〈識者インタビュー〉「ひとり」と向き合う女性たちの生き方研究
一個人としてどう生きるのか。そのことを考え抜いた女性はしなやかな強さ、そして優しさの両方をもち合わせているもの。「ひとり」の贅沢について、その真髄を知るふたりが、語り下ろします。
今回は、ファッションエディター・スタイリストの大草直子さんにお話しをうかがいました。
「家族と離れて“ひとり”暮らしをスタート。次のライフステージを見据えるために…」大草直子さん
夫、長女、長男、次女、そして私。個性溢れるメンバー5人での暮らしにピリオドを打ち、この秋から新たにひとり暮らしを始めました。きっかけは長女と長男の留学。長男に同行する形で、夫と次女も日本を離れました。ではなぜ、私は「ひとり」東京に残ったのか。さまざまな事情が絡み合っているとはいえ、その理由をひと言でいうならば、“焦燥感”でした。
子供たちはまぶしいほどの成長を遂げる一方、「では、私は?」。そう問いかけたとき「このままでは枯渇する。さらなるインプットがないと私のキャリアは終わる」。そう思ったのです。私の使命は「伝えること」。ファッションプロとして、情感に訴えかけ、心情を掬すくい取ることはできても、そこにエビデンスが足りない…。そう感じ始めていました。もっと人と会い、学びを深めなければと考えるようになったのです。
そうしてひとり暮らしになった今、取材したかった人々に会いに行くことを始めています。新人編集者時代に戻ったようで、ちょっとドキドキ。でもあの頃と違うのは、伝えるスキルとノウハウ、そして自分のメディアをもっていること。“目からウロコ”の貴重な話をどう伝えていくのか。誰にも替えのきかない、唯一無二の仕事にするべく、心からワクワクしているところです。
家庭をもったことで諦めたこともあったし、正直にいえば、母親業に向いてないと荒れたことだってありました。それでも今、寂しさがワーッと押し寄せる時間があることも否定はしません。でもすべては、自分の意志で選んだこと。今は「ひとり」の贅沢を味わう蜜のような時間なのです。
ひとりでいると、子供の頃の「静かな私」が顔を出します。インドア派でひとりが好きで…。そこにひたるのは、まるで繭の中に閉じこもるような、そんな悦楽。オフィシャルでもなく、プライベートでもない、ただのピュアな私。年齢を重ねればこそ、その3つ目の私に光を当てることが大切ではないでしょうか。それこそが「ひとり」の贅沢。そんなふうに感じる今日この頃です。
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- EDIT :
- 兼信実加子、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 本庄真穂