キャリアを重ねてきたからこそ大切にしたい、ちょっとした礼儀作法。よかれと思う行動やさりげない言動が、実は相手に対して慇懃無礼だったり、不快感を与えたりしていたら心外ですよね。

国際的なビジネスコンサルタントとして、また長年に渡り茶道を経験、考察されてきた山﨑武也さんに、覚えておきたいNGな礼儀作法をお聞きしました。どれもやりがちなものばかりなので、気をつけていきましょう。

■1:「考えておきます」と言う

この言葉は相手に期待をさせている

例えば、「これをあなたに差し上げます。受け取ってくれますか?」と言われたら、「考えておきます」とは言いませんよね。「いただきます」とお礼を言って受け取るという人が多いのではないでしょうか。

「日本人が『考えておきます』と言ったら大抵、それでピリオドの場合が多い。言ってみれば逃げ口上、よく言えば社交辞令です。

でも、お願いする方は、藁にもすがる思いでお願いしているので、そう言われたら『できるかもしれない』と期待を抱いてしまう。その期待がだんだん膨らみ、人によってはエスカレートして、最大の希望になってしまうことがあるのです」

そんな状況で、なかなか返事がこない、連絡しても返事を先延ばしされる、結果的に断られる…といった事態ともなれば、お互いの関係にヒビが入り、大きなトラブルにもつながりかねません。

「『考えておきます』と言っていいのは、かなり実現の可能性があって、自分の力ではできる、でも誰かが反対するかもしれない、それをクリアするために時間が必要、そういった時ぐらいでしょう。可能性が50%以下では言うべきではないと思います。またはいったん断っておく方が親切です。

もし『考えておきます』と言ってしまったけれど断りたい場合、相手が連絡をしてくる前にごめんなさいと謝るべきですよね。そうすれば、早く片が付いて自分の頭もすっきりするし、お願いしてきた方もすぐ次に進めますので」

■2:相談しっぱなしのままにする

就職、仕事、結婚の話など、もし誰かに何かを相談したい場合、信用している人にしか相談しませんよね。だから、うまくいった場合もだめだった場合も、必ず結果を報告すべきだと山﨑さんはいいます。

「その方が、うまくいったにしろいかなかったにしろ、コミュニケーションを保ち、関係が切れずにすみます。

勝手に相談してきたにもかかわらず、なんの報告もないと、相手はうまくいったのかどうかもわからない。そうなると、その次からは相談しても『今ちょっと忙しいから』などと、適当にあしらわれるようになると思います」

相談する相手は基本的に自分が信頼している大切な人であり、また相談するにあたり自分についての情報をかなり与えています。それゆえきちんとした報告がないと、結局自分が損することになりかねないそう。

「もし相手が自分に悪感情を抱いてしまったら、悪い噂を言いふらされても仕方ありません。軽く相談してみた程度でたいした話もしなかった場合には、それはそれでいいと思いますが、そうでない場合は逐一報告すべきでしょう。

相手が自分を悪く扱わないようにする、というセキュリティの意味も含めて、これは損得の問題として、きちんとした方がいいと思います」

■3:ポイントがずれたところを褒める

担当じゃないものを褒めても困らせるだけ

山﨑さんは茶道の指導もされていますが、昔こんな出来事があったそうです。

「ある国の王子が来日した際、お茶に接待していろいろ説明して差し上げたんです。そしたら、帰りのお見送りの際に王子が私のところにいらして、『あなたの説明はわかりやすく、茶道のことはよく知らなかったけれど興味をもちました』とおっしゃった。

ただ『ありがとう』と言うのではなく、どこがよかったのか細かいところまで説明してくださった。王子が言ったとかそういうことではなくて、具体的に言ってくださったので、褒められた方としては非常にうれしかったのです」

例えばレストランで誰かにご馳走になったときも、ただ『ごちそうさまでした』とお礼だけ言うのではなく、特に何がよかったのか、自分が感銘した点を褒めると真実味が伝わるといいます。

ただし、褒めるポイントがずれると逆効果になる場合も。以前、日本の政治家がフランス料理を食べた後、シェフに対して「特にパンがよかった」とコメントしたことがありました。

