2024年4月、銀座中央通りに面した「TORAYA Ginza Building」に、フランスでアジア人初のミシュラン三つ星を獲得した小林圭シェフと、室町時代後期創業の和菓子屋「とらや」が手がけるレストラン「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ(ESPRIT C. KEI GINZA)」がオープンしました。
「とらや」とタッグを組んだレストランは、2021年に静岡県御殿場市にオープンし好評を博している「メゾンケイ(Maison KEI)」に続く2店舗目となります。
コンセプトは美食の研究所!「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」
「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」の店名に入っている「C」は、「cuisine(料理・厨房)」、「creation(創造性)」を意味し、独創的で創造性あふれる料理を生み出す小林圭シェフの「ESPRIT(精神)」である「自然の恵みに敬意を払い、お客さまの記憶に残る料理をつくること」を体現しています。
コンセプトは「美食の研究所」。レストランの中央には、料理を生み出す要であるオープンキッチンが設えられています。素材と対話し、フランス料理などジャンルにこだわらず、自由な発想でおいしさを追求する小林圭シェフが創造する、五感を呼び覚ます料理を楽しめるお店です。
お料理は、コースではなくアラカルトメニューのみの提供です。好みの食材やお料理を選び、ゲストひとりひとりが自身でコースを組み立てていくスタイルとなります。
前菜からデセールまでコース形式でセレクトするもよし、お気に入りのお料理を選ぶもよし、それぞれお好みのスタイルで楽しめるのもポイントです。
今回Precious.jpライターが実際に「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」の美食を体験してきました。一部お料理の体験レポートを通して、お店の魅力をお伝えします。
「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」の美食を体験
パリの「Restaurant KEI」のオーナーシェフである小林圭氏と、和菓子屋「とらや」が作ったレストランである「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」。石の文化と言われるフランスと、木の文化と言われる日本の、それぞれの文化が織り交ぜられた美しい空間が広がります。
お店には、オープンキッチンを取り囲むように作られた全12席のカウンター席と、テーブル席が5席配されています。6名席の個室も完備されているので、特別なシーンでも利用できそうです。
今回案内していただいたのはカウンター席。キッチンで食材が調理されていく様子を、間近で体験することができるライブ感満載のお席です。
こだわりの前菜「最中 キャビア 毛蟹 グリビッシュ」など
前菜としていただいたのは、小林圭シェフのセレクトする熟成期間の長いクリスタルキャビアを用いたひと品。北海道の毛蟹をふんだんに使用し、蟹味噌を使ったバターを添えています。
キャビアや毛蟹と一緒にいただくのは、ほうれん草のピューレを使ったグリビッシュソース。また素材を挟むのは、レストランのために特別に作られた最中です。この最中、大きさや厚さなどをお料理に合うように少しずつ調整して作られているのだそう。最中には「KEI」の文字が刻まれています。
お料理ひとつひとつ、細部へのこだわりが感じられるのも、「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」の特徴のひとつです。小林圭シェフの美学が垣間見えます。
最中は蓋をして挟んで食べても、ナイフとフォークでいただいてもよいとのこと。筆者はそのまま挟んでいただきました。パリッとした最中の食感に、濃厚なキャビアの風味と味わい、磯の香りが広がります。和の最中生地とのバランスも抜群。今までに食べたことのない、贅沢でおいしい最中でした。お酒とも好相性です。
次に「アメーラトマトのサラダ アーモンドミルクとバジル」をいただきました。こちら、食べる直前に液体窒素で凍らせたバジルソースのグラニテをかけて仕上げるライブ感が、まさに五感を刺激してくれるひと皿。
静岡県産のアメーラトマトを使用したサラダで、カシューナッツを加えたアーモンドミルクのエスプーマ、バジルオイルと一緒にいただきます。甘みが強く、ほのかな酸味とのバランスがいいアメーラトマトと、濃厚なバジルのオイル、なめらかな口当たりのクリームが見事にマッチします。冷たいグラニテもアクセントに。
選べるお肉には「鳥山牧場 紡ぎ和牛 炭火焼き」をセレクト
メインのお料理には「鳥山牧場 紡ぎ和牛 炭火焼き」をセレクト。メニューを選ぶ際に、実際に何種類かのお肉を見せていただき、気分に合わせてお肉や調理法を選べるのもお店の魅力のひとつです。
