身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回は、モダニズムの時代からの名作を多く抱え、現代も国内外の新進気鋭のデザイナーと協働し新作を発表し続けるフィンランドのブランド、アルテック(Artek)から「95 テーブル」をご紹介します。

働き方が変わり家族が揃う機会が増えた今、家に求められる機能も多様化しています。アルヴァ・アアルトにより1933年にデザインされた半円形の「95 テーブル」は、変化する暮らしのニーズに合わせて、組み合わせたりバラバラにして他の部屋に持って行ったりできる自由さが魅力。

「小さなスペースにちょっとした作業場所をつくりたい」「軽くて自由に動かせるテーブルがほしい」といった方にもおすすめの、シンプルで汎用性の高いテーブルです。

暮らしに合わせて配置やサイズを気軽に変えられるデザイン

「95 テーブル」は、後述する“L-レッグ”を用いた軽さと高い汎用性、自然素材であるバーチ材の美しさを兼ね備えた半円形のテーブルです。すべてフィンランドの工場にて熟練した職人の手により作られているため高品質。シンプルなデザインは、国や文化や環境を選ばず世界中で愛されています。

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【ブランド】アルテック 【商品名】95 テーブル 【写真の仕様の価格】¥171,600 【サイズ】幅1200×奥行き600×高さ72 (mm) 【材質】バーチ材、成型合板 ブラックリノリウム仕上げ(天板)、クリアラッカー仕上げ(脚) ※要組立。料金追加で開梱設置も可能

直線部分を壁面や窓辺に向けて置けば小さなスペースを有効活用できますし、2つを向き合わせれば丸テーブルの形状に。さらに同シリーズの角テーブルと組み合わせれば、好みの大きさにアレンジすることも。

ダイニングテーブルとしてワークデスクとして子ども部屋のテーブルとして、暮らしの数だけ無限の使い方ができるのが最大の魅力。リノリウムやラミネートなどの丈夫で傷のつきにくい天板素材のバリエーションも豊富なので、図書館などの公共空間でも用いられています。

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2つ合わせると丸テーブルに。
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同シリーズのテーブルと合わせて。カラーが違ってもまとまります。

コンパクトなのにゆったり感じる秀逸なサイズ感

小さなスペースで設置できるのに、ゆったりと感じることができるのも「95 テーブル」の特徴です。その秘密は、脚の取り付け位置と、秀逸な寸法体系にあります。

「95 テーブル」の世界標準の高さは74cmなのですが、日本仕様は72cm。天井までの距離があることで、空間を広く見せる効果があります。また天板の下に余分な構造がなくフラットなため、低めの身長の方に適した座面高(38~43cm)にも高身長の方に適した座面高(43~46cm)にも合わせられます。

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お互いの肘が干渉することなく食事ができ、ワークデスクとしても優秀な形状。

二人が向かい合って食事をするときに必要な最小寸法は幅60cm奥行き80cmなのですが、半円の形でも、無理なく二人でゆったりと食事をとることができます。

ワークデスクとして使用するときも、幅広なスペースなのでノートPCの横に資料を広げられるスペースもあり使い勝手のよさは抜群! 壁面や窓辺に設置すれば、家族と一緒の空間にいても視線が合わないので集中力が削がれません。

アアルトデザインの象徴パーツ!機能的で美しい“L-レッグ”

“L-レッグ”とは、アルヴァ・アアルトが1930年代初めに開発し、当時特許を取得した曲げ木の技法です。無垢材の先端から曲げる部分まで切れ目を数ミリ間隔で入れ、その間に薄いベニヤ板を挟み接着した後、熱を加えながら曲げるという製法。シンプルな工程でありながら厚い無垢材を曲げることができ、頑丈で安定した仕上がりになります。

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アルヴァ・アアルトは“L-レッグ”のことを「建築における柱の妹分」と呼んでいたそう。

さまざまなサイズの“L-レッグ”をスタンダード部品としてシステム的に応用することで、「95 テーブル」のほか、「スツール 60」、「69 チェア」、「153 ベンチ」、そして「アアルト テーブル」まで、アルテックの製品コレクションの多種多様な製品が生み出されました。

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左/ “L-レッグ”が用いられた名作「スツール 60」のパーツ。右/「95 テーブル」は3本の“L-レッグ”を電気ドライバーで組み立てる必要があります。有料での組み立て・開梱設置が¥5,000以下で依頼可能で、また店舗ではドライバーの貸し出しも受け付けているとのこと。

フィンランドが生んだ20世紀を代表する世界的な建築家、アルヴァ・アアルト

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建築、家具、花瓶まで多くの作品を残したアアルト。

アルヴァ・アアルトはヘルシンキ工科大学卒業後、建築家、エリエル・サーリネンに従事。自然素材を近代建築に取り入れ、温もりのあるカーブを多く用いた作品で知られるモダニズム建築の巨匠です。

清々しく清潔感のあるデザインに温かみをプラスした住宅は観光名所にもなっています。世界各国のミュージアムにおいて永久貯蔵品と認定されている作品は多数。フィンランドの国民的英雄でもあります。


今回は、フィンランドブランドのアルテックより、アアルトが生み出したユニークな名品「95 テーブル」をご紹介しました。

家はもっと自由に、暮らしに合わせて変化させていい! そんな気持ちに寄り添う、軽やかで機能的な家具を自宅に取り入れてみてはいかがでしょうか?

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM