古くから伝統工芸の町として高い美意識を育んできた金沢が、今、私たちの暮らしに寄り添う「生活工芸」の聖地として再注目されています。
工芸好きの間で「生活工芸」という言葉が使われるようになったのは、ここ最近のこと。工芸のつくり手を応援する機運が高まり、ものづくりの風通しが良くなったことで、金沢を拠点とする若手職人や作家が増え、伝統工芸を現代の暮らしに落とし込んだ工芸品が生み出されるようになりました。
それらの特徴はいずれも「人々の暮らしに寄り添った工芸品」であること。海外の器のようにデザイン性に重きをおくのではなく、まず第一に考えられているのは「使う人に愛されるものづくり」であり、使うたびに愛着がわく“日々の工芸”がつくられているのです。
そんな生活工芸は雑誌『和樂』2016年8・9月号特集内のインタビュー記事「工芸ってなぜこんなに楽しいんでしょう?」にて、ガラス作家・辻 和美さんがおっしゃるとおり、人の暮らしをほんのちょっと豊かに、ちょっと幸せにしてくれるものだと思うのです。
「毎朝1杯の水を飲む。ごく普通のありふれた風景だけれど、そのときに使うのが、大切に選んだ大好きなコップというだけで、ほんのちょっと幸せな気持ちになる。そういうことって本当にあると思うんです。小さなコップひとつで、人生が少し変わるかもしれない。小さなコップひとつを日々使い続けることで、なくてはならない大切なものに育つかもしれない。それが生活に寄り添うということ。工芸がもつ大きな力だと思います」──ガラス作家・辻 和美さん
人々の生活に寄り添った工芸のお店が集まっていることから、“生活工芸の聖地”といわれるようになった金沢。そんな金沢で、愛ある工芸に出会える場所を、日本文化紹介マガジン『和樂』よりご紹介します。
【工芸の聖地巡礼01】辻 和美さんがつくるガラスをオーダーしに、ギャラリー「ファクトリー ズーマ」へ
【工芸の聖地巡礼02】老舗酒蔵の直営店「福光屋 金沢店」では人気陶工、德永遊心さんのかわいい九谷焼を
【工芸の聖地巡礼03】地元のつくり手、工房あめつちの陶皿でいただく「東出珈琲店」の絶品チーズスフレ
【工芸の聖地巡礼04】金沢のカフェやバーで人気のトレーは桐工芸の専門店「岩本清商店」のオリジナル
- TEXT :
- 高木史郎さん 和樂編集長
公式サイト:INTO JAPAN
- クレジット :
- 写真/篠原宏明 構成/輪湖雅江 文/渋谷香菜子