歴史的建築物を活用し、その土地の生活や文化を次の100年へ継続していく、をコンセプトとしたプロジェクト「NIPPONIA(ニッポニア)」。

江戸時代から和紙産業で栄えた「美濃市」に、築100年以上の古民家を改修した高級宿泊施設「NIPPONIA美濃商家町」が登場。風情ある宿の魅力をお伝えします!

「うだつの上がる」町、美濃

防火壁としての役割から、繁栄を象徴する装飾となった「うだつ」
防火壁としての役割から、繁栄を象徴する装飾となった「うだつ」

「パッとしない」「出世しない」などの意味をもつ「うだつが上がらない」という慣用句。

この言葉の元になったといわれているのが「うだつ」。かつて、町屋を立てる際に、隣家との間に防火のためにつくられた壁のことです。その防火のためのうだつが、いつの間にか、うだつが高いことが、その家の繁栄を表すようになりました。

過度に観光向けにしすぎず、大人好みに落ち着いた街並みが大切に保存されています
過度に観光向けにしすぎず、大人好みに落ち着いた街並みが大切に保存されています

美濃市では、このうだつの上がる町並みが、重要伝統的建造物群保存地区として残されており、当時の技術や芸術性の高さを、今も味わうことができるのです。

かつての商家の贅沢な家や蔵が、宿泊施設としてオープン

美しいたたずまいで迎えてくれる、NIPPONIA美濃商家の入り口。正面の建物は、全長25mの和紙の原料蔵
美しいたたずまいで迎えてくれる、NIPPONIA美濃商家の入り口。正面の建物は、全長25mの和紙の原料蔵

うだつの上がる町並みの中に、2019年7月にオープンした「NIPPONIA美濃商家町」。

明治後期から大正初期に建てられたと言われる邸宅は、和紙の原料問屋を営み、美濃市長をも務めたことのある主人が、来賓をもてなすために建築した、商いの場を兼ねた隠居家でした。

主家と4つの蔵を、全6室の宿泊施設と、テナントエリアとして開発しています。

和紙のコンセプトショップ「Washi-nary」は和紙の原紙に特化したコンセプトショップ。
和紙のコンセプトショップ「Washi-nary」は和紙の原紙に特化したコンセプトショップ。

入り口すぐのテナントは、和紙のコンセプトショップ「Washi-nary」。

「Washi-nary」の運営を行う辻 晃一さんは、この「Washi-nary」で壁紙やアートなど、和紙の新しい利用法について提案や発信をしていく予定だそう。もちろん、珍しい和紙を購入することもできます。

美濃和紙メーカー丸重企業製紙組合の3代目理事、辻 晃一さん。右の机には、岐阜を象徴する長良川の支流である、板取川をイメージした装飾が施されています
美濃和紙メーカー丸重企業製紙組合の3代目理事、辻 晃一さん。右の机には、岐阜を象徴する長良川の支流である、板取川をイメージした装飾が施されています

壁紙やアート、和紙があちこちに配された部屋

大胆にあしらわれた和紙アート作品。あくまでも元の部屋の雰囲気を損ねず、美しさと迫力を増しています
大胆にあしらわれた和紙アート作品。あくまでも元の部屋の雰囲気を損ねず、美しさと迫力を増しています

6室ある部屋は、それぞれ元の建物の特徴をいかし、改修したもの。部屋のあちこちには、美濃和紙を使用した壁紙やアートが飾られつつも、当時の邸宅や蔵の風情を残した姿が心に安らぎをもたらすよう。

さり気ない装飾にこだわったしつらえ。この部屋は茶室もあり、静かでゆったりとした、くつろぎの時間を味わえます
さり気ない装飾にこだわったしつらえ。この部屋は茶室もあり、静かでゆったりとした、くつろぎの時間を味わえます

「24時間、フルサービスで利便性を追求したようなホテルとは、少し趣が違います。古くから大切に残されてきた街並みと、その中に現存する歴史的建造物に滞在する楽しみを、味わっていただければと思います」と辻さん。

中庭を眺めることができる、縁側も
中庭を眺めることができる、縁側も

金庫蔵の中に部屋が! 圧倒的なインパクトに驚き

別の棟へ移動する通路ひとつとっても情緒たっぷり
別の棟へ移動する通路ひとつとっても情緒たっぷり

別の棟に移動すると、そこに鎮座するのは金庫蔵。見るからに重厚な扉の奥には、まるでコラージュしたかのような、スタイリッシュな空間が広がっています。

かつて蔵をまるごと金庫にしていたという豪快さ、そしてそれをまるっと宿泊施設にしたという、ダブルのインパクト
かつて蔵をまるごと金庫にしていたという豪快さ、そしてそれをまるっと宿泊施設にしたという、ダブルのインパクト

当時使われていた檜の収納棚はそのまま残してあり、2階は就寝スペースに。蔵まるごと金庫というスケールの大きさを楽しむことができます。

中は驚きのスタイリッシュ空間。壁や灯り、細部に美濃和紙をあしらっています
中は驚きのスタイリッシュ空間。壁や灯り、細部に美濃和紙をあしらっています
2階は就寝スペース。当時の金庫の収納棚も残されています。
2階は就寝スペース。当時の金庫の収納棚も残されています。

古民家を再利用した建物は数多くあれど、もとあった形をいかし、まるっと趣とバラエティに富んだ宿泊施設に利用しているところは、全国でそう多くはありません。

和紙の町として栄えた時代の面影を宿す、かつてのお屋敷の贅沢なつくりを堪能できる「NIPPONIA美濃商家町」。

滞在することそのものが旅の目的になるような、ぜひ一度訪れていただきたい、おすすめスポットです。

NIPPONIA美濃商家町 の詳細・Web予約はこちら >>

問い合わせ先

関連記事

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
EDIT&WRITING :
安念美和子