今日は「キスの日」!キスにまつわる日本語トリビアをお届けします。
本日5月23日は『キスの日』です。魚の鱚(きす)ではなくて、くちづけのほうの「KISS」ですよ。
なぜ5月23日が『キスの日』になったかというと、1926(昭和21)年のこの日、「日本初のキスシーンの入った映画」として大々的に宣伝された『はたちの青春』(佐々木康監督:松竹)が封切りになり、大反響を呼んだそうです。
(※実際に日本初のキスシーンのある映画は、その4か月前に公開された短編『追ひつ追われつ』(川島雄三監督:松竹)になるようです)
キスは日本語では「接吻(せっぷん)」と言いますよね。なぜ、こんな漢字を書くのでしょうか?
キスといえば「唇(くちびる)」で、「接唇」と書いたほうがしっくりくるのでは?と疑問に思ったこと、ありませんか?
…というところで、本日の1問目です。
【問題1】「接吻(せっぷん)」の「吻(ふん)」って、体のどこの部分?
「接吻(せっぷん)」の「吻」という漢字の訓読みとして正しい読み仮名を、以下の選択肢の中から選んでください。
1: くちもと
2: くちさき
3: くちびる
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 2:くちさき、3:くちびる です。
「吻」という漢字は「くちさき」とも「くちびる」とも読み、
「唇(くちびる)」が体の部位を表す漢字なのに対し、
「吻(くちさき、くちびる)」は、体の部位を表す意味ともうひとつ、「口ぶり/言葉つき」という意味も持っています。
「接吻(せっぷん)」は幕末期の日本で、オランダ語「kus(英語:kissと同義)」の日本語訳として登場した言葉、とされています。
西洋では古来から、キスは性愛の表現として交わされるものだけを指さず、家族や友人同士の親愛表現・あいさつとしても行われていますよね?
しかし、幕末期の日本には、まだそういう意味での「キス」に匹敵する行為や言葉がありませんでした。
「接吻」という言葉が登場する以前の日本にも「口吸い」という言葉が存在していましたが、「口吸い」はいわゆる「ディープキス」を指し、男女の秘め事の最中の性愛の表現行為を表す、生々しくもショッキングな言葉でした。
こちらと、オランダ人の「kus」は全然別モノだよね、ということで「接吻」という言葉が、新たに登場したようです。
「吻」は、動物で言うと「口あるいはその周辺が前方へ突き出している部分=くちさき」を全体的に指す言葉でもあるので、西洋式のあいさつのキスは、「吻」を「接する」行為、という解釈でしょう。
ですので「接吻」はいわゆる「フレンチ・キス」や「バード・キス」を意味する日本語です。
というところで、2問目に参りましょう。
【問題2】『キスの日』の由来となった映画の、キスシーンの撮影法は?
映画『はたちの青春』のキスシーンの撮影には、男女の俳優同士が本当に唇を合わせないよう、ある工夫がなされていました。どんな工夫でしょうか? 以下の選択肢の中から選んでください。
1:唇の部分が見えないような角度からの撮影
2:俳優同士の唇の間に薄い布をはさんでの撮影
3:キスシーンのみ女優を男優に吹き替えての撮影
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 2:俳優同士の唇の間に薄い布をはさんでの撮影 です。
当時の日本の慎み深さが伝わってくる、なんとも奥ゆかしい撮影方法ですよね?
本日は、『キスの日』にちなんで、
・吻(くちびる、くちさき)
という漢字の読みと、
「キス」に匹敵する日本語
・接吻
・口吸い
の背景を深掘りしてみました。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 参考文献:『昭和 二万日の全記録 第7巻 廃墟からの出発』講談社
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