琵琶湖岸に面する近江商人の町・近江八幡。時代劇に迷い込んだような風景やレトロな洋館、人々の心の拠り所となっている日牟禮八幡宮など、見所の多い観光地です。

この町を本拠地とし、全国に店舗を持つ老舗菓子店が「たねや」グループ。和菓子店の「たねや」のほか、洋菓子店「クラブハリエ」の「バームクーヘン」も有名ですよね。最近では、新たな拠点「ラ コリーナ近江八幡」も話題になっています。

そんな「たねや」がどうやって生まれ、広がってきたのか。歴史やターニングポイント、そして代表菓子を「たねや」広報担当さんにお伺いしました。

建築家ヴォーリズとの交流で生まれた洋菓子

「たねや」はもともと近江八幡の材木店。江戸時代に木材から野菜などの種を扱う商いへ変わっていき、周りから「たねや」と呼ばれるようになります。

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かつての菓子舗たねや外観

「菓子屋をはじめたのは1872年。明治になってまだ間もない頃です。業種を変えても、地元の人々が親しみを込めて呼んでいたという『たねや』の名前は残りました」(「たねや」広報担当)

和菓子屋だった「たねや」ですが、今では洋菓子店「クラブハリエ」の「バームクーヘン」も人気です。洋菓子に挑戦し始めたのは今から約70年前、1951年のこと。

先代の住まいの近所に住んでいたのが、著名な建築家のヴォーリズ。パーティに招かれたり、パンを焼いたりなどの交流の中で、洋菓子づくりを教えてもらい、「これからは洋菓子を取り入れていかなければ」と思ったのだそうです。

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手塩にかけてつくったバームクーヘンは「クラブハリエ」の人気商品

ヴォーリズがいなければ、人気のバームクーヘンも生まれなかったのかもしれないなんて、驚きですね!

全国展開は百貨店出店がきっかけ

「たねや」「クラブハリエ」ふたつをあわせて47店舗を持つ「たねや」グループ。大手有名菓子店と比較すると少ないですが、地方を拠点とする菓子店としては大きな規模を誇ります。

いまや全国各地で見ることができるお店ですが、かつては滋賀県内でのみ店舗を展開していました。

そこから全国展開に変わったきっかけは、今から35年前のこと。

「日本橋三越の本店、老舗のとらやさんの隣に店を構えることになりました。結果、『たねや』らしさを考えることや現在の店舗展開にもつながっていきました」(「たねや」広報担当)

京都生まれで雅な雰囲気を持つ「とらや」の隣に並んだことで、どのように差別化するべきかを考えた結果たどり着いたのが、滋賀という場所に根付いて商売をしてきたという、それまでの背景です。

「たねや」のある滋賀は、農耕文化の中にあります。昔から続く暦とともに歩む、素朴な暮らしをお菓子でも味わえるよう「歳時菓子」の販売をはじめました。

例えば、1月7日「人日の節句」。1日のみ販売のお菓子ですが、その日に食べる意味をお客様に伝え、日本文化の素晴らしさの継承にも取り組んでいます。また、店舗展開も独自の路線へと展開します。

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甲子園球場3つ分以上の広さを誇る「ラ コリーナ近江八幡」

例えば、2015年にオープンした「たねや」グループの新たな拠点であり、今や近江八幡の人気観光スポットとなっている「ラ コリーナ近江八幡」。自然と人の共生を目指すこの複合の施設は、交通の便が不便な場所にあります。

また「近江八幡日牟禮ヴィレッジ」があるのは、日牟禮八幡宮の境内。どちらも町中の便利な場所とは言い難いですが、地域との関係が揺るがない場所を選んで、店舗がつくられました。

「こういった場所を選んだ理由は、土地の持っている歴史、人との接点を大切にしたいという思いから。交通が多少不便でも、その場所まで足を運ぶ価値があるように。生活に密着した菓子だけでなく、地域に密着する場もつくっているのです」(「たねや」広報担当)

毎日の生活で食べたい「たねや」の定番商品

進物、お供え物、としてもおすすめの、たねやの定番商品をご紹介します。

■1:創業時から続く人気商品「栗饅頭(くりまんじゅう)」

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「栗饅頭(くりまんじゅう)」5個入¥972

創業当初から職人が伝え続けている伝統の味。素朴な味わいは、世代を超えて多くの人々に愛され続けています。栗を刻み入れた白餡を香ばしげな焼き色の生地で包んだ栗饅頭は、何度食べても飽きないおいしさです。

■2:縁起のいい名前&ふたつの餡が楽しめる一石二鳥な「斗升最中(ますますもなか)」

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「斗升最中(ますますもなか)」5個入¥972

ゆず餡と粒餡、ふたつの味が楽しめる贅沢な最中。升の形をしているので、名前にも「升」。升や斗は、水や穀物などの量をはかる「枡」のことです。呼び方も「ますます」と縁起がいい言葉で、「ますます繁盛」するようにとの願いも込めているのだそう。

お土産に持っていったら、喜ばれそうな一品です。

■3:食べる直前に餡を挟むスタイルはたねや発祥!「ふくみ天平」

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「ふくみ天平」6個入¥1,210

最中種に、できたて餡を挟んだときの職人だけが知るおいしさ。今では、食べる直前に餡を包むタイプの最中は一般的になりましたが、このおいしさを誰でも楽しめる形にしたのは、実はこちらの「ふくみ天平」が発祥! 

求肥と北海道産小豆を使った餡を、サクッとした食感の最中で楽しめる、たねやの定番商品です。


近江八幡の人気観光地にもなっているラ コリーナ近江八幡をはじめ、お土産として手に入れたいお菓子がそろっている「たねや」。近くのお店で、伝統の味をぜひチェックしてみてください。

問い合わせ先

  • たねや 
  • TEL:0748-33-6666
  • 住所/滋賀県近江八幡市北之庄町615-1 ラ コリーナ近江八幡

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WRITING :
ミノシマタカコ