雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、キュレーター リ・イエモンさんをご紹介します。

リ・イエモンさん
キュレーター
雲南省出身。重慶市の大学を卒業後、アメリカの美術系大学に留学。MoMAのワークショップに参加し、裏方の仕事に興味をもつ。ロンドンのサザビーズ美術カレッジでアートビジネスを学び、帰国後、キュレーターに。

サステイナブルをテーマに人の心を動かすキュレーションを

中国最大のファッションイベント「上海ファッションウィーク」で、ある大手老舗紳士服ブランドのショーが注目を集めた。旅客機内の廃ファブリックを90%使用したり、環境への負荷が少ないヘンプ(麻の一種)を活用したりといったサステイナブルを意識した服と、生成AIを組み合わせたチャレンジングな展示だ。その空間をつくり上げたのが、キュレーターとして活躍するリさんである。

「ここ数年、中国政府は環境保護関連の法案・政策を次々と施行。大手企業ほど、エコに関心をもたずにはいられない状況になっています。私はキュレーターですが、最近では展示だけでなく、ESGデジタルプラットフォーム(※)や、カーボンニュートラルのためのメタバースを使ったシステムを構築するお手伝いもしています」

転機となったのは’19年に手掛けた北京と上海でのアート展。国内にあった大量の廃品を使い、約30か国のアーティストが作品を制作する展示は、『可持続=サステイナブル』という言葉自体ほとんど認知されていなかった当時の中国で大きな話題を呼んだ。以後、リさんのもとへは、さまざまなブランドからサステイナブルをテーマにした企画のオファーが続いている。「重要なのは『廃材を使う』というテーマ以前に、作品そのものにエネルギーがあるかどうか」として、国際的に活躍する一流アーティストとの協働で、中国のアート界に新しい風を起こしていく。

「展示を見たことで、ふだんからSDGsを意識するようになったという方もいます。アートの力で人の動きを変えられるということがすごいし、そこからその人の新しい人生が始まるかもしれないと想像すると、すごく楽しい」

【SDGsの現場から】

●見応えあり!廃材アートの概念を覆す展示

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キュレーションでは、作品としての見応えと、人の心を動かすエネルギーがあることを重視。

●世界30か国からアーティストが集結したアート展

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’19年に手掛けたアート展では、リさんの企画に30か国からアーティストが集まった。

※ESGデジタルプラットフォームとは…企業におけるESG(環境、社会、企業統治)の取り組みを支援するための基盤となるシステム。多くの企業が積極的に取り入れている。

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PHOTO :
阿部ちづる
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子(Precious)
取材 :
萩原晶子