「接待」というと古いイメージを受けるように、「接待マナー」も廃れてきています。しかし、ちょっとした先方との会席の際に、自分の部下が先方よりも先に食事に手をつけたり、へべれけになって介抱される側になってしまったり…。目も当てられない若手の姿に、ショックを受ける上司の方も多くいるのではないでしょうか。

そこで今回は、NHK大河ドラマでもマナー指導を務める、マナー界のカリスマ・西出ひろ子さんに、上司の立場で改めて見直したい、そして意外と知らない接待マナーを教わります。

■1:そもそも「接待」とは何か

そもそも「接待」とは何か

「かつてバブル時代には当たり前のようにあった『接待』も、自粛やコンプライアンス上から消えたかのように思えますが、実は『会食』という名で残っています。しかしこうした場が減少したことは事実であり、接待・会食の場を経験する人が少なくなっている現実もあります。そしていま、企業では『マナーの空洞化』が起きています。実際、40歳以下の管理職の方から『若手にマナーを教えたいけれど、教える側に自信がない』といったご相談をよくお受けします」(西出さん)

自分にとっても、部下にとっても求められる接待マナー。会席の予定があるのなら、ぜひ「接待力」を身につけておきたいものです。しかし西出さんは、型やルールよりも、まず接待の目的を認識することが大事だといいます。

「接待というと特別な感じがしますが、プロフェッショナルとして仕事をする以上、どんなときでも対外的なコミュニケーションすべてに『もてなし力』、つまりマナーを備えています。接待は、信用や信頼をより一層深く築くためのひとつの手段です。そして接待の最終目標は、会社の収益を上げることによる社会貢献と考えています。
目標達成のためには『接待=おもてなし=マナー』が必要です。マナーとは相手の立場に立つことであり、マナーがあれば志(仕事)は達成できます」(西出さん)

■2:意外と知らない接待マナー4つのポイント

意外と知らない接待マナー4つのポイント

接待マナーを知り、身に付けることは会社の利益とその先にある社会貢献のために重要なこと。そうと分かれば、早速、接待マナーを習得していきたいものです。数ある中から、意外と知らない接待マナーを教えていただきました。

■2-1:「店=自社」と心得て、お店選びは最重要

「接待では、選んだお店と自社はイコールであるという意識を持つことが大事です。それだけお店選びは重要であり、失敗は許されません。お店選びの失敗は、あなたとあなたの会社のミスと評価をされてしまうことも。そうならないためにも、可能であれば、事前に自らお店へ足を運び、料理の味はもちろん、接客態度やお化粧室の環境など、隅々まで自分の目と耳と舌で確認をすることをお薦めします」(西出さん)

実際に足を運べない場合には、電話で事前調査をすること。その際は、飲み物や料理の種類、料理を出すタイミングやかかる時間、照明やBGM、客層、隣席との距離感、料理長が挨拶に来てくれるかどうか、傘を貸してくれるかなどを確認するといいそうです。

■2-2:成功する接待の身だしなみ

身だしなみは接待の基本。ここでは盲点になりがちなことを教えていただきました。

・女性も基本的にスーツを着用。ダーク系が基本ですが、上司の立場であれば明るめの色でもOK。
・女性の場合、ジャケットのボタンはすべてとめる。
・スカートの丈はひざより下(椅子に座ったとき・正座のとき含む)。
・座敷の場合はフレアスカートがおすすめです。
・ワイシャツの色は清浄・清潔感を表す白がおすすめ。
・先方より高級なものは身につけない。
・ネックレスなどのアクセサリーは小ぶりで控えめなものを。

■2-3:接待は当日の直前準備が命

「接待は身だしなみなどの見た目の第一印象も大事ですが、第二印象も非常に重要です。第二印象のポイントは、状況と情報の把握にあります」(西出さん)

【把握しておくとよいこと】
・先方の会社の状況、経済、社会など
・先方の体調など
・当日の天候
・当日の道路状況・交通状況

「これらを把握しておくことで、会話のネタにも使えますし、体調を気遣う振る舞いや傘の準備、来られたときの気遣いなどもスムーズに行えます。優れたビジネスパーソンはこの第二印象に力を入れているのです」(西出さん)

■2-4:お店の人を味方につければ接待力は100倍に

「ときどき20~30代の若手の人が、お店の人に対して横柄な口調で対応する場面を見かけることがあります。しかしこれは大変な勘違いとマナーない態度です。接待は、お店の人の協力とマナー力が成功の鍵を握ります。お金を払う立場であっても、お店の人に快くご協力いただけるようお店に対しても感じの良い真心マナーで接しましょう」(西出さん)

■3:接待のシーンでは何を話せばいいの?

