「Form First, Function First」をキーワードに、美しさと機能性が両立する洗練されたシンプルなデザインの家具を世に送り続ける、1907年創業のドイツのオフィス家具メーカー、「Wilkhahn(ウィルクハーン) 」。

156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載では初登場となるこのブランドを、前後編の2回に分けてご紹介します。

【前編】となる本記事では、2009年に発表された“自由に”“健康的に”座れる椅子「オン 」をピックアップ。その魅力をさまざまな角度からレポートします。

ワーキングチェアの新しいスタンダード、「健康的に座る」という提案

コロナ禍による外出自粛やオンライン会議などの影響でPC作業の長時間化が進み、運動不足が社会的な問題となっています。体を動かすことは人間が生来身につけているストレス解消のメカニズム。運動不足が心身に大きなマイナスを及ぼすことが、近年盛んに報告されています。

ある一定時間座って仕事をしたら、意識的に“立って”運動しましょうというのが定石。そこを一歩進めたのが今回ご紹介するウィルクハーンの「オン」です。

ウィルクハーンは、ドイツ国立ケルン体育大学と協働し、座っている時にも身体にちょうどいい刺激を与えるために“動く”ワークチェア「オン」を5年の開発期間を経て2009年に発表しました。

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【ブランド】ウィルクハーン 【商品名】オン 【写真の仕様の価格】¥189,200 【サイズ】幅700×奥行き660×高さ970~1150、座面高400~52、肘高 620~840(mm) 【材質】フレーム/アルミ・アルミつや消し 背シェル/ポリアミド・ポリプロピレン 背張り地/ファイバーフレックス35/99 座板/ポリプロピレン 座クッション/ウレタンフォーム 座張り地/ファイバーフレックス35/99 肘フレーム/ポリアミド 肘パッド/ポリウレタン 脚/アルミ・アルミつや消し 

勤務時間に仕事しながら運動不足を解消! 

「動ける」椅子と聞いて、皆さんはどのような椅子を想像しましたか? エクササイズボールやスプリングチェアのようなものでしょうか? 

それらに比べると「オン」の見た目は随分と普通ですよね。身体を活性化し刺激を与えることが目標とはいえ、わざわざ動かさなくてはならないのでは期待する効果が得られません。

普段運動をする習慣がない人でも疲れないような掛け心地、人の動きに寄り添って動く椅子、そのような椅子に座って仕事をすることで結果として運動不足も解消される、そんな都合のいい話があるのでしょうか?

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自在に傾く座面がダイナミックな動きに心地よく寄り添う「オン

2009年に発売された「オン」がそうです。その秘密はウィルクハーンがドイツ国立ケルン体育大学のスポーツ&ヘルス研究所と協働して独自に開発した三次元に動く「トリメンション」というシステムにあります。

人体の生物力学的な分析により、筋肉と骨格を活性化するのは主に「腰の三次元の動き」であるという研究結果が得られました。人間の腰の動きの柔軟性を椅子の動きに取り入れ、椅子に人間が歩く時のような動きを教えることが理にかなっているという発想から開発されたのがトリメンションシステムなのです。

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子どもをあやしたり、電話をとったり。リモートワーク特有の忙しさにもマルチにフィットします

簡単操作で「オン」を自分好みに微調整してみよう

「オン」は簡単操作でどなたでも好みの座り心地に微調整できます。動かせるのは、背板・座面・アームの「高さ」と、“動き”の「柔らかさ」です。

まずは、深く腰掛けた状態で両足がきちんと床につく座面高に設定。

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座面の高さ調節。着座した状態で、座面右下にあるレバーを押しながら上下します

次に、心地よい高さに背板を上下させて位置を決めます。

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背板の高さ調節。着座した状態で、背板下部の厚みを使って上げます。下げたい場合は上から押せばOK

自然に腕を下ろした時に肘が楽に置ける高さにアームを調節します。

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アームの高さ調節。着座した状態で、アーム下にあるボタンを押しながら手動で上下します

最後に、動きの柔らかさを調整します。一番緩く設定しても着座時に違和感はなく、後述の体操がしやすかったです。

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動きの柔らかさ調節。着座した状態で、座面左下にあるハンドルを回します。前に回すと緩み、後ろに回すと硬めにできます

着座したまま1分でできる「オン」タイムストレッチ

もう少し積極的に運動を取り入れたいなら、効果的に体を活性化させる「オンタイムストレッチ」はいかがでしょうか? 

早稲田大学スポーツ科学学術院の川上泰雄教授監修によるもので、「オン」に座ったまま手軽にできる1分間ストレッチ。「骨盤を左右に倒す」「骨盤の前後運動」「大きく斜め後方へ胸をねじる運動」の3種類があります。

デスクワークに疲れたら、即実践すると効果的です。凝り固まっていた体も心もほぐれて、新しいアイデアが浮かぶかもしれません。

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屈伸(縦方向の動き)、屈曲(横方向の動き)、骨盤の回転など、人体の自然な三次元の動きを促進するトリメンションが、勤務時間中の自然な動きによる運動をサポート

小柄な女性でも「伸び」を感じられるためのストレッチのポイント

骨盤の左右や前後運動はダイナミックな動きを感じられるのですが、身長と体重のバランスで上体をねじる運動では伸びを感じにくい場合があるかもしれません。そんな時は、座面に対して対角線上に座り、手を上に伸ばして腕ごと上体をねじるようにしてみてください。

椅子の高さはと足裏全体が床についた状態で膝が90度になるように、リクライニングの柔らかさは一番緩めに設定。リクライニングは柔らかいほうが体操に適しています。最後にアームを一番高いポジションにセットします。後ろにグーンと伸びられる「高さ」と「柔らかさ」 が微調整のゴールです。

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「オン」でなければできないような姿勢に。お腹の横が絞り上げられるように伸びて気持ちよかったです

いかがでしたか? その端正な見た目からは想像できない柔軟性をもった「オン」。シンプルで無駄のないデザインは、日常のインテリアにも違和感なく溶け込んで空間の質と私たちの健康の質の両方高めてくれます。ぜひ、実物をお試しになってみてください。

※掲載した商品は税込です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM