温泉は、慌ただしい日常でたまった疲れやストレスを解放するのに最適。清々しい空気のなかで、木々の緑を眺めたり川のせせらぎに耳を傾けたりしながらゆったりと温泉で羽を伸ばせば、五感から自然の恵みを享受し、心ゆくまでリフレッシュできることでしょう。

そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、緑や水音に癒される温泉宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、山梨県・早川町にある「西山温泉 慶雲館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

世界最古の温泉宿で極上の湯巡り気分を満喫!

山梨県・南アルプスの麓にある「西山温泉 慶雲館」。宿名にあるとおり開湯は慶雲2年(西暦705年)に遡り、1300年以上の歴史を誇る慶雲館は、世界で最古の宿としてギネスブックに認定されています。

世界最古の宿としての風格を漂わせる「西山温泉 慶雲館」。
世界最古の宿としての風格を漂わせる「西山温泉 慶雲館」。

歴史の長さだけでなく、毎分約2000リットルという日本随一の湯量もこちらの宿の特色。貸切風呂もあわせて全部で6つの温泉はもちろんのこと、客室のお風呂、シャワーや洗面の蛇口に至るまで、給湯には全て加水加温のない源泉が使われているというのですから驚きです。そんな温泉好きには垂涎の的ともいえる慶雲館の魅力について、植竹さんに教えていただきました。

目の前に山が迫る「野天風呂 望渓の湯」。
目の前に山が迫る「野天風呂 望渓の湯」。

「露天風呂は、4階と1階に2か所。まず、4階の『野天風呂 望渓の湯』は、ゆったり6人は浸かれそうなサイズの浴槽で、材質は香りも肌触りもよい高野槙(こうやまき)。プライバシーに配慮して周囲にちゃんと目隠しは施されていますが、建物の最上階ということもあって開放感たっぷり。雄大な山々に囲まれての湯浴みは下界のストレスを一掃してくれます。また、4階には露天風呂以外に内湯の展望風呂が2種類あり、大きな窓越しに広がる眺望が抜群です」(植竹さん)

展望風呂「桧香の湯」。
展望風呂「桧香の湯」。
展望風呂「石風の湯」。
展望風呂「石風の湯」。

「1階の露天風呂『渓流野天風呂 白鳳の湯』は、上質な白鳳石(はくほうせき)を使用した浴槽で、4階の『望渓の湯』よりもさらに広々。眼下に早川渓谷を望み、せせらぎも感じられる環境で、自然からのエネルギーを十二分にチャージできます。さらに、1階には予約制の貸切風呂も2つあり、誰にも邪魔されずにじっくり湯と向き合うことができました」(植竹さん)

1階「渓流野天風呂 白鳳の湯」。
1階「渓流野天風呂 白鳳の湯」。
貸切野天風呂は「川音」「瀬音」の2か所ある。
貸切野天風呂は「川音」「瀬音」の2か所ある。

「ちなみに、慶雲館はもともと所有していた自家源泉に加え、平成17年(2005年)に新たに自噴泉を掘り当てたという経緯があり、4階と1階では泉質が全くの別物。4階は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉。硫酸塩泉で肌がしっとり、塩化物泉で全身のポカポカが持続するのが実感できました。源泉の湯温が50度とやや高めなのですが、湯口に近いほど熱く、離れるほどぬるくなるので、広々とした浴槽の中で、自分がちょうど心地よいと感じられるスポットを探ってみてはいかがでしょうか。

他方、1階はアルカリ性単純温泉。基準にわずかに満たないため分類上は単純温泉ですが、こちらも豊富な成分がミックスされており、泉質の特性として乳化作用で美肌にぐっと近づける効果が期待できます」(植竹さん)

湯上り処でも緑に癒される。
湯上り処でも緑に癒される。

「館内に複数の湯処があり、浴槽の造りなどで雰囲気の違いを演出する湯宿は少なくないですが、慶雲館のように泉質自体の違いもはっきりと感じられるのは希少価値があるといえます。ロケーションは山間で秘湯感が漂いますが、建物自体はラグジュアリー感があり快適そのものですし、大人の女性が自然情緒のなかで湯巡り気分をたっぷり満喫し、心身を浄化できること請け合いです」(植竹さん)

客室「北岳」の露天風呂。
客室「北岳」の露天風呂。
客室「北岳」からの眺め。
客室「北岳」からの眺め。

山の幸を豪華に…料理人が精魂込めた深山会席も格別!

山深いロケーションにある慶雲館では“深山会席”と銘打った創作和食料理を提供。あえて海のものを使わず山河の味覚を凝縮させた食膳は、練り物からマヨネーズに至るまで徹底的に手作りにこだわり、料理によって8種類の塩を使い分けるなど、料理人の精魂が込められています。

甲州牛の溶岩焼き。
甲州牛の溶岩焼き。
希少価値ある和牛タンのしゃぶしゃぶ。
希少価値ある和牛タンのしゃぶしゃぶ。

「A5ランク甲州牛を焼くプレートは、富士山の2合目でとれた溶岩で作られたものだそう。食材だけでなく調理道具にもご当地感があるのは気分が上がりますし、とろけるようなブランド牛がいっそうジューシーに焼き上がったように感じられます。

また、しのぎで出てきたどんぐり麺も印象に残る味わいです。どんぐり麺とは、その名のとおり蕎麦粉のかわりにどんぐりの粉を使ったというご当地麺で、独特の食感とコシがあり、さっぱりとおいしくいただきました」(植竹さん)

岩魚の骨酒。
岩魚の骨酒。
湯馬刺し。
湯葉刺し。

「一晩明けて、朝食は小鉢の種類が多く、薬膳も取り入れたヘルシーなもの。なかでも格別だったのは手作りの豆乳豆腐で、口当たりのなめらかさなどが、普段の食卓のものとは一味も二味も違うように感じられました」(植竹さん)


以上、「西山温泉 慶雲館」をご紹介しました。南アルプスの雄大な自然の中に佇む世界最古の宿で、源泉かけ流しの湯に癒されたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生