「終に」の「おわりに」以外の読み方は?「終」という字は意外な読み方がいっぱい!

3月31日といえば「年度末」ですね。12月31日の「年末」よりも社会生活に密着した「1年の終わりの日」かもしれません。本日は、「終」という漢字を深掘りして参りましょう。

…というところで、さっそく1問目のクイズです。

【問題1】「終日」の読み仮名、いくつある?

「終日」という日本語の読み仮名として正しいものを、次の選択肢の中から選んでください。

1:しゅうじつ

2:ひもすがら

3:ひねもす

※正解はひとつではありません。

正解はいくつある?どれが正解?
正解はいくつある?どれが正解?

さて、正解はどれとどれ?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 1:しゅうじつ、2:ひもすがら、3:ひねもす。なんと3つすべてが正解です!

ところで「ひねもす」ってどこから来た言葉?有名な句にも出てくるけれど…?
ところで「ひねもす」ってどこから来た言葉?有名な句にも出てくるけれど…?

「終日(しゅうじつ)」は普通に読めますが、「終日(ひもすがら)」「終日(ひねもす)」は驚かれた方も多いのでは?

読み方は違えど、3つの「終日」、すべて「朝から晩まで一日ずっと」という意味の言葉です。「一日ずっと」であっても、24時間ではなく「日の出ている間ずっと」という意味です。

「本日は終日(しゅうじつ)事務所におります」といえば、「勤務時間内はずっと」事務所にいるのであろう(24時間ではない)、と思いますよね?

この感覚は、「勤務時間」という社会常識に基づいた解釈なのではなく、「終日」という日本語そのものが「日の出ている間ずっと」を表現しているのです。

「終日(ひもすがら)」と読むときの「すがら」は、「過ぎる」+「更に」=「すっかり終わるまでの間ずっと」を意味する言葉です。

「終日(ひねもす)」という読み方については、与謝蕪村の句「春の海 ひねもす のたりのたりかな」が大変有名です。

これは「春の海で、一日中、ゆったりと寄せては返す波の姿」を登場させることで、「その情景をぼんやり眺めまどろむ心地よさ」も表現した名句と言われています。

…ということは知っていても「ひねもす」という言葉がいまひとつピンと来ない、という方も多そうです。実は以前の筆者もそうでした(笑)。

「ひねもす」は、「日経(ひへ)も すがら」から転じた言葉、という説が有力で、つまり「日が空を通っていく(経る)間ずっと」という意味になります。春の海を、日が出ている間ずっとボーっと眺めていられるような1日…なるほど、のどかで素敵ですね!

「終日(しゅうじつ)」は、「終日(ひもすがら、ひねもす)」の音読みで、同義語です。

さて、もうひとつ、「終」という字の意外な読み方をクイズにしましょう。

【問題2】「終に」は「おわりに」以外でなんと読む?

「終に」という日本語の「おわりに」以外の読み方をお答えください。

ヒント:「終の棲家」という言い回しをする際の読み方と同じです。

「○○に」と読み仮名2文字です。
「○○に」と読み仮名2文字です。

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は・・・ 終(つい)に です。

終(つい)に、今年度の最終日!

「とうとう」「最終的に」という意味の日本語で、「遂(つい)に」という表記もありますね。

「遂」は、「遂(と)げる」とも読みますが、「さまざまな経過を経て、乗り越えた末にたどりつく」ようなイメージを持つ漢字です。

この漢字と並んで「ついに」と読む「終」という字も、

実は、単純な「おしまい」の瞬間だけを意味する字ではなく、

「経過ののちにたどりつく区切り」を意味する漢字なのです。

ヒントで触れた「終(つい)の棲家」という表現も、「死ぬまでの住まい=人生のラストを安心して過ごせるよう、選びぬかれた場」というイメージがありますよね?

今年度はあなたにとって、どんな1年間でしたか? 次年度に希望をつなげられるような、素敵な「最終日」をお過ごしくださいね。

本日は「終」という漢字の難読表現

・終日(ひもすがら、ひねもす、しゅうじつ)

・終(つい)に

をおさらいしつつ、漢字の持つ豊かな背景を深掘りしてみました。

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ILLUSTRATION :
小出 真朱