靴好きの男性は靴磨きの方法に一家言を持つものだが、シューケア製品を専門に扱うR&Dのシューケアマイスター、三村宙央さんは、「靴磨きは女性の化粧と同じ」と断言する。とはいっても、女性の「化粧」のようには道具はいらない、慣れてくれば時間も掛からない。
動画でわかる簡単靴磨き
![R&Dのシューケアマイスター、三村宙央さん。いつもは東京・三越銀座店の5階で、靴磨きの技を披露する。](/mwimgs/9/b/-/img_9bf7f568b937f5908d6ac7d2724e3432118657.jpg)
靴磨きに必要な道具は、「ステインリムーバー」と呼ばれる汚れ落とし、靴クリームとブラシ、靴磨き用の布だけ。「ブラシが意外に重要なんです」と三村さんは話す。
STEP1.靴にシューキーパーを入れ準備
![靴にシューツリーを装着したから靴磨きをした方が、シワが伸びて汚れもよく取れる](/mwimgs/5/d/-/img_5dcf8b4cdd9ed93e9a2c2a6d68b2383e130675.jpg)
まずは靴にシューキーパーを入れる。履きシワを伸ばし、シワの間に入った汚れを取りやすくするためだ。次が埃などを取るブラッシング。「汚れ落としで使うブラシは毛先が細かく、柔らかい馬毛のブラシがベスト」と三村さんは話す。
STEP2.クリーニング
![ブラッシングをした後、古くなったクリームを取り除くために「ステイリンリムーバー」を布に付け、軽く塗っていく。](/mwimgs/f/7/-/img_f7a0e2ea4a20be71a7f7eeb95384d752127625.jpg)
次が化粧の「クレンジング」にあたる汚れ落としだ。
水性の「ステインリムーバー」ならば、古いクリームを落としてくれると同時に汚れや汗も落としてくれる。古いクリームを一度落とすことも靴磨きでは重要だ。加えて、革の通気性もよくなる効果がある。
「力をあまり入れずに軽く塗る、これがポイントです」と三村さん。
STEP3.乳化性タイプのクリームで靴に潤いを
![水溶性クリームを使えば、初心者でも簡単に靴磨きができる。クリーム用の小さなブラシを使いまんべんなく塗る。](/mwimgs/4/c/-/img_4ccd5cea918eb8a477360d9cbf9f5746112945.jpg)
次が靴磨きの本番だ。靴用クリームは主に油性と乳化性の2タイプがある。
「油性と乳化性のクリームは、まったく別物です。乳化性でないと革の栄養補給はできません」と三村さんは話す。昔ながらの油性タイプで磨くプロもいるが、乳化性タイプには水分が含まれているので、クリームが靴に素早く浸透し、栄養と潤い、光沢を与える。
一般の人なら乳化性タイプが選択すべきだろう。
STEP4.ブラシで余分なクリームを取り除く
![硬めの毛のブラシを使い余分なクリームを取り除く。クリームが乾かないうちに仕上げることが大事だ。](/mwimgs/1/3/-/img_13417c28f2d22383e83e61cfc298d422146996.jpg)
塗ったクリームが乾かないうちに再びブラッシング。このときのブラッシングは、クリームを全体に広げ、余分なクリームを取る役割を担う。
「この段階でかなり光沢が出るはずです。汚れ落としの場合とは違い、ブラシは硬めがいいでしょう。豚毛や化繊などがいいと思います」と三村さん。
クリームを多く塗れば光沢が出るのではとついクリームを塗り過ぎてしまう人も多いが、これは靴には逆効果に。「薄化粧」する感覚で靴磨きを行うべき。
だから三村さんは「靴磨きは化粧と同じ」だと語る。
STEP5.仕上げ
![ブラッシングの後は、専用の布などを使って仕上げを。](/mwimgs/a/6/-/img_a624fc748f2f2ab5d782eeadecd5817b144092.jpg)
最後に布=クロスで磨き上げれば、靴磨きは終了する。慣れれば片足5分もかからない。
次に三村さんが披露してくれたのが、「ハイシャイン=鏡面磨き」と呼ばれるプロ級のテクニックだ。靴のつま先やかかと部などに、この磨き方を施せば、光沢のトーンが変化し、色の深みが出て来る。
靴磨きの職人が伝授! 誰でも簡単にできる鏡面仕上げ
![「ハイシャイン」の靴磨きに使うのは油性ワックス。つま先やかかとなど、部分的に「ハイシャイン」を行う方が効果大。](/mwimgs/3/a/-/img_3a83280525c1af22e58e57380fb44921106045.jpg)
上で紹介したように、一般的な靴磨きが終了した後、「ハイシャイン」に。
ここで使うのが、今度は油性のワックスだ。このワックスを布で「ハイシャイン」したい部分に2〜3回塗り込む。塗り込むときには円を描く要領で。
次は馬毛などの柔らかいブラシを使ってやさしくブラッシング。強くブラッシングせずに、革の毛穴にワックスを埋め込むようなイメージでやるといい。これは靴全体にワックスを均一に広げ、定着させることは目的だ。
![油性ワックスの蓋などに水を少量入れる。](/mwimgs/c/7/-/img_c77fe0e3b8af27d3f840da5e7961532b97198.jpg)
![油性ワックスの蓋の水を指先に1、2滴付け、それを「ハイシャイン」したい場所に。](/mwimgs/e/6/-/img_e68120961406e0599f7583bd9f6048dd73058.jpg)
![左がつま先を「ハイシャイン」したもので、右が通常の水溶性クリームだけで靴磨きをしたもの。輝きが違う。](/mwimgs/0/2/-/img_022aa7335b7d5dee4fd44d2c1d5ec6a4233813.jpg)
次が指先に水を1〜2滴とり、ワックスを塗った部分にのせ、布でワックスをならしていく。これは水を利用してワックスを平らにしていくのが目的で、これも軽く、円を描くようにしていくのがコツです。水滴でワックスをならしていく工程を繰り返していくと、指に引っかかるような感じが出てきたら「ハイシャイン」完成までもう一歩。磨き部分の表面にロウがのってくると、「ハイシャイン」独特の深い光沢が得られる。
オルガ・ベルルッティは「靴を磨きなさい。そして男を磨きなさい」と語るが、靴磨きは難しいものではない。他人に任せず自分で磨けば、靴への愛着もさらに深まるだろう。
![R&Dのオリジナル製品、M.モゥブレィはイタリア、英国、ドイツなどの工場で生産するシューケアグッズ。詳しくは、http://www.randd.co.jp](/mwimgs/2/a/-/img_2a94cb931db325bb319a3d7c438a94e9203543.jpg)
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- TEXT :
- 小暮昌弘 エディター
- MOVIE :
- 永田忠彦(Quarter Photography)