2023年10月に開業して話題となった、新たな東京のランドマーク「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」。その最上階にある、新しい東京を象徴する情報発信拠点「TOKYO NUDE」内に、11月にオープンしたレストランが「apothéose(アポテオーズ)」です。
フランスの「ERH(エール)」で2019年から5年連続でミシュランの1つ星を獲得し続けてきた北村啓太シェフが率いるフレンチガストロノミー。
店名は、フランス語で「最高の賞賛」、バレエ用語で「フィナーレ」を意味する言葉。頂点を目指すべく名付けられた「アポテオーズ」は、15年ぶりに凱旋帰国した北村シェフにとっても新たな挑戦となるレストランです。
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー最上階に誕生したフレンチガストロノミー「アポテオーズ」
食と人々の関わりが身近で、力強い食材が手に入るフランスで長年経験を積んできた北村シェフが、料理において大切にしているのは、実際に五感で素材の魅力を感じることだそう。
日本に帰国してからは、日本各地を巡り、生産者の方々の声に耳を傾け、魅力的で高品質な食材を選び抜いてきたといいます。よい食材との出会いこそ何よりも大きな創作の原動力だという北村シェフが、自分の足で探したその土地土地の新鮮な食材を使って、季節感あふれる発想力豊かな料理を作り上げます。
生産者の方々が作り出した最高の食材を、そのときにしかできない表現で料理するため、コースは毎日のように微調整され、ときには一新されるのだとか。同じメニューでも、来るたびに新たな驚きがありそうです。
また、五感で味わう空間作りも大切にしている北村シェフは、器選びや空間デザインにもこだわっています。
器には北村シェフの故郷である滋賀県の信楽焼や、佐賀県の有田焼、伊万里焼など、日本が誇る職人の手仕事による器の数々が料理に合わせてセレクトされ、おいしさを引き立てます。
デンマーク・コペンハーゲンのデザイナーユニット「スペース・コペンハーゲン」が手掛けた内装は、木の温かみが感じられるナチュラルでモダンなデザイン。
「料理だけでなく、音楽や香りも含めて一つのレストラン体験として、お客様の記憶に残るようなものであってほしい」と話す北村シェフ。レストランのコンセプトからカウンセリングを重ねて誕生した「アロナチュラ」による香り、北村シェフが食材選びの旅で出合った88個の音の素材を「SOUND CoUTURE」がデザインした心地よいサウンドなど、訪れた瞬間から五感すべてで楽しめるようなレストランになっています。
ディナーコース「Menu Apogée」より5品を実食レポート
■1・2:驚きと楽しさあふれるアミューズ「カリフラワー」「玉ねぎ」
今回、12品からなるディナーコース「Menu Apogée」より、5品を試食させていただきました。
まず登場したのはアミューズの「カリフラワー」と「玉ねぎ」。
「アミューズはコースの始まりなので、期待感を高める一番重要な料理。だから、驚きがある方がお客さまがワクワクできるかなと思い、この形での提供になりました」と北村シェフ。
シェフがイメージを伝え、職人集団「secca」が形にした、本物の流木を使った器で登場したアミューズ。木からきのこやお花がはえてきたようなビジュアルが印象的な2品は、運ばれてきた瞬間のサプライズ的な楽しさがあります。
きのこのような器にのっているのが、玉ねぎをメインにしたパイ。パイ生地の上には、キャラメリゼした玉ねぎと、ゆっくりと火入れをして食感を少し残した玉ねぎのコンフィ、そしてマッシュルームを。その上には北海道タカラ牧場のタカラというハードチーズが削られています。
お花のような器にのっているのが、カリフラワーのタルト。カリフラワーのクリームを下にしき、スライスしたカリフラワーと、落花生に軽く火を通してカレーのようなオリエンタルなスパイスとディルで香り付けをしたものをのせています。