接待のシーンで何を話せばいいか

接待の本番は、会席中の会話の場面です。何を話せばいいのか不安になることもあるでしょう。西出さんは次のようにアドバイスします。

「接待での会食は、少なくとも2時間~2時間半は同じ空間を共にします。食事中の会話が重要なのは言うまでもありません。何を話せばいいのかと、よくお悩み相談を受けます。これらは、大企業同士なのか、中小企業、個人事業主なのか、その接待の目的は何なのかによって変わってきます。契約や商談の話をするしないなどは、自社のルールにそってその場の流れで臨機応変に対応します。大切なのは、接待では先方をもてなし、喜んでいただくことが第一です。信頼してもらえるよう、失礼のないものの言い方、言葉遣いはもちろん、場を楽しく盛り上げる段取りの良さが伝わるような会話の内容や話し方を身につけておかれると良いでしょう」

そこで接待の会話の基本的な流れとちょっとしたコツを教えていただきました。

■3-1:乾杯前は、差し障りのない天候などの話題や、みんなが知っている大きな話題となるニュースなどで場をあたためる

例「それにしても○○選手は見事でしたね! これで5回連続の金メダルですね!」

■3-2:お店や料理、服や小物など、目の前の共通点の話で共有感を得る

例 先方が「おいしいですね」と言ったら…
→「それは良かったです。こうしてみなさんといただくとおいしさも倍増します」

例「この食材は何なのでしょうかね。珍しいですね」
→皆が答えられなければ、お店の人も会話に巻き込むこともできる。

■3-3:好きな飲み物や食べ物、趣味、出身地など、個人的な話題で心を開き合う

例「○○社長おすすめのこのワイン、今までに飲んだことのないフルーティーなお味で、とてもおいしいです」
→相手が選んだおすすめの飲み物などを褒めると相手がそれに対して話をしてくれる。

例「しいたけを見ると、田舎を思い出します」
→自分の出身地の話に触れることができる。他の人の出身地の話につながる。

■3-4:経済情勢、業界の情報交換・社会情勢、ニュースなどの話から相手の会社の情報を得る

例 世界・日本の経済情勢の話 → 互いの業界の現状 → 社会貢献事業・CSR、スポンサーなどの情報
「そういえば、御社は、○○選手のスポンサーをなさっていたかと…」
→このように、相手の会社の情勢や今後の動向を伺い知ることにつなげる。ここから今後の仕事でのつながりや、成約などにつながるヒントを得る。

■4:接待の極意は「マナーの先手必勝」

接待の極意は「マナーの先手必勝」

最後に、西出さんに接待の極意を教えていただきました。

「接待はマナー力によって大きく結果が変わります。大切なのは、相手の立場に立つマナー力をもち、先手の言動をすること。相手に心の扉を開いてもらうには、まずは、自らが己の心の扉を開いていなければ結果は出せません。これを私は『マナーの先手必勝』と言っています。勝つとは自分だけのWINではなく、互いのWINを生み出すことです。

接待時に、すぐにその場で契約成立となるのはむずかしいかもしれませんが、その接待がきっかけで長期的には利益になることもあります。そしてあなたの立ち居振る舞い、言動に心からのマナーを相手が感じれば、あなた自身に利益が生じることでしょう」

PROFILE
西出ひろ子(にしで ひろこ)さん
マナーコンサルタント 美道家 
マナーは互いの幸せにある、という真心マナーとおもてなし礼法を伝えるマナー界のカリスマ。企業の人財育成、コンサルティングをはじめ、テーブルマナーや冠婚葬祭のマナーなど、マナーのすべての精通。その活躍は、海外にもおよび、多くのメディアでも紹介される。NHK大河ドラマや映画、テレビ番組などで、多くの女優や俳優、タレントにマナー指導をおこなっている。著書は国内外で70冊以上、著者累計100万部を突破。ヒロコマナーグループ
『かつてない結果を導く 超「接待」術』 西出ひろ子著
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2017.10.11 更新
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EDIT :
石原亜香利