雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、「ファブラボ鎌倉」代表理事 渡辺ゆうかさんをご紹介します。
築100年を超える蔵で「ものづくり」。あらゆる人が集まる不思議なラボ
平日の午後。学校帰りの小学生が、大きな蔵に吸い込まれていく。そこにはパソコン、レーザーカッター、3Dプリンタなどさまざまな工作機材が用意されていて、子供たちは目を輝かせてものづくりに没頭する。その様子を見守っているのは、長年メーカーで技術職を務めた山本さん(上写真内左)だ。
ここは、100か国以上に存在する「ファブラボ」(※)のひとつ。ファブラボとは「デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた、実験的な市民工房のネットワーク」で、「ファブラボ鎌倉」は’11年、渡辺さんが共同代表で立ち上げた。
「それから10年以上が経って、社会も大きく変化しましたし、3Dプリンタなどのデジタル工作機械も身近になりました。ネットでは情報が無料でダウンロードできます。そんななか、ファブラボの役割を考えたときに思うのは、子供や学生、主婦、リタイアした人、外国の人など、異なる文化圏の人が出会える場所、学校や会社、家庭以外の人間関係が築ける場所にしていきたい、ということでした」
例えば毎週月曜日の午前に開催している「朝ファブ」では、ファブラボが入っている築132年の建物「結の蔵」のメンテナンスを一緒に行う。雑巾をかけたり、草をむしったりするうちに、なんとなく言葉が交わされ、心がほぐれていく。昨夏からは、学校に通いづらい小中高生を対象にした「21世紀型フリースクール」も始めた。
「掃除は大勢でやれば早くすむし楽ですよね(笑)。それと同じで、みんなが抱えている課題も、シェアすれば深刻になりすぎないのでは、と。『ものづくり』を入り口に、地域のさまざまな人が自信をもって生きていける、そんな場所であり続けたいと思っています」
【SDGsの現場から】
●朝9時スタート!蔵のメンテナンスから行う「朝ファブ」
●スキルやレベル、目的に合わせた活動が可能
※ファブラボとは…’02年にスタート。教育研究機関、地域のコミュニティセンター、NPOやNGO、個人など、さまざまな形態により独自に運営されている。
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- PHOTO :
- 望月みちか
- EDIT :
- 喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