笑いあり、涙ありのコミカルな作品から、社会的メッセージを含んだシリアスな物語、迫力あるアクションに至るまで、毎回新たな表情を見せてくれる長澤まさみさん。20年以上のキャリアを経た今も尽きない探求心が、見る人を惹きつけてやまない魅力の源に。時に孤独と共に道を切り拓いていくしなやかさと、それを支える豊かな感性に触れました。

長澤まさみ
ジャケット¥702,900・シャツ¥133,100・デニム¥137,500・靴¥234,300(ロエベ)
長澤まさみさん
俳優
1987年、静岡県生まれ。2000年第5回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞し、同年女優としてデビュー。以来、多数の話題作に出演。近年では『コンフィデンスマンJP』『キングダム』シリーズ、映画『シン・仮面ライダー』『ロストケア』、Netflix映画『パレード』など。2020年公開の映画『MOTHER マザー』では、第44回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞に輝く。また、2022年放送の「エルピス-希望、あるいは災い-」にて、第31回 橋田賞・第60回 ギャラクシー賞・第49回放送文化基金賞を受賞。

【俳優・長澤まさみさんインタビューVol.01】映画『四月になれば彼女は』に思う、“愛を終わらせない方法“
【俳優・長澤まさみさんインタビューVol.02】同じ気持ちで作品づくりに向き合えたら、すごく嬉しい


自分の代わりはいない、と胸に刻んで準備を

――映画『四月になれば彼女は』で演じた弥生は、獣医として仕事にひたむきな女性でしたが、長澤さんご自身もがむしゃらに仕事に打ち込んだ時期はありましたか?

ありますね。気持ちよく走り抜けたいなと思うと集中のスイッチが入りますし、作品の質を変えていくには自分の集中力とどう向き合うかが重要。自分が一番リラックスして、いい状態で芝居に挑めるように環境づくりを模索しています。それは常々意識していることであって、どの作品も、私にとっては毎回が転機です。

――〝リラックスと集中〟の自然なバランスは今日の取材の撮影でも発揮されていたというか、1カット1カットの表現を研ぎ澄ます間にも、長澤さんならではの穏やかでポジティブな空気を感じました。

自分の力を最大限出せるような状態は、やっぱり空間づくりからだと思っていて。イメージすることを大事にしています。撮影するシーンの仕上がりや、自分の芝居の具体的な動きを、事前にしっかりとイメージして取り組むことで、安心して存分に発揮できる気がしますね。

「ゼロから形づくるには、イメージが重要」というのは、趣味である陶芸の師匠に教わったことでもあるんです。演技においても、人生においても同じだと感じています。

――逆に、緊張からうまくいかなかったこともあるのでしょうか?

あります、あります! 『四月になれば彼女は』の撮影現場でもそれを実感して、佐藤さんと川村さんの前で反省していたら大笑いされました。「その場で反省する人、初めて見た!」とからかわれましたね(笑)。

長澤まさみ
「どの作品も、毎回私にとっては転機です」(長澤さん)

――本作は、愛を描きながら孤独も浮かび上がってくる作品だなと感じました。孤独にちなんで…以前、別のインタビューで俳優は孤独とおっしゃっていましたが、その心境の背景をうかがってもいいですか?

19歳の時に 『涙そうそう』の撮影で2か月間沖縄にいた時、ふと感じたんです。俳優はよく「待つ仕事だ」と言われますけれど、天候やセッティングによる待ち時間の長さとか、撮影の不確定性に対応するには、精神力がすごく必要なんだなと。

いつでも一番いい状態でいなくてはいけないわけで、その準備は誰かに教わってできることではない。なるべく自分を整えるのですが、結局は本番で出せたものがすべて。他の人に分散して、助けてもらうこともできないんですよね。だからなかなか孤独だな、大変な仕事を選んじゃったなって思いました(笑)。

――それは、今でも変わらず?

変わらないですね。誰かに代わってもらえる仕事ではない。自分の代わりはいないと胸に刻んでいますし、そのためにはしっかり準備したいなと。

長澤まさみ
「いつでも一番いい状態でいる、そのための準備は孤独と隣り合わせ。大変な仕事を選んじゃったなって」(長澤さん)

――近年は『エルピス 希望、あるいは災い』や『ロストケア』など社会派の作品にも数々参加され、新たなやりがいも感じていらっしゃるのでしょうか?

エンターテイメントの世界ですから、作品や役=自分の考え方というわけではなく、ここは自分とは違うなと感じる部分ももちろんあるのですが、大人になるにつれ、向き合わざるをえない世の中の流れというものを感じていて。知っていきたいし、興味を持ちたいなと欲している部分でもあります。そういう意味では、自分自身も変わってきているのかなと思います。

――プレッシャーがかかるお仕事だと思いますが、心身の健康を保つために取り入れていることは?

それはもう、美味しいものです(笑)! 今日は食関連の取材にも行ってきたのですが、もうそれだけで、テンションが上がって、元気です!

――現在36歳、ここからの人生で大切にしていきたいことはありますか?

色々なことに興味があるので、ただ憧れるだけでなく、実際に行動に移してみたいです。ダンスのレッスンも時々受けています。陶芸は趣味の陶器集めが高じて。好きな習い事を増やして、プライベートを豊かにしていきたいですね。

長澤まさみ
「ただ憧れるだけでなく、実際に行動に移してみたい」(長澤さん)

――陶芸のお話をする時の笑顔がまぶしいくらいです! 長澤さんにとってどんな時間になっていますか?

土を触って集中して、自分が思い描く通りに形にならないところも含めて好きです。イメージを膨らませる時間はとても有意義で。最近は大きな花器をつくったのですが、師匠や友達とワイワイ作業していると、心が癒されますね。そういうたわいもない時間を大切に過ごしていけたらと思います。


長澤まさみさんインタビューVol.03は3月29日に公開予定。こちらもぜひチェックしてみてください!

映画『四月になれば彼女は』 全国東宝系にて公開中!

(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会
(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

【ストーリー】
精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人で世界中を旅する伊予田春(森七菜)から手紙が届く。〝天空の鏡〟と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、10年前の初恋の記憶が書かれていた。時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた。しかしある日突然、弥生は失踪してしまう。彼女が残したのは、「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」という謎かけ。春はなぜ手紙を送り、弥生はどこに消えたのか。ふたつの謎は徐々に絡み合い、やがてつながっていく。

「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ、やがては消えていってしまうのだろう」。愛する人の真実の姿とは――。ウユニ、プラハ、アイスランド、東京と世界の絶景と共に浮かび上がってくるのは、美しいだけではない人間の深淵。生きること、誰かを愛すること、その痛みさえ照らす純愛映画。

原作:川村元気「四月なれば彼女は」(文春文庫)
監督:山田智和
脚本:木戸雄一郎 山田智和 川村元気
撮影:今村圭佑
音楽:小林武史
出演:佐藤健 長澤まさみ 森七菜
仲野太賀 中島歩 河合優実 ともさかりえ
竹野内豊
主題歌:藤井 風「満ちてゆく」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝
(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

公式サイト

問い合わせ先

ロエベ ジャパン クライアントサービス

TEL:03-6215-6116

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PHOTO :
黒沼 諭(aosora)
STYLIST :
仙波レナ
EDIT :
福本絵里香(Precious)
取材・文 :
佐藤久美子