天の川を挟んで年に1度だけ出会える、天空の恋。星座にまつわる、神話の数々。流れ星への願い事。もしかしたら未来には地球から移り住めるかもしれない宇宙の惑星。ファンタジーとロマンがいっぱい詰まっている満天の星は、古来より人の心を掴んで離しません。

現在では、各地で星空ツアーや天体観測に関するイベントが開かれています。

星空と富士山のコラボレーションも。天体は、季節や時間、場所によっても表情を変えます/撮影 成澤広幸
星空と富士山のコラボレーションも。天体は、季節や時間、場所によっても表情を変えます/撮影 成澤広幸

「天体観測や星空に関するイベントを開くと、参加者の半数以上は女性であることが多いんですよ」と語るのは、ビクセンの神山美穂さん。天体望遠鏡や双眼鏡を扱う総合光学機器メーカー・ビクセンでは、週末を中心に日本各地で星空に親しむイベントを開催しています。

なぜ女性のあいだで天体観測が人気なのか、実際に天体観測を始めるときに必要な道具や天体観測のコツを伺いました。

【目次】

実はもとから多かった?天文ファンの女性、タレントも宣言

天体観測イベント、多いのは30代の女性

年間200回を超えるイベントを開催しているビクセン。星空案内人と楽しむツアーや、星空の下でリラックスして行うヨガ、星をイメージした食事とお酒を楽しむ「スターパーティー」など、ひと口に「星空に親しむイベント」といってもその楽しみ方は多岐にわたります。

天体観測イベントにて、双眼鏡を手に思い思いに星空を眺める女性たち
天体観測イベントにて、双眼鏡を手に思い思いに星空を眺める女性たち

神山さんによると、年々女性の参加者が増えているそう。最近では参加者の半数以上が女性であるイベントも少なくないといいます。

「20代から60代まで、幅広い層の女性がいらっしゃいます。平日の夜に都内で開くイベントでは、特に30代の働く女性が多い印象です。女性おひとりでの参加も多いんですよ。また、自身が天体観測が好きで、友人やパートナーを誘って来られる方もよくいらっしゃいます」(神山さん)

天体の楽しみをファッショナブルに。「私も、宙ガール」

なぜ、天体観測への女性の人気が高まってきたのでしょうか? 神山さんは「『宙(そら)ガール』という言葉や天文ファンの芸能人の活動により、女性が『星や宇宙が好き』と発信しやすくなったのではないか」と話します。

「地域の科学館などで行うイメージのある天体観測会ですが、ある音楽フェスイベントで夜のコンテンツとして天体観測を行いました。すると男性よりも夢中になって星空を眺めている女性が多く、意外な反応でした。

これをきっかけに、男性の趣味としてのイメージが強い天体観測を、より女性も趣味として楽しめるよう、女性が気軽に参加できる星空イベントや商品展開をスタート。また、女性が自ら『星や宇宙が好き』と気軽に言えるようになれたらとの想いから、ビクセンでは星空や宇宙が好きな女性をさして『宙ガール』を提唱しました」(神山さん)

女性が扱いやすいサイズやカラーの天体観測グッズも展開
女性が扱いやすいサイズやカラーの天体観測グッズも展開

タレントの篠原ともえさんが「宙ガール」を宣言し発信したことも、注目された要因なのだそう。星空に詳しいのみでなく、ファッションに星のモチーフを用いるなど、星空のカジュアルな楽しみ方を魅せる彼女を見て「実は私も『宙ガール』」という声が増えたといいます。

天体をファッションで楽しむ「宙ジュエリー」¥1,728〜(税込)も人気。星の色を再現するなど随所にビクセンのこだわりが光ります
天体をファッションで楽しむ「宙ジュエリー」¥1,728〜(税込)も人気。星の色を再現するなど随所にビクセンのこだわりが光ります

「天文・天体観測というと、大きな望遠鏡や難しい科学のイメージが強く、男性の趣味という印象もあったと思います。そのイメージが『宙ガール』という言葉で変わり、楽しみ方の幅も広くなったことで『実は、好きなんです』と言いやすくなったのではないでしょうか。星空が好きという女性や、星にまつわるロマンチックな話が好きな女性は、本当は以前からたくさんいたのだと思います」(神山さん)

※:「宙ガール」はビクセンの登録商標

天体観測入門!必要な道具を一式そろえても¥100,000以下とお手ごろ!

実際に天体観測を始めようと思ったら、何が必要なのでしょうか?

