【ART】日本初出品を多数! 貴重な作品と丁寧な解説で「キュビスムってそういうことか」と納得!

雑誌『Precious』1月号の連載「感性の扉を開く!Precious Choice ~Art~」では、東京都台東区の上野公園内にある「国立西洋美術館」で2024年1月28日(日)まで開催中の『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 — 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』をご紹介。人物や静物、風景が、分解され、平面化された「キュビスム」作品。ピカソとブラックというふたりの天才が20世紀初頭のパリで生み出した世界を変えた芸術表現を、じっくりたっぷり楽しみましょう!

美術ジャーナリストの藤原えりみさんに、見どころについてナビゲートいただきました。

藤原えりみさん
美術ジャーナリスト 
女子美術大学、國學院大学非常勤講師。雑誌などでの執筆のほか、展覧会図録制作にも携わる。現在「アプリ版ぴあ」で水先案内人を務める。著書に『西洋絵画のひみつ』(朝日出版社)ほかがある。

【今月のオススメ】ロベール・ドローネー《パリ市》

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1910-1912年 Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle (Achat de l’ État, 1936. Attribution, 1937)  (C)Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP

ピカソとブラックに影響を受けた「キュビスト」たちは、大規模な展覧会で作品を発表し、「サロン・キュビスト」と呼ばれた。その代表的作品が、1912年に出品されたドローネー《パリ市》。三美神とエッフェル塔、ルソー作品からの引用など時空を超えた多様な要素が組み合わされている。幅4mにも及ぶパリ・ポンピドゥーセンターを象徴する大作のひとつ。今回が初来日。


20世紀初頭にパブロ・ピカソとジュルジュ・ブラックによって生み出された芸術表現「キュビスム」。その後の抽象芸術やシュルレアリスムへといたる、近代美術がスピードアップする起点になった重要な動向ですが、正直、「なんだか難しそう…」と感じている人が多いと思います。題名に「ギター奏者」「果物皿とトランプ」とあっても、「どこに人が?」「どこにお皿が?」と思うような、不思議な作品ばかり。いっそのこと現代美術でよくあるように「無題」としてくれていたら、わからなくてもあきらめがついたのに、と(笑)。でも、この展覧会を見れば、「ああ、そういうこと!」と得心できるはずです。

源泉は、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、さらにアフリカの彫刻をはじめとする非西洋地域の造形にありました。それらが連動して、ピカソとブラックは、対象をさまざまな角度から見たパーツに分解して組み立てる、つまり単純な具象ではないけれど抽象でもない、新しい造形を生み出したのです。「キュビスム」という名称は、そのパーツが「キューブ(立体)」と評されたことに由来するんですね。

今回の展覧会がすごいのは、そうしたキュビスム誕生の背景から、その後、第一次世界大戦後の美術界にキュビスムがどう影響を与えたかというところまで、貴重な作品と丁寧な解説でしっかりと教えてくれているところです。50点以上が日本初出品とあって、初めて観る作品もたくさんありました。充実の全14章、気がつけば2時間が経過していました…(笑)。皆様も腰を据えて楽しんでください。(談)


【Information】『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 — 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』

パリのポンピドゥーセンターからキュビスムの重要作品が多数来日。主要な作家約40人による絵画や彫刻を中心とした約140点を通してキュビスムの全貌を明らかにする、見逃し厳禁の大型展覧会。’24年3月20日〜7月7日京都市京セラ美術館へ巡回予定。

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EDIT :
剣持亜弥、喜多容子(Precious)
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