ペアリングとして「WAWEL」というシャンパーニュと共にいただきました。赤ワインを作る際のぶどうを70%ほど使用しているというシャンパーニュは厚みがあり力強い味わい。パイやタルトのサクサクした食感や香ばしい香りと相性のよいお酒でした。
■3:季節野菜を存分に楽しめる「野菜」
生産者の方が届けてくれる野菜を使って、野菜ごとに異なる個性を活かして作るサラダ。
北海道の「佐々木ファーム」「シゼントトモニイキルコト ソガイ農園」の根菜類を中心に15種類もの野菜を、セロリのような香りのするハーブ「当帰」を練り込んだバターでエチュベに。その上に広島「高掛農園」のマイクロリーフハーブサラダをのせています。
さまざまな食感の新鮮な野菜が楽しめる一品は、シェフが生産者の方々と対話して自らの足で集めたこだわりの素材の素晴らしさをダイレクトに感じられます。
山梨のワイナリー「98wines」による甲州100%の優しい味わいの白ワインをあわせていただきました。
■4:天城軍鶏のラビオリにブランド米のブイヨンをかけた「米」
静岡県の天城軍鶏のもも肉を使ったラビオリ。ラビオリの赤みはビーツを練り込んだことによるものだそう。ラビオリの下に注がれた緑色の液体は、北海道の「北の華」という香りが華やかなニラのオイル。
もち米のようなモチモチの食感が特長のブランド米「いのちのいち米」に鶏肉のブイヨンを混ぜて丁寧に濾したものを仕上げにかけて完成です。ラビオリの上には、オータムポエムという野菜をあしらっています。
野菜のシャキシャキ感とラビオリのモチモチ感の対比が楽しい一品。優しい甘さのある軍鶏とブイヨンが身体にしみわたるようでした。
ペアリングには、日本酒「山形政宗」を、甘みや旨みを感じられる常温の状態でいただきました。どちらもお米を使ったお料理とお酒で、合わないわけがありません。
■5:締めのデザート「出来たてアイス」
デザートはピンクぺッパーのアイスクリーム。ミルク感たっぷりのアイスクリームの中にピンクペッパーの豊かな香りをつけて、りんごの皮をジャム状にしたものをトッピングしています。
粒状のピンクペッパーとサクサク食感のドライりんごのスライスが食感、味わいのアクセントに。ミルキーなのにピリッとしまる、締めにふさわしいデザートでした。
今までの常識を見直し、新たな価値観を提供するレストランに
常識を打ち破る、新しいレストランの価値観を発信したいという北村シェフ。
「一番は、心地いい空間を作りたいということが前提にあります。料理に関しても、味がおいしいことはもちろんなのですが、“口の中がいかに心地よくいられるか”というところを考えてメニューを作ります。温度感、食感、舌触り……そこが心地よくないと本当においしいものにはならないと思っていて。
そして、心地よさを突き詰めると、今の一般的なコースの流れは果たして正しいのか。例えばメインのお肉料理は大体最後に提供されますが、本当にそれが心地いいのかというと……お腹いっぱいのときに出てきて、惰性で食べていないだろうか、味わいきれていないんじゃないだろうか。だったらコースの真ん中くらいでお肉を出して、そのあとにさっぱりいただける野菜を出して、最後はブイヨンでほっこりと締める、というのもいいんじゃないか。そう思ったんですよね。
今まで当たり前にやっていたことに疑問を持って、それを新しい価値として提案していく。“こうしないといけない”というような感覚は捨てようと思っています」
五感で楽しむ、記憶に残るレストラン体験を約束するフレンチガストロノミー「アポテオーズ」。創造的かつ自然本来の味を引き出した料理の数々を、ぜひ堪能してみては。
問い合わせ先
- apothéose
- 営業時間/17:30~23:00(19:30L.O.)
- 定休日/日・月曜日
- 料金/ディナー コース「Menu Apogée」¥25,000、アルコールペアリング ¥15,000(共に税込み、サービス料別)
- TEL:03‐6811‐2573
- 住所/東京都港区虎ノ門2‐6‐2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー49F(TOKYO NUDE内)
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 小林麻美