温泉は心身にさまざまな恩恵をもたらしくれるもの。日常の喧騒を離れて、ただゆっくり浸かっているだけで、疲れが癒されると共に、スキンケアまで叶えられる極上の湯宿が日本各地に点在しています。

そんな“美肌の湯自慢”の名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、長野県上田市・別所温泉にある「旅館花屋」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

大正浪漫が息づく有形文化財の老舗宿で歴史と名湯にひたる

長野県上田市にあり、信州最古の温泉として知られる別所温泉。豊かな自然と歴史が織りなす美しい温泉街において、ひときわ伝統と風格を感じさせるのが「旅館花屋」です。大正6年(1917年)創業の老舗で、総面積6500坪という広大な敷地に、渡り廊下でつながれた木造建築が点在。その約8割が文化庁登録有形文化財で、まるで時代を超えた旅へと誘われるような雰囲気が漂います。

「旅館花屋」の外観
大正浪漫の世界観に引き込まれる建物外観。
「旅館花屋」のロビー
レトロなロビーでチェックイン。

「こちらの宿の魅力のひとつは、大正浪漫の趣きを色濃く残す建築。クラシックな雰囲気のロビーや長い渡り廊下などどこを切り取っても絵になる空間で優雅な気分にひたれます」(植竹さん)

渡り廊下
渡り廊下も趣きがある。
廊下からの眺め
館内の至るところで四季折々の景観美を愛でることができる。

「登録有形文化財に選定されたお宿の館内には大浴場が3か所。建築美に惚れ惚れするような浴室にて、別所温泉の美肌の湯を堪能できるのも醍醐味です。

まず、大理石風呂はドーム型の高い天井やレトロなステンドグラスが優美。若草風呂は、伊豆石でできた若草色の浴槽が美しく、大きな窓から柔らかな日差しが降り注ぎます。そして、岩造りの露天風呂は風情ある回廊を抜けた先にあり、緑の木々に囲まれての湯浴みはリラックス効果抜群です」(植竹さん)

大理石風呂
大理石風呂。
若草風呂
若草風呂。
露天風呂
露天風呂。

「泉質は単純硫黄泉。メラニンの分解を促進する効果があるとされる湯で、肌のトーンアップが期待できます。少しとろみのある湯が肌に優しく浸透する感覚が実に心地よく、美白効果を期待しつつ至福の湯浴み時間を過ごすことができました」(植竹さん)

武士や貴族の屋敷に泊まる感覚!非日常ステイで心身の疲れを浄化する

全32室の客室のなかでも、特にグレードが高いのは温泉露天付特別室。まず、「武家屋敷 桜御殿」は武家屋敷の建具や建材を移築し、荘厳な佇まいの土壁や床の間のある玄関、書院座敷など、細部まで忠実に再現したユニークな空間です。

「武家屋敷 桜御殿」の土壁
「武家屋敷 桜御殿」の土壁。
「武家屋敷 桜御殿」の室内
「武家屋敷 桜御殿」の室内。
「武家屋敷 桜御殿」の露天風呂
「武家屋敷 桜御殿」の露天風呂。

「露天風呂付きの特別室は、『武家屋敷 桜御殿』のほかに3室。それぞれ間取りや造りは異なりますが、組子細工で彩られた障子や浴室のタイルなど、細部にまで職人の技が凝らされた客室はまさに大人の隠れ家です。昔の面影を残す風雅な空間にて、当時の武士や貴族の暮らしに思いを馳せながら寛ぐ非日常体験は心身のリフレッシュの好適だと思います」(植竹さん)

「23番 温泉露天付特別室」の室内
「23番 温泉露天付特別室」の室内。
「23番 温泉露天付特別室」の露天風呂
「23番 温泉露天付特別室」の露天風呂。

和の真髄!料理人の精緻な技を込めた会席で日本の四季を味わう

夕食は、日本の四季の移ろいを昇華させた和食会席。山菜や高原野菜、きのこなど旬の素材を生かした繊細な料理が丁寧に盛り付けられ、信州の風土を五感で味わうことができます。

食事処
食事処の建築美も必見。
夕食の一例
夕食の一例。

「夕食・朝食の会場でも重厚な梁やレトロな調度品が目を引き、食事の気分をいっそう盛り上げてくれます。また、朝食の後、喫茶室でコーヒーをいただきましたが、サイフォンで丁寧に淹れられたコーヒーが格別で、旅の余韻にひたりつつチェックアウトすることができました」(植竹さん)


以上、別所温泉「旅館花屋」をご紹介しました。登録有形文化財の名建築にて、心と肌の両方を磨く極上のひとときを過ごしたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 旅館花屋
  • 住所/長野県上田市別所温泉169
    客室数/全32室
    料金/朝夕2食付き 2名1室1名¥21,900~、温泉露天付特別室は¥49,500~、「武家屋敷 桜御殿」は¥62,700~
  • TEL:0268-38-3131

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)