京都の老舗和菓子店、聖護院八ッ橋総本店の長女として生まれ、専務取締役として新風を吹き込んでいる鈴鹿可奈子さん。幼少期から海外留学、他業種での活躍を経て稼業を継ぎ、新しい業態も生み出してきた様子をこれまでうかがってきました。インタビュー最終回は、社長であるお父様との関係や社員との付き合い方、これからのことについてうかがいます。
- 【第1回】京都で328年続く老舗、聖護院八ッ橋総本店の後継者・鈴鹿可奈子さんとは
- 【第2回】八ッ橋=お土産イメージか脱却するための挑戦が始まった
- 【第3回】「本物の京都」を知ってもらうためにしていることとは?
異性だからこそ上手にいく「父娘」関係
「仕事のことで父から細かいことを言われることは、最近減ってきました。比較的自由にさせてもらっています。『nikiniki(※)』の内容についても言いたいことはあったと思いますが、飲み込ん任せてくれた感じでしたね(笑)。何かを始めたり、変えたりするときもまずは父に相談して、やっていいか悪いかのジャッジをしてもらいますが、その後、途中で父が口を出すことは少ないです。とは言え、気にしているとは思うんですが。たまに、経営方針などでお互いの意見が食い違うこともあり、親子だからこそ私も引き下がれなくなり、父も言い方が強くなることもありますが、後から『言い過ぎました、ごめんなさい』とお互いなります。こういうところはもしかすると、父と息子より父と娘のほうがうまくいくのかも知れませんね。これが母と私だったらずっと平行線ということにもなりかねないし、父も娘にはちょっと甘いところもあるし、同性じゃないからうまくいくこともあると思います」
母からもらう「お客様目線」の意見
「現在は実家で両親と暮らしているんですが、家では仕事の話はしないでおこうと決めています。とは言え、お互い忙しいので、時間がないときは家で仕事の話になってしまうこともありますが、話を終えればプライベートな時間に切替えますね。ただ、母に仕事の相談をすることもありますよ。母からはお客様目線に近い意見がもらえます。父と私は毎日、八ッ橋を試食しているんですが、それが逆に慣れになってしまっていることもあって。母は舌が敏感なので、味に関しては特に的確な意見を言ってくれます」
部下を呼ぶ際も「さん」を付けて
「幼いころ、自宅と会社が近かったこともあり、しょっちゅう会社に出入りしていて、そのときから遊んでくださっていた社員さんも多く、見守ってもらっているという安心感がありますね。nikinikiを始めたときも、「何がはじまるのか」と皆不安に思っていたと思いますが、『かなちゃんがやることやし、まあとりあえず応援しよう』と家族のような温かい目で見ていただいていたと思います。また、父は社内では役職の上下に関係なく、仕事中は役職名または『さん』という敬称をつけて呼ぶことを徹底していて、私もそうしています。呼び捨てになるとその後に続く言葉も乱雑になるし、怒っているときでも『さん』をつけて呼ぶだけで少し落ち着き、ていねいに対応できると感じるからです」
これからも、幼いころから変わらない「想い」を大切に
「これからまた、生活スタイルも変わっていくかもしれませんが、仕事に関しては、今と同じように突っ走っていきたいと思います。お菓子が好き、そして八ッ橋が大好きという気持ちは今も昔も変わっていません。これからもその想いを大切に頑張っていきたいと思っています」
創業328年の老舗を継ぐという重圧に負けず、「八ッ橋が好き」という、幼いころから持っている素直な気持ちを原動力にがんばる鈴鹿さん。聖護院八ッ橋総本店はもちろん、京都という街の魅力を今後どう発信されていくのか?期待が高まります。
http://www.shogoin.co.jp/
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 香西ジュン
- WRITING :
- 天野準子