日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。

今回ご紹介いただくのは、「畑萬陶苑」の伊万里鍋島焼タンブラーです。「畑萬陶苑」は、昭和元年に創設し、将軍家への献上品として作られた伊万里鍋島焼の伝統や技術を今の時代に継承する窯元。歴史と文化を重んじつつ、現代のライフスタイルに寄り添う商品を生み出すため、新しい技術や表現を取り入れる事にも果敢に挑戦しています。

今回ご紹介するタンブラーは、伊万里鍋島焼ならではの品格と、伝統に縛られない新しい価値観が融合した逸品で、河井さんは展示会で一目見た瞬間、心をわしづかみにされたのだそう。その開発秘話やタンブラーとしての魅力について、河井さんに詳しく教えていただきました。

河井真奈さん
スタイリスト
(かわい まな)女性誌、CM、ドラマのスタイリング、トークショー、商品開発アドバイザーなど幅広く活躍。2016年、ギフトに特化したWEBサイト「futo」をローンチし、2019年6月に南青山にショップをオープン。2023年5月代官山に移転。著書に『絶対 美人アイテム100』(文藝春秋)、『服を整理すれば、部屋の8割は片付く』(立東舎)。https://futo.jp/

伝統に立脚しつつ既成概念にとらわれないタンブラーに一目惚れ

伊万里鍋島焼の伝統技術の担い手でありながら新しい表現も目指し続ける畑萬陶苑。
伊万里鍋島焼の伝統技術の担い手でありながら新しい表現も目指し続ける畑萬陶苑。

「伊万里焼の特徴といえば、白磁に艶やかな絵付け。まるでアート作品のような繊細な美しさは、眺めているだけで幸せな気分にさせられます。ただ、お店で見かけて素敵だなと思う器があっても、自宅のテーブルウェアとして使いこなせるかというとちょっと自信がなく、長年憧れつつもなかなか手の届きにくい存在だったのも事実です。

そんな伊万里焼のイメージをいい意味で覆したのが、畑萬陶苑のタンブラー。伊万里焼なのに無地でマットな見た目が新鮮で、そのモダンでスタイリッシュな佇まいに一目惚れしてしまいました。これなら普段の食卓からちょっとしたお祝いの席まで、どんなシーンでも浮くことなく、さりげなく上質な雰囲気を演出できるんじゃないかと」(河井さん)

どんな食卓にもなじむ伊万里鍋島焼タンブラー。
どんな食卓にもなじむ伊万里鍋島焼タンブラー。

「持ちやすさ、飲みやすさをとことん追求したというそのタンブラーは、デザイン性だけでなく、実用面においても、『まさしくこんなタンブラーを探していた!』と感服するすぐれもの。冷たい飲み物の清涼感を引き立ててくれるうえ、ガラスのタンブラーと違って土の気孔によって空気が溶け込むためか、まろやかな味わいになるような気がします。また、ビール好きな人からは、『泡がシュワシュワにきめ細かくなって、もうこのタンブラーじゃなきゃ飲めない』という感想も」(河井さん)

モコモコの美しい泡に感動!
モコモコの美しい泡に感動!

「もちろん、ハイボールやモヒートといったビール以外のアルコールドリンク、あるいはアイスコーヒーなどのソフトドリンクにもおすすめで、オールマイティに活躍してくれるタンブラーは、夏のギフトにぴったりではないでしょうか」(河井さん)

見た目にも涼やか。

開発に2年!伊万里焼鍋島タンブラーの魅力とこだわりポイントは?

