日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。
今回ピックアップしていただいたのは、2020年に創業300年を迎えたという「丹後ちりめん」を使ったミニバッグ「Tango Mini」です。
ひとことで「丹後ちりめん」といっても、その技法や生地の表情は実に多彩。古くから和装に用いられてきたようなオーセンティックなものもあれば、伝統を活かしつつも新たな技法を取り入れたものもあります。
「Tango Mini」は、そんな「丹後ちりめん」の魅力を広く発信しようと立ち上げられたプロジェクト「TANGO OPEN」と、河井さんのコラボによって企画されたもの。京都・丹後で活躍する8つの機元(はたもと)がつくり上げた生地を用いて、日常使いにちょうどいいサイズ感のバッグに仕上げられています。
本記事では、そのなかから4つの機元にフォーカス。次なる100年に向けて、「丹後ちりめん」の伝統と可能性を担う後継者のみなさんもご紹介します。
知っているようで意外と知らない「丹後ちりめん」の歴史と魅力
「京都府の北部に位置し、日本海側に面する海と山に囲まれた丹後半島一帯が『丹後ちりめん』の産地である丹後地方です。1300年以上前から絹織物の産地でしたが、1720年に京都の西陣から学んだちりめん織りの技術をもとに『丹後ちりめん』の生産に成功しました。
以来、丹後では和装文化を支える技術が育まれていきます。生地が透けて見える『絽ちりめん』、色糸や金銀絲などを織り込む『縫取ちりめん』など、撚糸と織り技術を応用することでさまざまなテクスチャーの生地が生み出され、今や日本一の絹織物の生産地に。
最大の特徴であり魅力でもあるのが、立体感のある生地の表情。糸が縮む力を利用して表現される独特の凹凸=シボが、もともとは平面である織物に3次元の奥行きを与えます。
用いられる緯糸(よこいと)は、糸の合わせ方や撚りの回数など、撚糸の組み合わせ次第で無数の種類が存在するそうです。さらにそれらをかけ合わせて織り込むことで、さまざまな表情の生地へと仕上げられていくのです。
さらに、近年では新しい技術やデザインにも積極的に取り組んでいて、従来の『丹後ちりめん』のイメージを超える多様な織物が誕生。パリコレで発表されるファッションアイテムや、ハリウッド映画の衣裳にも使われているのだそうです」
守り続ける伝統と、新たな挑戦。次世代を担う後継者にも注目したい「丹後ちりめん」の機元4選
「もともと『丹後ちりめん』独特の生地感が好きだったので、創業300年を記念したプロジェクトに参加させていただくことになったのは光栄なお話でした。
私なりに、もっと身近に丹後の伝統工芸を感じてもらいたいという思いから企画したのが、20×20cmというミニサイズのバッグです。軽いのでバッグinバッグとしても使っていただけます。
企画に協力してくださった機元の生地を活かすよう、内側や裏面、縫い糸の色合わせにもこだわったデザインに。今回ご紹介する4つの機元とも何度も相談を重ねたのですが、みなさんとても熱心で心を打たれました」
■1:クスカ|「絡み織り」による人気のネクタイ生地がバッグに変身
「“昔の織り技法で今のライフスタイル”をコンセプトに、伝統・ファッション・芸術の3つを融合させるブランド。糸づくりから染め・手織り・商品完成まで、職人の手仕事にこだわったモノづくりを目指しています。
糸の1本1本に空気を含ませ、素材にストレスがかからないようにゆっくりと織り込んでいく『絡み織り』という技法を用い、立体的に仕上げられた生地はネクタイとしても大人気。手織りならではのニュアンスのある陰影と、シルクの光沢が最大の特徴です」
■2:遊絲舎|軽やかな若草色で表現した、伝統的な「市松文」
