「Form First, Function First」をキーワードに、美しさと機能性が両立する洗練されたシンプルなデザインの家具を世に送り続ける、ドイツのオフィス家具メーカー「Wilkhahn(ウィルクハーン) 」。
156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載では初登場となるこのブランドを、前後編の2回に分けてご紹介します。
昨日公開した【前編】に続き本記事では、1993年の発売以来、今もなおロングセラーを続ける“立つ”と“座る”の中間の姿勢で360度自由に動けるスツール「スティッツ 」をピックアップ。その魅力をさまざまな角度からレポートします。
“立つ”と“座る”の中間で支えてくれる「スティッツ 」
「スティッツ」 は一番低い位置でも63cmと腿の高さ、一番高いと88cmと腰のあたりまでの座面高があるスツールです(一般的なダイニングチェアやワークチェアは座面高40〜45cm前後)。
「立つ」と「座る」の中間の着座姿勢が取れる「スティッツ 」は、ここ数年で多くの企業が取り入れた“立ち会議”の導入の際にその価値を再発見され、1993年の発売当時よりも正しく評価され大ヒット! まさに時代がデザインに追いついた名作スツールは、オフィス空間だけでなくリモートワークにもオススメです。
1970 年代初頭に、「正しい姿勢で座る」ことが重要とされていたワークチェアの常識に一石を投じたのがウィルクハーン。専門家と協働して行ったオフィス空間における人間の姿勢や動きについての綿密な研究の結果、「着座時にいかに身体を動かすか」が心身の健康にとって大切だということが明らかになりました。
360度自由自在に動けるから、スモールスペースに設置可能
今までの生活空間にワークスペースを設けることになった場合、そんなに広いスペースはなかなか取りにくいもの。それでいてオフィスにいる時よりも雑多な用事が増え、すぐに対応したい場合に椅子をひいたり回転させたりするのはなかなか難しいですよね。
その点「スティッツ 」は直径31cmのスペースさえあれば設置できて、重心移動で360度向きを自在に変えることができます。たとえばハイスツールのように使って、自宅のキッチンカウンターの片隅をワークスペースにするのも「スティッツ 」なら可能です。
インテリアに“動き”を感じさせてくれる「スティッツ 」の魅力
インテリアには斜めの要素はほとんどありません。そのため、空間に斜めに佇む「スティッツ」 が作り出す“抜け感”の効果は絶大。ふわりと風で動くカーテンや明暗を作ってくれる照明に加え、「スティッツ 」を一脚置くことで“動き”が生まれ、空間の質が一気にリラックスした風通しのいい雰囲気に変わります。
椅子の起源はもともと権力者がその力を誇示するためのものでした。そのせいか椅子には座っている人の気配を感じさせる特性があります。「スティッツ」 の作り出す自由で柔らかな雰囲気は、くつろぐ場所でもある自宅で仕事をする私たちに、ちょっとした心の余裕を与えてくれる重要なポイントになってきます。
小柄な女性が「スティッツ 」を使いこなすためのちょっとしたコツ
「スティッツ 」はシート下に位置するレバーにより、630~880mmの範囲で座面が昇降し、簡単に高さ調節ができます。ドイツ人男性のようなしっかりした体格の方にも対応できるだけのガス圧があり、それは快適な座り心地においても重要な要素でもあります。
ただ、小柄な女性にはちょっとしたコツが必要になってきます。無意識に座ろうとした際にレバーに触れると、しっかりとしたガス圧で体が押し上げられてしまうことがあるのです。
コツは「人」という漢字をイメージして片方の足で踏ん張り、お尻でまっすぐ好みの高さまで押し返すこと。そうすれば体重が軽くてもしっかり座面高を調整できます。
気分次第で簡単に移動できる自由も魅力
「スティッツ」は、床に接するベースの中に微粒の砂が重石として入っているため約7.5kgあり、傾けても安定してくれます。女性一人でも運べる重さですが、見た目よりもずっしり感があり座面が回転するので持ち上げる際はちょっとしたコツが必要に。もしくは、形の特徴を生かして転がしても簡単に移動できます。
いつの時代も少し先を見据える、「ウィルクハーン 」とは?
現在はドイツ品質のオフィス家具メーカーとして有名なウィルクハーンですが、1907年創業時は北ドイツのバッドミュンダーに二人の若い木工職人が立ち上げた共同経営の椅子工房でした。
1950年代には、ドイツ工作協会と実験的なフォルムの椅子を数多く発表。第二次世界大戦後の1952年、初めて開催されたケルン家具フェアでドイツ工作協会(DeWe)とパートナーシップを結び、バウハウスの流れを組んだ有名デザイナー達と共に、余計な装飾のない新しいスタイル、新たな素材が可能にする造形の実験的なフォルムの椅子を数多く生み出していきます。
1960年代から巨大なビル建築が盛んになって、オフィス家具需要が拡大していくに従い、着座時の疲労軽減と健康に資する製品開発のため、徹底した人間工学の研究を行い、その成果をデザインに取り入れていきます。
そして1970年代、人間工学をワークチェアのデザインに取り入れ、世界的大ヒットとなるのです。
1990年には、『目先の利益の極大化よりも環境保護を優先する』とした環境宣言を行い、環境マネジメントの専門家ルディガー・ルッツ教授らとともに家具メーカーで初めて、独自の包括的エコ・コントロール・システムを構築しました。
そして2009年、昨日公開した【前編】でもご紹介した、従来の人間工学に“運動工学”のエッセンスをデザインに生かした「オン」を発売します。
“正しく”座るために人間工学を取り入れるという考えが主流の中、“自由に”“健康的に”座るために運動工学を取り入れ、その結果座面が左右にも傾くワークチェア「オン」を発表したのは非常に新しいアプローチでした。
いかがでしたか? 就業時間後に運動の時間をわざわざ設けなくとも、仕事をしながら自由に動けるワークチェアとは、大きな変化の中にある私達にぴったりなアイテムですよね。
取材をしていて、「動く」ことはとても楽しいことだということを思い出させてくれる体験をしました。みなさんもぜひ試してみてください。
※掲載した商品はすべて税込です。
問い合わせ先
- LIVING MOTIF(リビング・モティーフ)
- 営業時間/11:00~19:00
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- TEXT :
- 土橋陽子さん インテリアエディター
公式サイト:YOKODOBASHI.COM