伊万里鍋島焼タンブラーの開発の中心となったのは、「畑萬陶苑」5代目の畑石修嗣さん。大学では彫刻を専攻していたというバッググラウンドの持ち主で、原料となる素材そのものの魅力を探求するなど、独特の感性や柔軟な発想力が、伊万里鍋島焼の新たな価値を創造しています。

本当に納得のいくタンブラーが完成するまでに要した期間は約2年。その間、修嗣さんは職人たちと議論に議論を重ねたのだそう。そこにはどのような創意工夫が込められているのでしょうか。

■1:飲み心地を追求して極限まで薄さに挑戦

究極の薄造りだから飲み物がよりひんやり…。
究極の薄造りだから飲み物がよりひんやり…。

「このタンブラーで特筆すべき点は、まずは薄さ。焼き物は薄く作ろうとするほどシワができたり、割れやすくなったりなどの弊害がありますが、このタンブラーでは耐久性を維持しつつ、職人さんたちが“ここれ以上は無理!”という極限まで薄くすることに成功。光が透けるほどの薄造りで、冷たい飲み物がより冷たく感じられ、心地よく飲めます」(河井さん)

■2:液体が流れやすく見た目も美しい飲み口

見た目と味の良さを両立する飲み口。
見た目と味のよさを両立する飲み口。

「ゴールドの塗りを施した飲み口は、少し外側に沿ったデザイン。見た目の華やかさもさることながら、口当たりや飲んだときのキレのよさを十二分に考慮されています。実は、この部分をきれいに仕上げるためにも一工夫が。生地があまりに薄いため、起こして(飲み口を上にして)焼くと、窯内で飲み口が楕円に変形してしまうおそれがあるので、それを防ぐために飲み口を下にして、山型の台を取り付けた状態で焼成を行っているそうです」(河井さん)

■3:綿密な計算でビール1本分のジャストサイズを実現

飲み口を下にして焼成する。素焼きだけの状態(左)と釉薬をかけて焼成した状態(右)では大きさが異なる点にも注目。
飲み口を下にして焼成。素焼きだけの状態(左)と釉薬をかけて焼成した状態(右)では大きさが異なる点にも注目です。

「大きさにもちょっとしたこだわりが。容量は350mlで、缶ビール1本分のジャストサイズです。陶磁器の場合、ちょうどよい大きさにするのも工場での大量生産と違って簡単ではありません。というのも、焼成のプロセスで器が収縮してしまうので、それも計算する必要があるからです。しかも、このタンブラーの場合、まず950度で素焼きして、その後、釉薬をかけて1300度で焼成と2段階のプロセスがあるため、各段階の収縮率を綿密に計算したうえで製造されています」(河井さん)

黒・白・緑…三者三様の魅力があるカラーバリエーション

伊万里鍋島焼タンブラー 各¥3,850【カラー:黒/梨地緑/梨地白、サイズ:直径77×高さ142mm、容量:350ml、重量:約140g】
伊万里鍋島焼タンブラー 各¥3,850【カラー:黒/梨地緑/梨地白、サイズ:直径77×高さ142mm、容量:350ml、重量:約140g】

河井さんが運営するギフトショップ『futo』では、畑萬陶苑のタンブラーを黒、白、緑の3色から選べます。

「黒はツルリとした質感なのに対し、白と緑は鉄粉を釉薬に混ぜ込んでいるため、果物の梨のようなザラザラした質感の“梨地”が持ち味。さらに梨地は黒の点々の出方が異なるので、それもまた手仕事ならではの個性を物語る魅力のひとつとなっています。

ショップでの一番人気は飲み物の色が映える白ですが、重厚感のある黒、食卓になじみつつ目新しさもある緑もそれぞれ素敵です。スリムなフォルムは男女問わず使いやすく、結婚祝いやご両親の記念日など色違いで贈り物にするのもおすすめです」(河井さん)


今回は、「畑萬陶苑」の伊万里鍋島焼タンブラーをご紹介しました。すっきりとシンプルな見た目ながら、さまざまな伝統技術や職人のチャレンジ精神が注ぎ込まれた器は、大切な人へのギフトに最適です。「冷たい飲み物をよりおいしくお楽しみください」といった思いを込めて、夏の贈り物の選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

※掲載商品の価格はすべて税込みで、記事公開時のものです。

問い合わせ先

Gift Concierge futo

TEL:03-3462-2036

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生