日本で長い年月をかけて愛され育まれてきた温泉文化。だからこそ、温泉旅館のなかには、歴史や伝統の重みを感じさせる名建築が少なくありません。本記事では、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんがセレクトした、国の文化財として認められている建築美に感動する湯宿4軒をご紹介します。

植竹 深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
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趣ある空間で非日常を味わう湯宿4選

■1:文豪に愛された老舗旅館「おちあいろう」|歴史的価値ある建物に本格サウナも完備!

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左から、「おちあいろう」の貸切露天風呂、茶室風サウナ、客室

伊豆の温泉旅館「おちあいろう」は、島崎藤村や川端康成など多くの文豪にも愛された歴史ある湯宿。木造建築の9割以上が国の登録有形文化財に登録されています。外観や入口だけでなく、館内には意匠を凝らした装飾や精密な細工など、随所に職人の卓越した技の数々が。2019年のリニューアルで水回りがモダンに一新され、快適なことも魅力のひとつです。3種類の温泉浴場に2種の本格的サウナと、温泉施設の楽しみ方も充実しています。

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■2:約200年前の古民家がモダンに生まれ変わった宿「ryugon」|民俗建築にスタイリッシュな要素が融合

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左から、「ryugon」の外観、露天風呂、バー

新潟県南魚沼市にある「ryugon」は約200年前の古民家をリノベーションした湯宿で、母屋は国の文化財として登録されています。リノベーションに際しては断熱性を上げるなどサステナブルな観点を取り込むとともに、ラウンジやバー、カフェなどモダンで快適な空間を新たに加え、まさしく歴史とスタイリッシュさが融合した旅館に。温泉は、かつて米蔵として使われていた建物をを移築した木造平屋土蔵造りで、風情たっぷりです。

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■3:昭和初期を代表する名建築家が生んだ傑作旅館「豊年虫」|本格的な数寄屋造りの一室で優雅な非日常ステイを叶える

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左上から反時計回りに、「豊年虫」の外観、露天風呂、客室、回廊

「豊年虫」は、開湯120年を超える長野県千曲市の戸倉上山田温泉のなかでも、最も長い歴史を誇る笹屋ホテルの別棟です。繊細で上品な建築は日本の近代建築を代表する鬼才・遠藤新によるもので、近代観光旅館建築のモデルになったといわれています。それぞれ意匠が異なる全8室の客室には源泉風呂が備えられているほか、本館にある2か所の大浴場も利用できるので、別棟と本館を行き来する湯巡りも堪能することができます。

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■4:国内最初の重要文化財に指定された名旅館「萬翠楼 福住」|歴史の重みと美しさ、極上の湯の貴重なハーモニー

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左/「萬翠楼 福住」の外観、右上/客室15号室の天井画、右下/大浴場

神奈川県・箱根湯本にある「萬翠楼 福住」は、木戸孝允、伊藤博文、松方正義など時の要人たちも逗留してきた屈指の名宿です。2002年に現役旅館として初めて国の重要文化財に指定されました。伝統的な数奇屋風の日本建築に西洋のエッセンスを融合した建物は、外観も館内も見どころ満載です。敷地内には自然湧出の豊富な自家源泉があり、“真綿にくるまれるよう”と評される肌ざわりふわふわのフレッシュな源泉かけ流しを堪能できます。

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以上、温泉ジャーナリスト・植竹さんに教えていただいた文化財の建築美に感動する湯宿4軒をご紹介しました。年月を積み重ねることでしか得られない趣は、遠方からでも足を運ぶ価値があります。各記事にそれぞれの宿の詳しい魅力や情報が満載ですので、次の旅先候補探しにお役立てください。

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

この記事の執筆者
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