「明治創業の遊絲舎(ゆうししゃ)は、縄文時代から伝わる最古の原始布『藤布』を現代によみがえらせ、現代の織物と融合した作品を手がけていることで知られています。
今回は藤布ではなく、着物の帯に使われる『市松文』の生地を、絹糸で使って織り上げていただきました。
『市松文』とは、かつて平安時代に、天皇や公家の正装である表袴の地紋に用いられ、『霰文(あられもん)』と称されていた有職文様(ゆうそくもんよう)の柄が起源。徳川吉宗の時代に人気を集めた、中村座の佐野川市松という歌舞伎役者がこの柄の袴を好んで着ていたことから、『市松文』と呼ばれるように。『石畳文』と呼ばれることもあります」
藤布の魅力を伝えるため全国各地の展示販売会を飛び回り、藤の木から糸を績(う)む工程の実演などを通して藤布ファンを増やしている。https://www.fujifu.jp/
■3:吉村商店|「総絞り」を織りで表現。藤色に銀糸が輝く優美な生地
「天保元年(1830年)創業の歴史ある機元で、紋意匠、紬、古代、紗などの伝統的な生地から、野蚕糸、ゼンマイ糸、金銀糸を使ったものまで、扱う生地は数百種類に及ぶそう。
最近は豊富な種類の白生地から気に入ったものを選び、好みの色に染めたいという一般のお客様の声にも応えていて、今回も白地の反物を上品な藤色に染めていただきました。
また、使用した生地は『銀疋田縫取(ぎんひったぬいとり)』というもので、生地を小さくつまんで糸でくくる『総絞り』の模様を織りで表現。銀糸が絞りの凹凸感を演出するとともに、繊細な華やかさをもたらしています」
■4:創作工房 糸あそび|絹リボン糸でつくり出す、豊かな表情のジャカード生地
「丹後独特の織りや撚糸の技術に加え、さまざまな糸種と染をミックスすることで、あえて“丹後らしくない生地の創造と企画”を心がけているという創作工房 糸あそび。
今回のバックにも採用した代表的なテキスタイルである『リボン織』は、絹リボン糸(薄手のテープ状の糸)を経糸(たていと)と緯糸(よこいと)に使用し、手織りした後に反染めしたものです。
経糸と緯糸の双方がねじれることなく手で織り上げるには高い技術が必要で、ベテランの職人でも1日に2~3mしか織ることができないとか。海外のトップブランドからも愛されているという貴重な生地です」
豊富なバリエーションからお気に入りを探したい「Tango Mini」
迷彩やドットなど、モダンな柄もラインナップしている「Tango Mini」バッグ。今回ご紹介した以外の機元のアイテムも素敵なので、ぜひHPをチェックしてみてください!
阪急うめだ本店で「futo」のポップアップが開催!
河井さんがオーナーを務めるギフトセレクトショップ「futo」のポップアップショップ「スタイリスト河井真奈が選ぶ 絶対欲しいアイテム100」が、2020年12月23日(水)より阪急うめだ本店で開催されます。
今回ご紹介した「Tango Mini」をはじめ、日本各地から厳選された逸品と出合える機会をぜひお見逃しなく!
「スタイリスト河井真奈が選ぶ 絶対欲しいアイテム100」詳細
- 期間/2020年12月23日(水)~12月31日(木)
会場/阪急うめだ本店6階 プレミアム プロモーションスペース61
営業時間/10:00~20:00 ※変更の可能性あり
住所/大阪府大阪市北区角田町8-7
TEL:06-6361-1381(代表)
今回は、スタイリストの河井真奈さんがプロデュースした、丹後ちりめんのバッグ「Tango Mini」をご紹介しました。
職人のみなさんが丁寧に織り上げた生地は、それぞれ温もりと奥深い魅力を湛えています。間近に迫ったクリスマスの気軽なギフトを探している方にもおすすめです!
※掲載した商品はすべて税抜で、記事公開時のものです。
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- EDIT&WRITING :
- 谷 花生