を回して、警察官のかたのお力を借りることにもなりますので、車内で熟睡しないようにしていただければと思います」(下田さん)

車内で居眠りした結果、警察のお世話にまでなるのはかなり恥ずかしいことですね。帰宅するまでの辛抱で、何とか車内では眠気をこらえましょう。

■9:事前にことわりなく、近距離の料金を1万円札で支払うのはNG

万札しかない場合はカード払いで
万札しかない場合はカード払いで

ところで、近距離の料金を1万円札で支払うと、おつりが大変なのでドライバーとしては迷惑……という話を聞いたことがあるのですが、これって本当なのでしょうか?

「ドライバーはおつりが払えるように、1,000円札、5,000円札、硬貨をたくさん用意しています。ただ、ときどきなぜか近距離の料金を1万円札で支払われるお客さまが連続して、車内のおつりのストックが不足してしまうことってあるんですね。そういうタイミングで、『すいません、1万円札で』ということになると、ちょっと困ってしまいます。

近距離利用で財布に1万円札しかない場合、はじめにおっしゃっていただけるとありがたいです。そうすれば、ドライバーの側から『電子マネーでの支払いもできますよ』など提案できますし、もしお客様がカードも所持されておらず、1万円札でしか支払えない場合には『おつりが足りないので、ちょっとコンビニに寄りますね』というふうに、早めに対応することができますので」(下田さん)

支払い段階で、実はおつりが足りないということが判明すると、運転手も困ってしまうし、お客の側もすぐに降車できないなど、両者にとって損でしかありません。タクシーを利用する際は、財布の中身を確認しておきましょう。

■10:「いつもより料金が高い」と文句を言うのはNG

ナビで最短距離を走っても料金が高くなるケースも
ナビで最短距離を走っても料金が高くなるケースも

出発地・目的地は同じでも、日によってタクシー料金が異なると感じたことはありませんか? これは致し方のないことなので、「いつもより料金が高い」など運転手さんを責めてはいけません。

「ときどき『裏道を通ったほうが早かったのに、大通りで遠回りしたから料金が高くなった』というクレームをおっしゃるお客様もいるようです。

これは道に詳しくないドライバー側にも落ち度はあるのかもしれませんが、カーナビは幹線道路を優先しやすいので、お客様が考える最短ルートと、別ルートを走ってしまうことはあるんですね。

ですから、もし『こういうルートで走ってほしい』というこだわりがあれば、これも乗車時にお伝えいただいたほうが助かります。支払い段階で『こっちのルートのほうがよかった』と後出しされては、ドライバーとしては対応のしようがありません」(下田さん)

道路の混雑状況によっても、料金が変わることもあるようです。運転手は、料金をぼったくってやろうなどと思っているわけではないので、言いがかりをつけるのはやめましょう。

ドライバーと乗客との関係は、まさしく一期一会ですが、できるだけ双方にとって気持ちのいい関係を築いていきたいもの。タクシーを利用する際は、今回ご紹介したNGマナーをやってしまわないようにくれぐれもご注意を!

下田大気さん
カリスマタクシードライバー
(しもだ ひろき)直木賞作家である志茂田景樹の次男として生まれ、俳優、会社員、飲食店経営などを経て2009年にタクシードライバーに。1ヶ月で300人中トップの売上を達成し、1年目から年収800万円を稼ぎ出すなどして「カリスマタクシードライバー」と称される。現在は、武蔵野市議会議員を務めながら、現役ドライバーとしても活躍中。著書に『タクシー運転手になって人生大逆転!』『タクシーほど気楽な商売はない!』がある。
公式サイト

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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美