群馬県産の「鳥山牧場 紡ぎ和牛」は、味と脂のバランスが抜群な、最高品質の和牛です。「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」では、その焼き方にもこだわりがあります。
表面をカリッと高温の南部鉄器で焼き上げてから、備長炭で余分な脂を落としながら火入れしていき、炭の香りをつけます。藁を使い燻製の香りをまとわせてから、最後にサラマンダーで熱々に仕上げているそう。外側はしっかりと焼かれており、内側はレアで柔らかいお肉をいただくことができます。
実際のお料理がこちら。ソースは、仔牛肉の旨みを凝縮したシンプルな「ジュ」をセレクト。クレソンのピューレ、柚子胡椒、レフォール、マスタードなどを入れた薬味が添えられており、お肉と一緒にお好みで楽しめます。
「ジュ」のほか、「薬味」を選ぶこともでき、生山椒、柚子胡椒、おろしポン酢が付いてきます。その日の気分でソースが選べるのもうれしいポイントです。
とろけるほどにやわらかいお肉に感動! 燻製の香りがしっかりと感じられるお料理ですが、その香りがお肉のおいしさや風味を邪魔することはありません。独特の風味の薬味を添えていただけば、また味に変化が。
ペアリングにおすすめしていただいたのは深く美しい赤が魅惑的なワイン、98年の「レ・トゥーレル・ド・ロングヴィル」。しっかりとした果実のアロマが感じられるワインで、どっしりとした口あたりはお肉料理とまさに好相性でした。
ちなみにナイフもお肉料理用にお好みの色やデザインを選べます。福井県の「龍泉刃物」のナイフで、刃面の美しい模様とKEIの刻印が印象的です。
こういったささやかなこだわりからも、単純にお食事が「おいしい」というだけでなく、レストランで過ごす体験・時間すべてを楽しめるのが素晴らしいと感じました。
シグネチャーデセール「ヴァシュラン」を体験
お食事の最後にはシグネチャーデセールである「ヴァシュラン」をいただきました。「ヴァシュラン」は、パリの「Restaurant KEI」のシグネチャーデセールで、日本では御殿場の「メゾンケイ」と、銀座の「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」でしか食べられないそう。
夏季限定の「ヴァシュラン エキゾチック」は、夏をイメージした黄色いメレンゲの下に、パッションフルーツのパイナップルのソルベと、あんこのアイスの上に、ヨーグルトを加えたパッションフルーツのエスプーマを重ねています。
マンゴーソースで和えた沖縄・石垣島産のパイナップルや、パッションフルーツの風味の自家製のキューブ型の羊羹を添えるなど、食感や味わいの違いもポイントのひとつ。最後に「とらや」のあんこのソースを掛けていただき、完成です。
食べ方としては、スプーンの背でメレンゲを割って、ソルベやソースと一緒にいただくとのこと。ふわっとしたメレンゲはすぐに割ることができました。華やかでエキゾチックな味わいと和の風味がマッチしていてとても美味でした。
デセールの味わいやトッピングなどは季節によって変わるそう。季節ごとのヴァシュランも気になります。
今回ご紹介したメニューのほかにも、「MAKI」と名付けられた鰻の炭火焼をのせた豪華な海苔巻きや、メインの和牛の炭火焼きの付け合わせにはシンプルながらも手が込んだチョレギサラダをいただくなど、こだわりの詰まったお料理を堪能しました。
アミューズからデセールまで、まさに「記憶に残る料理」の数々。味わいはもちろん、芸術的とも言える料理の見た目の美しさや、香り、食感、そしてライブ感あるカウンター席で聞こえてくる音など、五感全部に響く、素晴らしい体験でした。
「伝統と新しさが共存し、多様な食文化が楽しめる東京・銀座で、フランス料理の域を超え、何にもとらわれず、自由な発想で、美食の革新を追求するレストランを作りたい。料理人に限らず、ここで働く人誰しもが食材を学び、研究し、美食の真髄をお客さまと分かち合い、料理だけでなく、このレストランでの体験すべてがお客さまの心を満たすものであってほしい」
「エスプリ・セー・ケイ・ギンザ」は、小林圭シェフのこのような想いを体現したレストランだそう。
同ビルの12Fには、1586年創業のフランスのクリスタルメゾン「サンルイ(Saint-Louis)」のクリスタルグラスで提供されるドリンクと共に、小林圭シェフが手がける料理とデセールを楽しめる「サンルイ・バー・バイ・ケイ(ST LOUIS BAR by KEI)」も同時オープン。
小林圭シェフの生み出す美食の世界で、ぜひみなさんも「記憶に残る」お食事体験を楽しんでみませんか?
問い合わせ先
- エスプリ・セー・ケイ・ギンザ(ESPRIT C. KEI GINZA)
- 営業時間/17:30~23:00(L.O.20:30)
- 定休日/日・月曜
- TEL:03-6274-6611
- 住所/東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル11F
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- 伊東ししゃも 編集者・ライター
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- EDIT :
- 小林麻美