神山さんによると、天体観測の必需品は「赤いライト」「星座早見盤」「コンパス」の3点セット。双眼鏡もあると、都会でも月の模様や肉眼では見えないくらい星まで天体観測を楽しめるそう。これらに、初心者向けの天体望遠鏡を合わせても総額は¥100,000以下とお手ごろです。

入門におすすめの経緯台「ポルタII経緯台」には天体模様とビクセンのロゴが入っています
入門におすすめの経緯台「ポルタII経緯台」には天体模様とビクセンのロゴが入っています

「双眼鏡や天体望遠鏡は、より高性能なものをと思うと価格は天井がありません。ただ、高性能なものは扱いや管理が難しく、入門にはおすすめしません。お手ごろかつ扱いやすいもので、まずは天体観測を気軽に楽しんでいただきたいですね」(神山さん)

ビクセンが初心者におすすめする天体観測入門の道具を伺いました。

必需品3点セット

目を暗闇に慣らす「赤いライト」

明るさの調整ができ、キャンプにもおすすめの天体観測用ライト SG-LO1 ¥5,940(税込)
明るさの調整ができ、キャンプにもおすすめの天体観測用ライト SG-LO1 ¥5,940(税込)

天体観測では、スマートフォンの画面を含め明かりを消して10分くらい夜の暗さに目を慣らせると、瞳孔が開き小さな星の光も見えやすくなります。とはいえ、足元や星座早見盤は照らしたいもの。そこで活躍するのが赤いライトです。

「赤い光は、瞳孔が閉じにくいんです。そのため、天体観測には安全性の観点からも、光への感度を落とさずに足元を照らす赤いライトが欠かせません」(神山さん)

天空の地図「星座早見盤」

星座早見盤 for 宙ガール オープン/参考価格¥494(税込)
星座早見盤 for 宙ガール オープン/参考価格¥494(税込)

天空の地図である、星座早見盤。その日、その時間に見える星を知るのに欠かせません。サイズや素材、デザインに幅広い種類があるので、好みの1枚を見つけたいですね。

星座早見盤の弱点は、固有の動きをする月や惑星が載っていないこと。そこでビクセンでは星図に惑星も表示できるスマートフォンアプリ「Planet Book」(無料)も出しています。

Planet Bookの表示画面。星図に月や火星、土星などの惑星も表示されます
Planet Bookの表示画面。星図に月や火星、土星などの惑星も表示されます

見たい天体や用途にあわせ、早見盤とアプリを使い分けましょう。

星座早見盤を読み解く道具「コンパス」

赤いライトを内蔵しているLEDコンパス オープン/参考価格¥980(税込)
赤いライトを内蔵しているLEDコンパス オープン/参考価格¥980(税込)

星の位置を読み解くのに星座早見盤とセットで重要なアイテムが、方位磁針です。北の方角を計り星座早見盤をかざせば、並んでいる星と星を結んで星座を見つけられます。

天体観測にも舞台鑑賞にも使える、双眼鏡

ソラプティLite H 8×21 WP オープン/参考価格¥8,651(税込) 重さ約210g、高さ9cmに満たないコンパクトさなので持ち歩きに最適。明るい5色展開
ソラプティLite H 8×21 WP オープン/参考価格¥8,651(税込) 重さ約210g、高さ9cmに満たないコンパクトさなので持ち歩きに最適。明るい5色展開

天体観測は肉眼でも十分楽しめますが「もう一歩踏み込んで星の世界を知りたい」という方におすすめなのが双眼鏡です。

「双眼鏡を使えば、月の模様や天の川のつぶつぶとした星の集まりも見られます。倍率や性能はさまざまなので、どんな星を見たいのかによっても選ぶ双眼鏡は変わってきます。あまり倍率が高いと、一部が拡大され過ぎてしまってどこをみているのか慣れるまでかわかりにくいかもしれません。

はじめは8倍程度の双眼鏡がおすすめです。軽さ、使いやすさはもちろん、舞台鑑賞でオペラグラスとしても使えるのもおすすめの理由です」(神山さん)

惑星の模様まで楽しむ天体望遠鏡は10年物

月面のクレーターまでしっかり見たい。惑星を模様まで楽しみたい。そんなときは天体望遠鏡を使ってみましょう。

天体望遠鏡から月をのぞくと、月面の模様や影まで大迫力で観察できます(143倍イメージ)
天体望遠鏡から月をのぞくと、月面の模様や影まで大迫力で観察できます(143倍イメージ)
十分に暗い場所で望遠鏡を使うと、銀河も見られます/「M31(アンドロメダ銀河)」 撮影 島田敏弘
十分に暗い場所で望遠鏡を使うと、銀河も見られます/「M31(アンドロメダ銀河)」 撮影 島田敏弘

天体望遠鏡は三脚、架台(望遠鏡を三脚に固定する部分)、鏡筒(望遠鏡の筒部分)の3パーツからなります。神山さんによると、特に架台が大切なのだそう。

「架台は上下水平に動かせる『経緯台』と、天体運動と同じく弧を描くように動かせる『赤道儀』があります。入門におすすめなのは、より直感的に扱いやすい経緯台です。

プラスチック製の安価なものは強度が弱く風でブレてしまいますし、微動の調整ができないタイプもあり、操作性がよくありません。ずば抜けて高価なものである必要はありませんが、せっかく購入するならしっかりしたものを用意しましょう。丁寧に扱えば10年以上はもちますよ」(神山さん)