「シェフはパンには直接かかわっていないので、やはり同じ褒めるなら料理を褒めてあげたほうがいいでしょう。メインのものとか、こういう料理は初めて食べたとか。ご馳走する側にしてもシェフにしても、いろいろ考えながらおもてなしするわけですから、『ポイント』を褒めてあげることが大事かと思います」

■4:接待する側より先に行く

もしも、接待される側が約束の30分前に店に行き、接待する側が15分前に行ったとしたら―? それだけでバランスが狂ってしまいます。

「時間どおりながら、接待する側が少し遅れて着いた。それでも相手には『すみませんお待たせしました』と謝らないといけない。早く来たのは相手の勝手、というわけにはいかず、相手が待っていたのは事実。なので、エチケット上は『お待たせしました』と言わなければなりません。でもやはり、接待する側にいきなり謝らせてはいけないと思うのです」

誰かの家に食事に招かれた場合、時間より早くは行かない、時間寸前に行くというのが一般的マナーです。それと同様、接待する側の準備時間を確保してあげる配慮が必要です。

「接待する側は、段取りやら席順やらいろんなことをセッティングします。初めて使う店の場合は特に、窓際より景色が見える側に座ってもらおうとか、早めに行って店の人といろいろ設定するわけです。

だから大雨でもない限り、接待された側がその店に入るのは2~3分前がいいでしょう。それより前に行くべきではないと思います。

接待される側は100%お客さん、という姿勢がいちばん。相手の親切に身を委ね、いいお客様になりきり、接待する側に『おんぶに抱っこしてあげた』という気持ちにさせる。それが、接待される側のお礼だと思うのです」

■5:モノを引きずって動かす

敬いの心が足りない人だと思われる

テーブルにお茶や何かを置き、それを手で押しやって動かす。よくある光景です。けれども山﨑さんは茶道の指導の際、一度お茶を置いたら1ミリも動かしてはいけないと教えるそうです。

引きずることで摩擦が生じ、他人や自分の心の中に軋みが生じるのだとか。茶道では、人に対するのと同じように物も大切に扱い、敬いの心を持って接するそうです。

「例えばそのテーブルがものすごく高級なものだったら、誰でもその上で物をずらしたりはしないでしょう。同じように、たとえ使い古したテーブルであっても、立派なテーブルのように扱わなければなりません。

置くべき場所にさっと置かないでまたやり直すというのは、自分の方向感覚というか、見極めが悪いわけです。物も押されたら嫌な思いがします」 

物を移動するときには一度にぱっと持ち上げ、目指す場所にゆっくり、一度でおろすのが正しい作法。

また、他人の家や会社を訪れた際、テーブルの上にカバンなどの荷物を置いてはいけないそう。「たとえそれが50万円のハンドバッグであってもです。テーブルには置かず、床に置くのが礼儀です」

山﨑さんによれば、テーブルは「物を持ち運ぶ道具」を置く場所ではなく、食べ物や飲み物などを置く可能性のある場所。疵をつけたり汚したりしないように、清潔にしておくべき場所なんだそう。物事の意味や背景を知ることで、美しい振る舞いにつながりそうですね。

 

このなかに、「普段やっていた!」というものはありませんでしたか? どれかひとつでも当てはまったら、これからは正しい礼儀作法を身につけ、よりいっそう周囲の人から好感を抱かれるような女性を目指していきましょう。

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PROFILE
山﨑武也(やまさき たけや)さん
広島県生まれ。1959年東京大学法学部卒業。ビジネスコンサルタントとして国際関連業務に幅広く携わるかたわら、茶道など文化面でも活動を続ける。仕事術、仕事にまつわる人間関係などのビジネス書での著作が多い。著書に『信用される人が絶対にやらない44のこと』(日本実業出版社)、『「気の使い方」がうまい人』『ちょっとしたことで「かわいがられる」人』『持たない贅沢』(いずれも三笠書房)、『外国人は日本文化の「何」を知りたがっているのか』(淡交社)、『弁護士に依頼する前に読む本』(日本経済新聞出版社)などをはじめ多数ある。
『なぜか好かれる人の「ちょうど良い礼儀」』山﨑武也・著 日本実業出版社刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
小野寺るりこ