創業270年。「上野風月堂」の歴史は江戸時代に始まった

東京土産として絶大な人気を誇るゴーフルが有名な「上野風月堂」。1747年の創業から実に270年もの間、幅広い世代に親しまれるお菓子をつくり続けている老舗です。

「変化を愉しみ、文化を創る」という理念のもと、「今までにない東京名物をつくる」をコンセプトに、「東京カラメリゼ」ブランドを新たに立ち上げるなど、時代が変わっても進化し続ける上野風月堂。

上野風月堂は、いかにして長きに渡り老舗の看板を守ってきたのか? 本記事では、上野風月堂の歴史と、そこにまつわるストーリーを紹介します。

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「扇子に三日月」が目印の風月堂のロゴマーク

ときは江戸、第9代将軍・徳川家重が世を治めていた時代までさかのぼります。1747年(延享4年)、大阪から江戸に出た初代・大住喜右衛門が「江戸にはおいしいお菓子が少ない。商いをするなら人に喜ばれるものをつくりたい」と、菓子商「大坂屋」を江戸の地に開業しました。

大坂屋の菓子は喜右衛門の誠実な人柄とともに評判を呼び、菓子司として諸大名家への出入りが許されるようになります。そして「寛政の改革」で知られる老中・松平定信の目に留まったのをきっかけに、定信の雅号でもある「風月」にちなみ、「風月堂清白」の五文字を賜ったのち、屋号を「風月堂」にあらため今日に至ります。

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「風月堂清白 かぼちゃ菊 大住喜右衛門」「無垢(写真右)」と「抹茶(写真左)」の2種類

「上野風月堂」は、今でも名付け親である松平定信の命日である6月14日に、定信が親しんだとされる和菓子「かぼちゃ菊」を墓前に毎年献納しています。

和三盆の優しい甘さが広がる落雁の間にこしあんが入ったこの「かぼちゃ菊」は、命日までの数日間、少量限定で販売されています。「かぼちゃ菊」が気になる方は、この時期にお店をのぞいてみてくださいね。

文明開化が花ひらく明治、上野のメインストリートに店を構える

幕末の動乱期を乗り越え、明治を迎えた風月堂。五代目・喜右衛門は西洋菓子をつくり始め、リキュール・ボンボンやビスケットを販売し、洋菓子店として舵を切ります。

そして1905年(明治38年)、五代目・喜右衛門の息子、大住省三郎が一大繁華街として賑わう上野の地に「上野風月堂」を開き、現在の「上野風月堂 本店」へとつながっていきます。

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「上野風月堂 本店」の外観。2017年秋にリニューアルオープンした

「上野風月堂」が時代を超えて愛され続けているワケ

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「上野風月堂のゴーフル」と聞くと、不思議と安心感がある

創業270年という壮大な歴史を背景に、創業家が継ぐ唯一の「風月堂」として、その伝統と志を現代に引き継ぐ「上野風月堂」。これだけ長く愛される理由はどこにあるのか、その秘訣を代表取締役社長・大住佑介さんにお伺いしてみました。

「『風月堂』が、明治維新、関東大震災、そしてふたつの世界大戦という大きな荒波を乗り越えてこられたのも、長い伝統の中で、変化を恐れず挑戦する『進取の気風』と、慣習や常識に縛られない『本質を捉える心』が培われてきたからではないでしょうか。

『老舗だから安心して買える』という評価をいただき、ありがたく受け止めていますが、歴史があるからといって変革の歩みを止めれば、そこから衰退が始まります。私たちはつねに変化する時代を見つめ、お客様が求める食のニーズに応えていきたいと考えています」(大住さん)

「変化を愉しみ、文化を創る」ことを経営理念に掲げ、老舗の看板に甘えることなく、進化し続ける「上野風月堂」。その懐かしくもモダンな味は、令和の時代も変わらず日本人の心をつかんで離しません。

「上野風月堂」の人気を支える定番二大スイーツをおさらい

上野風月堂の定番商品について、ブランド戦略部の宗藤わか奈さんにご紹介いただきました。

■1:何枚でも食べられる薄焼きが魅力!手土産の定番「ゴーフル」

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「ゴーフル」5枚入(箱)¥500、9枚入(缶)¥1,000、12枚入(缶)¥1,500、9枚入×2缶 ¥2,000、12枚入×2缶¥3,000(すべて税抜)

看板商品として愛され続けているゴーフルは、1929年(昭和4年)に誕生したお菓子です。

「明治はじめより製造・販売していた『カルルス煎餅』をベースに、風月堂一門の職人が試行錯誤を繰り返し、誕生したのがゴーフルです。薄焼きのウエハースに洋風のクリーム。その上品な甘さが、当時の最高級のお菓子として好評を博しました。

均一で美しい焼き色に保つ『はさみ焼き』の技術を受け継ぎながら、少しずつ改良を重ね、上野風月堂の歴史とともに進化してきた銘菓です」(宗藤さん)

年齢、性別問わず、世代を越えて愛される理由は、バニラ、ストロベリー、チョコレートという3種類の変わらぬ定番の味。どんな人に贈っても喜ばれる永遠のスタンダードは、「上野風月堂」という老舗の安心感と、美しい包装や幅広い価格帯で、ちょっとした手土産から季節の贈り物まで幅広いシーンで活躍しています。

■2:シンプル・イズ・ザ・ベスト。レトロ缶が可愛い「東京カステラ」

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「東京カステラ」(大)¥2,800、(小)¥1,800(ともに税抜)

江戸時代から焼いていたと伝えられる、ふっくらと大きなカステラ。

「特徴は、新鮮な卵と蜂蜜をたっぷりと使い、特製の銅釜を使ってひとつひとつ焼き上げる『六面焼き』製法です。安定した火力のない時代に六面すべてをきつね色に焼き上げるには、生地の混ぜ方や火加減の調整などの職人技が不可欠でした。明治時代に大住省三郎が何冊にもわたって最適な火力を研究したノートが今も残されています」(宗藤さん)

味わいも食感も、長崎カステラとはひと味ちがう、シンプルで奥深い豊かな風味が魅力的な一品です。

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職人が手間暇かけてひとつひとつ焼き上げるため、生産数に限りがある

「東京カステラ」のレトロモダンな缶のデザインも好評で、銘菓の上質な味わいを求める方や、歴史や伝統を大切にしている方への贈り物としておすすめです。


特別な派手さはないけれど、シンプルかつ上品で何度でも立ち帰りたくなる味。手土産や贈り物を選ぶ際には、ぜひ「上野風月堂」を思い出してみてください。

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WRITING :
石川聡子