創業は明治時代の1893年。それ以来、今も昔も、和菓子激戦区の京都で、茶人たちや神社仏閣から絶大な信頼を寄せられているのが、老舗和菓子店の「京菓子司 末富」です。
「末富ブルー」と呼ばれる、お店の象徴にもなっている包装紙は、見たことがある方も多いのでは。
今回は、そんな「末富」の四代目主人・山口祥二氏に、創業の経緯や、末富の代表菓子などについてお話を伺いしました。
京和菓子の文化と伝統を継承する末富。創業128年の今も守り続ける美学とは?
末富は、創業200年を超える老舗和菓子屋「亀末廣」で修業した初代・山口竹次郎氏が、1893(明治26)年に暖簾分けを許されて、「亀屋末富」を創業したことが始まりです。
「京都は長い間禁裏(皇居)があり、神社仏閣の中心の地でもあり、茶道発祥の地であるからこそ京菓子が発展してきました。
末富は、京菓子として、一般のお客様のほかに、茶席用の御菓子として茶道各御家元様に、御供えのお菓子として東本願寺様、妙心寺様、知恩院様、唐招提寺様、天龍寺様に、ご利用いただいております」(四代目主人・山口祥二氏)
今なお、昔ながらの格式を守り、お菓子をひとつひとつ丁寧につくることを心掛けているそうです。
「京菓子の魅力とは、味覚だけではなく、色や形から目で愉しみ、お菓子の銘(名前)からは耳で愉しめることです。
お菓子を写実的に写すことではなく、人の情感に訴えることこそが、京菓子の遊び心を生み出しています。“夢と楽しさの世界”こそが、初代からのお菓子づくりの原点です」(山口氏)
先人達が培ってきた伝統をふまえながらお菓子の世界を広げ、時代にも添ったいい部分を加えながらお菓子づくりに励んでいるそう。
今も昔も和菓子ファンを魅了する「末富ブルー」の誕生秘話
戦後まもなく、二代目の山口竹次郎氏は、お菓子づくりだけでなく、包装紙にも原点である“夢と楽しさの世界”を考え、交流の深かった日本画の池田遙邨画伯に包装紙の意匠をお願いしたそう。それが、「末富ブルー」と呼ばれている、有名な包装紙です。
「二代目と、画伯のふたりが『もう少しここはこうましょう』『ここはこんなふうに』『この色目でいきましょうか』などと、まさに席主と菓子屋が茶席のお菓子をつくり上げていくようにできあがった意匠なのです」(山口氏)
この色合いは、まず白を敷き、青を塗って厚みを出すため、当時の印刷屋は大変苦労したようです。しかし、ふたりにはこの色合い以外はあり得なかった。この色合いこそがふたりの考える「寸止めの美学」だったのだそう。
「派手すぎず斬新であること、意匠にはいろいろな要素を加えながらも見た目がスッキリしていて上品であること、何よりも京菓子を包む包装紙ですから、“洋”でなく“和”であることが大切でした。
日本がまだまだ包装紙にデザイン性を求めていなかった時代でしたが、店主と画家の気心が知れていたからこそ、できあがった包装紙です」(山口氏)
お菓子はもちろん、包装紙まで徹底的にこだわる末富の美意識が伝わってくるエピソードです。
京菓子の遊び心を生み出す末富の代表菓子2選
末富を代表するお菓子は、「うすべに」と「野菜煎餅」の2品。どちらもひと口サイズの可愛らしい煎餅です。
■1:煎餅の間に梅肉をはさんだ「うすべに」
口当たりが軽やかな薄い麩焼き煎餅の間に、ほどよい甘みを添えた梅肉を挟んだ干菓子。中に挟んだ梅餡がほのかに透けてみえるさまも美しいですね。京の雅な色と味を堪能できる、上品なお菓子です。
「曙とも、おぼろ夜の桜花とも、雪をかぶった紅梅とも見える薄紅色は、四季を問わず、心をなごませる逸品です」(山口氏)
■2:木の芽、ごぼう、蓮根の3種が味わえる「野菜煎餅」
「玉子煎餅を、大人の賞味に耐えうる気品を持った菓子にと、工夫を凝らしてつくり上げました。戦後まもなく販売して以来、先人が残したこのお菓子は、今も末富の原点です」(山口氏)
見て楽しめる、味わって楽しめる末富のお菓子。茶菓子以外でも、訪問土産やちょっとしたギフトにも喜ばれそうです。
ご紹介した商品以外にも、店頭でしか買えない行事や季節にちなんだ生菓子や最中、季節限定の羊羹などのお菓子を取り扱っています。ぜひこの機会に、末富の和菓子の美しさとおいしさを味わってみてはいかがでしょうか。
※価格はすべて税抜です。
問い合わせ先
- 京菓子司 末富 本店 TEL:075-351-0808/075-361-5308
- 受付時間/月曜日〜土曜日 9:00〜17:00 ※連休・年末年始を除く
- ※店舗ごとの詳しい営業時間、所在地等は、京菓子司 末富HPをご確認ください
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- WRITING :
- 宮平なつき