雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、一時預かり専用託児所「美辺」代表取締役社長の美辺香澄さんをご紹介。

美辺香澄さん
「美辺」代表取締役社長
大学在学中に公認会計士試験に合格し、卒業後は監査法人に入所。主に製造事業会社に対する法定会計監査業務に携わる。結婚を機に退職。’16年に一時預かり専用託児所を開園。現在託児所1園、保育園2園を運営。3児の母。

「子をもつ会計士」だからこその発想で保育業界をサステイナブルに

美辺さんが名古屋市で運営している一時預かり専用託児所は「はないと」という。自身が出産後、仕事に復帰した際に苦労した経験から「〜は、無いと」を叶えるべく、事業を立ち上げた。

「例えば給食。監査法人にいた私は、出産後も会計士として子供を預けながら仕事をしていたのですが、長男にアレルギーの疑いがあった際、託児所から『食事の提供はできないので持参して』と言われてしまって。だから『はないと』ではアレルギーの子も離乳食の子も給食対応。素材にこだわった手づくりで、田舎のおばあちゃんがつくってくれるような愛情いっぱいのごはんを提供しています」

スーツを着てパソコンを持ち、電車で移動していた経験から、おむつや着替えなどを持参する必要のない「てぶらほいく」も実現させた。おもしろいのは、美辺さんの発想が母親目線だけでなく、会計士目線からも生まれていること。

「そもそもは、私が預けていた託児所のオーナーから『利益が出なくて自分は無給だ』と聞いて、自主的に事業計画書をつくったのが始まりだったんです。保育士さんがサービス残業も多いうえに給料も上がらないなんて話を聞くと、それはダメでしょう、と。子育て中の人が働きやすい託児所でないと、結局は子供たちにしわ寄せがいくから。そういう意味では、保育士さんのキャリアプランやライフプランについても、採用時にしっかり話し合っています」

利用者や現場の声を反映しながら、月極保育園も開園。さらには多胎児を同時に預かる「ふたごほいく」、産前産後限定で利用できる「うえの子ほいく」も好評だ。

「誰も無理をしない。それがすごく大事なことだと思っています」

【SDGsの現場から】

●「もちつもたれつ」の精神で風通しのよい職場に

サステナブル_1
「ライフステージのどこにいても夢を諦めないで」と、状況に応じて臨機応変に勤務調整。

●離乳食の進み具合やアレルギーにも対応した給食

サステナブル_2
給食は和食中心。栄養価の高い旬の食材や、日本ならではの献立を積極的に取り入れる。

※一時預かり保育とは…時間単位、1日単位で子供を預けられる一時保育は、認可保育園などに空きがあれば対応する場合が多く、専門の施設はまだまだ少ない。

関連記事

PHOTO :
松井なおみ
WRITING :
剣持亜弥
EDIT :
喜多容子(Precious)
取材 :
河野好美