「いつもは健康体なのに、突然のお腹の激痛で意識が飛んでしまうことがある」と、料理研究家の山本ゆりさんが症状を告白したSNSの投稿が、話題を集めています。その投稿を受けて、「私もたまに同じ症状になっている」「病名があったのか」などの声があがり、大きな反響がありました。

実は、その症状には「迷走神経反射」という名前があるそう。あまり聞いたことのない名前ですよね。そこで、この症状がなぜ起こるのか、また対処法や対策を、山王クリニック品川の院長で、脳神経外科が専門の山王直子先生にお聞きしました。

「迷走神経反射」の原因と対応策は?

女性が横になっている
突然、激しい腹痛が起こったら、すぐに横になる

突然のお腹の激痛で、意識が飛んでしまう。「迷走神経反射」とは何が原因で起こる、どういった症状なのでしょうか。また、起こってしまう前に、防ぐ方法もあれば知りたいですよね。

「『迷走神経』とは、頭部や頸部、胸部、腹部 (骨盤を除く) のすべての内臓に広がっていて、感覚、運動、分泌を支配している神経です。

精神的・肉体的に、強いストレスや激しい痛みが加わったとき、それが引き金となり『迷走神経』が刺激され、腕や脚にある末梢血管が広がってしまうんです。

すると、血圧が急に下がり、脳へ行く血液が少なくなるので、意識を失うことがあります。この症状を『迷走神経反射』と言います。

つまり、迷走神経反射が起こる場合、脳への血流が大きく関わっているんです」(山王先生)

「突然の腹痛から始まる場合は何の関係が?」という疑問が残るかもしれませんが、下痢や嘔吐があると、体液が急に体から失われてしまうので、循環血液量が減ってしまいます。やはり脳へ行く血液が少なくなるので、迷走神経反射が起こることがあるのだそう。

「他にも、よく起こりやすい場面としては、電車などで長時間立っているとき。長時間立っているために、下半身に血液が集中して、脳へ行く血液が少なくなります。それに加え、朝の満員電車だと、精神的にも肉体的にもストレスがたまる状態なので、起こる確率も高いと言えるでしょう。

また、運動などで大量に汗をかいたあとにすぐにお風呂に入ると、脱水が進み、末梢血管や頭の血流が広がってしまいます。体全体の血流循環が悪くなるので、こういった場合でも起こりやすくなります。水分補給を忘れずにしてください」(山王先生)

■対応策1:症状が出た場合は、すぐに横になること

「迷走神経反射」が起こる場合、「気分が悪くなる」「吐き気がする」「あくびが出る」「急に眠くなる」「目の前が真っ白になる(視界が少しずつぼやけていく)」などの症状が見られるので、よくこの症状に陥る人は注意が必要。

また、「過呼吸気味になる」「手足がしびれる」などの症状が見られることもあるようです。

「これらの症状を感じたら、パニック状態になることもあるかもしれませんが、なるべく早く安全に休めるところに移動して、横になるか、座るなど、体が休める状態にしましょう。数分で症状は回復すると思います」(山王先生)

■対応策2:手足を動かし、血流を促進させること

他には、手をギュッと握ったり、足首を動かしたり、足を踏みしめて力を入れてみることも、血流が促進され、脳へ血液が流れるので有効。

また、下痢の症状があるときは、お腹をさすったり、温めるのもよいそうです。

「特に大事なのが、我慢をしないことです。なので、体が重たい、気分がすぐれないときは、外出を控えることも検討してください。また、朝のラッシュも無理をせずに通勤時間をずらしたり、気分が悪くなりそうだったらすぐ降りて休んでくださいね。

外出先でも家の中でもそうですが、我慢をし続けて失神するまでに至ってしまうと、転倒して大きなケガをする恐れもあるので、十分に注意が必要です」(山王先生)

■対応策3:日常的な規則正しい生活習慣で予防できる

たんぱく質、ビタミンを積極的に摂ろう
たんぱく質、ビタミンを積極的に摂ろう

「迷走神経反射は、低血圧や貧血の人がなりやすい傾向があります。そのため、朝や生理中は要注意です」(山王先生)

とはいえ、「迷走神経反射」は突然起こるものなので、日頃から予防をするのがいいでしょう。下記のことを心がけていると起こりにくいそうです。

・朝ごはんをしっかり食べ、たんぱく質、ビタミンを摂る。
・十分な睡眠をとる。
・スクワットなどの足腰の筋トレをする。
・お酒を飲み過ぎない。
・予定をつめこみすぎない。適度な休息をとる。
・注射などの痛みに弱い人は、事前に医者に相談を。

「迷走神経反射自体は痛みがあったり、命の危険を及ぼすわけではありません。しかし、失神を繰り返すことがあると、心臓の病気や不整脈など、他の病気が原因のこともあるので、気になる方は、なるべく早めに内科や総合内科に受診してくださいね」(山王先生)


今までに原因不明の失神、耐えられないほどの腹痛で倒れてしまったなどの経験がある方、もしかすると「迷走神経反射」が起こったのかもしれません。こちらで紹介した症状に心当たりがある方も要注意です。

ぜひ規則正しい生活と適度な休息で、予防を心がけてくださいね。

山王直子さん
脳神経外科医、内科医
(さんのうなおこ)『山王クリニック品川』院長。横浜市立大卒業後、アメリカのメイヨークリニックに留学、脳下垂体の研究で博士号取得。日本医科大学脳神経外科学講師、日本医科大学付属多摩永山病院の脳外科部長などを務めたのち、2004年、東京都港区に『山王クリニック品川」を開院。日本脳神経外科学会専門医・評議員、日本頭痛学会頭痛専門医、日本内分泌学会代議員、日本医師会認定健康スポーツ医。日本間脳下垂体腫瘍学会、日本内分泌病理学会の各会員。著書に『メタボリックシンドロームは誰にでも克服できる!』『アンチエイジングのための女性ホルモンクリニックーこれからの肌・からだ・心のケアー』など。
山王クリニック品川
この記事の執筆者
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WRITING :
宮平なつき
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