ショップで売られている素敵なデザインのヒール。素材や色、形によって毎シーズン新しいものが欲しくなってしまいます。でもそのデザイン、もしかするとあなたの足を痛めてしまうかもしれません。しかもローヒールだからといって足が痛くならないわけでもないんだそう。

見た目も美しく、かつ歩きやすいヒール靴はヒールの形状が鍵を握っています。前回のつま先の形別でみるぴったりなトウの選び方に引き続き、馬喰快歩(ばくろかいほ)堂 で足専門の理学療法士である三浦賢一さんに足が痛くなりにくい正しいヒールのデザインと、実はハイヒール向きではない足についてお伺いしました。

■ハイヒール向きではない足とは?

三浦さんに正しいヒールの選び方についてお伺いする前に、ハイヒールが向かない人がいるのか聞いてみたところ、「足のサイズによってハイヒールを履ける履けないが決まっています。足のサイズが24cm以下の方のハイヒールはあまりオススメしません」とのこと。

同じヒールの高さでも、足のサイズが小さいと足の傾斜角度が急角度になります。それに伴い足首の角度も足のサイズに合っていない無理な角度になってしまい、捻挫をしやすくなってしまうんだとか。

「もし足の小さい方でどうしても8cm以上のハイヒールを履きたい場合は、靴の前底が厚いプラットフォームタイプを選んで、前底とかかとの差を縮めてください」(三浦さん)

前底に厚みのあるプラットフォームタイプのヒール靴の例
前底に厚みのあるプラットフォームタイプのヒール靴の例

足の小さい人には少し残念な事実…。ですがプラットフォームタイプはOKとのことなので、靴売り場をくまなくチェックしてみましょう。

では、次にヒールの高さに応じた正しいヒールの形状を伝授していただきます。

■ヒールの形で分かる、正しいヒールの選び方

履きたいヒールの高さによってヒールの形状が違ってくると三浦さんは言います。

「ひざ・脛の中心・くるぶしが一直線になったとき、その延長にヒールのかかとが地面に接地していると、足が痛くなりにくいんです。ヒールの高さによって足の重心が変わってくるので、ヒールの高さに応じて適したヒールの形状があるんですよ」(三浦さん)

ヒールを履いたら鏡で横からチェックしてみましょう
ヒールを履いたら鏡で横からチェックしてみましょう

そこで、ローヒール(0~6cm)、ハイヒール(7~10cm)のそれぞれで、正しいヒールの形状をお伺いしました。

ローヒール(0~6cm)の場合

インセットと呼ばれる、ヒールが少し内側に入っているヒールの形を選んでください」(三浦さん)

インセットヒールの靴の例
インセットヒールの靴の例

履いたときにくるぶしの真下にヒールのトップリフト(ヒールと地面が接触している箇所)がくればOK。歩くときに安定して歩けるんだそう。

・ハイヒール(7~10cm)の場合

セットバックと呼ばれる、かかとから垂直にまっすぐヒールがつけられているものを選んでください。また、ヒールの太さは太くなればなるほど体重を支えてくれます。ハイヒール初心者の方は太いヒールを選んだ方がいいですね」(三浦さん)

セットバックヒールの靴の例
セットバックヒールの靴の例

ヒールが高くなるほど、足の重心の位置が変わるため、こちらは脛の中心にヒール靴のかかとが来るようなものを選ぶと良いそう。

最後に、かかとからパカパカと靴が脱げてしまう人へ向けて、なぜ脱げてしまうのかもお伺いしました。

■かかとがパカパカする人はストラップで補助

通常、人間の足はかかとから足首にかけてくびれているのが一般的。かかとから足首にかけてのくびれに靴のかかとがキレイにはまって脱げにくくなるんだそう。しかし、

「かかとがパカパカ脱げてしまう人はかかとから足首にかけてくびれがないんです。私たちの間では絶壁と呼んでいます。そうすると、足のかかとにうまく靴のかかとが沿わずパカパカしてしまいます」(三浦さん)

そんな人はストラップ付きのパンプスで補助をしてあげることで、歩きやすくなるんだそう。

足首からかかとにかけてくびれていない人
足首からかかとにかけてくびれていない人
足首からかかとにかけてくびれがある人
足首からかかとにかけてくびれがある人

ストラップ付きヒールを買うときの参考にしてみてくださいね。

【まとめ】

ヒールパンプスを買うときは

・ローヒール(0~6cm)の場合はヒールの形が内側に入ったインセット

・ハイヒール(7~10cm)の場合はかかとからまっすぐのセットバック

と覚えておきましょう。

ヒールが高いから痛くなるのではなく、きちんと人間の重心の位置を把握してつくられているメーカーのヒールを選べば長時間履けるようになると三浦さんは言います。

「クリスチャン・ルブタン、ジミー チュウ、マノロ・ブラニクなど、有名な海外の靴ブランドはヒールの高さに対して正しいヒールが比較的ついています。ヒールの歴史が長いだけあり、デザイン性が強くてもきちんとした靴がつくられていると思います。一方、国内メーカーのヒールは、まだ靴の歴史が浅いこともありデザインが先行してしまっていて、ヒールの高さに対して正しいヒールがついていないことが多いです。正しい知識を持って選んでください」(三浦さん)

「ヒール=痛い」と思いがちですが、正しい選び方を知っていればもっとヒールを楽しめるはず。シューズ売り場で試着するときにぜひ試してみてくださいね。

三浦賢一さん
足と靴専門の理学療法士
(みうら けんいち)高校時代に足やひざの慢性的な障害に苦しみ、「足から全身の健康を見直す」ことを提唱するために医療の道へ。足の治療と靴の製作の馬喰快歩堂所長。足靴総合研究所所長。NPO法人オーソティックスソサエティー理事。一般社団法人日本ソーシャルウォーク協会理事。

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WRITING :
高橋優璃
EDIT :
高橋優海(東京通信社)