『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。今回は着物をこよなく愛する犬走さんが、現在もっとも気に入っている帯を使って「帯を着回す」3つのコーディネートを展開! 帯揚げや帯締めといった小物の合わせ方とともに、「着慣れた」感の漂う小粋な着こなしのコツを直伝していただきます。
着物って楽しい! そう思わせてくれる最愛の「小倉縞帯」
和装では着物と同格とされ、和服を着る上では絶対に欠かすことができないのが帯。実用性と装飾性を兼ね備え、和の装いでは着物とともにW主演を務めるとても重要なアイテムです。和装の上級者である犬走さんも、もちろん大の帯好き! 数ある帯コレクションのなかでも、現在特に気に入っているというのがこの小倉縞帯。もともと帯は「シンプルなものが好き」という犬走さんですが、これも潔いデザインにひと目惚れして購入したそう。
「350年以上続いたという小倉織ですが、昭和初期に途絶えてしまいました。しかし染色家の築城則子さんが1984年に復元し、この素晴らしい伝統工芸を蘇らせたそう。この帯は私の手持ちのいろいろな着物に合うなと思って、思い切って購入。小倉織なら、もしかしたらもっとわかりやすいストライプを選ぶべきかもしれませんが、この繊細なニュアンスと潔さに惹かれて迷わず決めました」(犬走さん)
犬走さんの心をわしづかみにしたこの小倉縞帯。おしゃれのプロはどのようなコーディネートで着こなしているのでしょうか!?
■1:紫根染の小紋と合わせて、いなせなおしゃれ着に
ムラサキの根で染める紫根染は、藍染、紅花染と並ぶ日本三大草木染めのひとつ。かなり以前に購入したというこの小紋は、普段のおしゃれ着として活躍している1枚だそう。
「帯は和装の真ん中にくるものなので、コーディネートの要。私の予想どおり、この小倉縞帯は紫根染の小紋ともすごく合いました。帯締めを着物のなかの色から拾うのは和装の王道テクニックですが、私も好きです。この淡い色味の小倉縞帯にポン! と効かせて、全体の印象を引き締めます」(犬走さん)
■2:華やかでリッチな訪問着に合わせて、パーティへ
着物と同様に「格」が存在する帯。伝統的な和装の着こなしにはルールがあります。しかし「ルールは尊重しながらも、もっと自由に着物コーディネートを楽しんでいいのでは?」というのが犬走さんの持論です。
「この小倉縞帯は木綿布なので、本来は訪問着には合わせないというのが和装のルール。しきたりや伝統は大切なものですが、着物の着こなしは現代的にアップデートしたいと私は思っていて。例えばこの小倉縞帯のように紛うことなく上質なものなら、そして全体の雰囲気やトーンさえマッチすれば、臆することなく訪問着にも合わせます」(犬走さん)
■3:反対色の小紋と合わせて、とびきりモダンに!
犬走さんいわく、「まるで小紋のパターンの見本帳のような着物」という1枚は、まさに着物上級者ならではのセレクト! 数々のパターンがモダンに組み合わされたモノトーンの小紋に合わせることで、この小倉縞帯のシャープな表情がいっそう際立ちます。
「30代の頃に初めて自分で買った着物も大島紬で、とてもダークな色合いでした。私は基本的に、こういう感じの渋めなものが好きなのかもしれません。でも、30代、40代なら“渋さ”をそのまま“粋”に昇華できるけれど、年齢を重ねていくと、老けて地味な印象になってしまう可能性も。そういった意味でも、帯と帯周りの小物のセレクト&コーディネートが重要になってきます。
前述したように、たくさんのルールがある和装の世界ですが、“攻”と“守”のバランスを上手に取って。時には失敗してもいいと思うし、トライ&エラーを繰り返しながら自分らしい着物ライフを楽しんで、後世にこの素晴らしい文化を引き継いでいけたらいいですよね」(犬走さん)
今回は、人気スタイリストの犬走さんのモダンな和装スタイリングの極意をお届けしました。大人の女性の着物道、その羅針盤にしてみてはいかがでしょうか?
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- PHOTO :
- 黒石 あみ(小学館)
- WRITING :
- 岡村佳代
- EDIT :
- 谷 花生