頭皮の健康を意識したとき、どうしても切っても切り離せない悩みのひとつが、髪を染めるときの「カラー剤」。
たとえば、白髪染めで頻繁にカラーをしなければならないけれど、皮膚や体への影響に不安を抱えている…なんて人は、少なくないはず。
そこで今回は、美容師の渋谷謙太郎さん、そして美容整形外科医の丸山直樹さんによる対談形式で、カラー剤による影響や、アレルギー症状が出てしまったときの対処法についてお聞きしました。
カラー剤によるアレルギーを未然に防ぐには?
--渋谷さん、丸山先生、よろしくお願いします! 今回は、カラー剤によるアレルギーの影響についておうかがいしたいのですが、まず美容院では「カラー剤アレルギー」が起きないよう、対策していることはあるのでしょうか?
渋谷謙太郎(以下、渋谷)「カラー剤によるアレルギーは、ジアミンという酸化染料によって起こりやすいので、肌への影響を気にされる方には、パッチテストを行いますね。
あとはできるだけジアミンの配合が少ないカラー剤でパッチテストをしてから、そのカラー剤を使用する、といったところです」
丸山「パッチテストで問題がなければ、カラー剤によるアレルギーは心配する必要はないように思いますね。ただ、年齢とともに敏感肌になっていくこともあるので、必ずアレルギーが起きない! とも言い切れない部分はありますが。
海外の美容院などで使われる薬剤などは成分が強いと聞きますが、日本ってどうなのでしょうか?」
渋谷「海外の薬剤の成分が強いというのは、たしかにありますね。色をはっきり出しやすいので、美容師がショーで使うこともあるのですが、基本的にお客さんに使うことはないですね。日本はそこの基準は割と厳しいほうだと思います」
カラー剤の頭皮への影響、美容師と医師の見解は?
丸山「だいたい皆さん、どのくらいの頻度でカラーをされるものなのですか?」
渋谷「通常のカラーだと、人によりまちまちですが、白髪染めとなると、だいたい2週間に1回程度、カラーをしに来る方が多いですね」
丸山「頻度としてはけっこう、高いですね」
渋谷「そうですね。その部分も少々気になっているポイントです。継続的にカラーをすることで皮膚にアレルギーを引き起こすことがあるのかな、と」
丸山「肌は基本的には、2週間に1回程度の周期で入れ替わっているので、日常的に晒されているわけでなければ、そこまで過敏になる必要はないのかな…と思いますね。
それこそ何事もそうですが、毎日やっていなければ大丈夫、といった感じでしょうか。むしろお客さんのほうよりも、日々触れる可能性がある美容師のほうが、ジアミンによるアレルギー症状を引き起こす可能性が高いように思います」
渋谷「たしかに。美容師の退職理由として、肌荒れなどが多いのも事実ですね」
カラー剤の成分が体内に蓄積してしまうことはある?
--カラー剤に関しては、皮膚だけではなく体内にその成分が蓄積されてしまうのでは? という懸念もありますよね。妊婦さんなどは授乳が終わるまでは、カラーを控えるという方も多いですし。
渋谷「妊婦さんがカラーを控える理由としては、カラー剤のニオイがつわりに影響してしまう、という部分が大きい気がしますね。実際カラー剤を混ぜているときが、一番アンモニアなどのニオイが強くなるので、美容師でもその臭気でむせてしまうことがありますし。
小さな赤ちゃんなどは、臭気で咳が出てしまうこともあるので、美容室で抱っこしての施術はおすすめしないです」
丸山「そうですね。臭気でむせるということはあると思います。ただ、ジアミンなどの成分が体内に入り込んで蓄積する、という現象は考えづらいですね」
渋谷「妊婦さんであっても、髪がプリン状態になっていることなどがストレスになってしまうから、カラーをされるという方もいますからね。ただ、不安を抱えながら妊娠時期を過ごすのはよくないので、そこを懸念される方に、カラーをおすすめすることはしないですが」
丸山「先ほども話したように、基本的に2週間に1回のペースで肌はターンオーバーするので、ジアミンがついた表皮は、垢となって流れていくんですね。皮膚に成分が留まり続けるということはないですし、正常な状態であれば、皮膚を通って体内に入り込むということはないと思います」
渋谷「先ほど話に出た、カラー剤の臭気を吸い込んでしまうことに関しては、どうですか? それについては一応体内に入り込んでいることになりますよね」
丸山「それについても、体内に入った毒素は肝臓が分解し、尿素に変えてくれるので、通常であればそこまで大きなトラブルにはならないはずです」
もしもカラー剤アレルギーが出てしまったら?
--なるほど。意外にもカラー剤による影響を過度に心配する必要は、ないのですね。とはいえ、やはり症状が出てしまう人もいるわけですよね?
渋谷「そうですね。そういった方には、ヘアマニキュアなどによるカラーで対応することが多いですね。ただ白髪染めの場合は、マニキュアやヘアを使う方法だと、白髪の部分だけが目立って色が入ってしまうということもあります」
丸山「それはそれで気にされる方はいますよね」
渋谷「そうですね。ただ、カラー剤のブランドを変えると解決する、ということもけっこうあるんですよ」
丸山「アルカリ性やジアミンなどの酸化染料以外では、あまり荒れることはないですよね。そこの配合率の問題もあるのでしょうね」
--実際に症状が出てしまった場合、医学的にはどう対処すべきですか?
丸山「まず症状が出たら、すぐ皮膚科に行くことをおすすめします。
ローションタイプのステロイド剤などを使えば1〜2日、長くても1週間で症状は改善されると思いますよ。
一番よくないのは、症状を慢性化させてしまうことですね。完治にも時間がかかってしまいます」
渋谷「そうなってしまうと、その間は酸化染料などでないにしろ、カラーの施術はできなくなってしまいますしね」
丸山「皮膚が弱くなっていたり、乾燥などよって傷になっている部分にジアミンがついてしまって、そこから荒れてしまうこともあります」
渋谷「逆に、頭皮が傷ついている場合はカラーを控える、というのはアレルギーを引き起こすことへの予防にもなりますよね」
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カラー剤によるアレルギー、敏感肌の人などにとっては、特に懸念が大きくなってしまいます。
しかし、カラー剤が皮膚や体内に及ぼす影響に関しては「過敏になりすぎなくてよい」という見解は、カラーに対する不安要素を取り除いてくれる、大きな助言になりそうです。
もしも症状が出てしまったら、すぐかかりつけの病院へ。いち早くケアすることが、より美しい髪や頭皮を維持する秘訣になります。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- Rina Onodera