ポルタⅡ A80Mf鏡筒搭載セット ¥59,400(税込) 入門におすすめの経緯台(ポルタⅡ)、三脚、鏡筒が一式セットになっています
ポルタⅡ A80Mf鏡筒搭載セット ¥59,400(税込) 入門におすすめの経緯台(ポルタⅡ)、三脚、鏡筒が一式セットになっています

天体望遠鏡を扱う上で注意したいのは、湿気なのだそう。しっかり乾燥させないとレンズにカビが生えてしまいます。

「外で天体観測をすると望遠鏡に夜露がつくことがあります。濡れてしまったときは、1日乾燥させてからしまってください。また、『大事だから』と箱に入れて押入れの奥に……というのも、NG。風通しをよくしましょう。部屋の中に飾っておくとインテリアにもなりますし、気軽に窓から月の観察もできるのでおすすめです」(神山さん)

星空を写真に収めよう!アダプターを使えばスマホで月面の撮影も

天体望遠鏡で星空を観察していると「この月面を、写真に撮りたい!」と思うこともあるでしょう。神山さんによると、スマホのレンズを望遠鏡の接眼部につけると、望遠鏡からのぞいているように撮影できるそう。このとき、スマホをどれだけ安定させられるかがポイントだといいます。

「カメラをぴったりとまっすぐに望遠鏡の接眼部につけ、その状態でピントや明るさを調整します。スマホを手で支えながら行うと、角度がズレてしまったり手ブレしてしまったりしやすいです。スマホでの撮影に便利なアダプターを活用すれば、簡単に迫力ある天体写真を撮影できますよ」(神山さん)

天体望遠鏡 スマートフォン用カメラアダプター ¥10,800(税込)
天体望遠鏡 スマートフォン用カメラアダプター ¥10,800(税込)

アダプターでカメラを安定させれば、動画の撮影も簡単にできるそう。月食の様子なども録れると面白いですね。

2018年9月は惑星に注目! 天体観測のおすすめの時期は?

より美しい星空を楽しめる天体観測おすすめの時期と、9月の星空の見どころを神山さんに教えていただきました。

天体望遠鏡を使った天体観測は、秋がおすすめ

神山さんによると、天体望遠鏡や双眼鏡を使った天体観測は秋がおすすめなのだそう。

「大気の透明度が高ければ、星空をよりクリアに楽しめます。夏は、大気中の水蒸気が多く、星空が見えにくいんです。春は、気温は高くありませんが、花粉や黄砂が空気中に舞っていて透明度が低い。

冬は大気の透明度は高いのですが、上空にジェット気流が流れ空気が大きく揺れてしまいます。そのため星がチカチカと瞬いて観測しにくくなります。

大気の透明度が高く、星の光が安定して見える天体観測おすすめの時期は、これからの『秋』なんですよ」(神山さん)

天体観測は、夏や冬よりも秋がおすすめ/「冬を待つゴンドラ」撮影 成澤広幸
天体観測は、夏や冬よりも秋がおすすめ/「冬を待つゴンドラ」撮影 成澤広幸

一方で、冬にはオリオン座のように明るく見応えのある星・星座が多いそう。肉眼で星座を探しながら星空を楽しむには、冬もおすすめだそうです。

9月の空は金星、木星、土星、火星が一緒に見られる!月にも接近

これから迎える天体観測の季節。今年の9月の注目は「惑星」なのだそう。

「9月は惑星のうち、金星・木星・土星・火星の4つがひと晩に見られる面白いタイミングなんですよ。さらに、12日〜20日には、これら4つの惑星のそばを月が通り過ぎて行く様子が観察できます。ただし、金星は日没後1時間程度で沈んでしまうので、早めに観察しましょう」(神山さん)

天体望遠鏡を使えば、土星の周囲の輪も見られます
天体望遠鏡を使えば、土星の周囲の輪も見られます

毎月の天体の耳より情報は、国立天文台の星空情報に紹介されています。あらかじめチェックして天体観測に向かうと、より一層深く星空を堪能できます。


最後に、神山さんに星空の魅力を伺いました。

「空やその先の宇宙は、私たちの生活からは少し離れた存在です。その非日常の空間を、パッと顔を上げて見るだけで感じられる。これが、私が思う星空の魅力です。また、星空は毎日少しずつ変わっていきます。春・夏・秋・冬、それぞれ観測できる星と星座は異なるんです。季節を星空で感じられるのも、素敵だなと思います」(神山さん)

帰り道や旅先の夜、少し足を止めて空を眺めてみませんか? 輝く星空に気分が明るくなって、新たな発見も生まれるかもしれません。

※冒頭写真 撮影 北山 輝泰

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EDIT&WRITING :
廣瀬 翼(東京通信社)