東京をはじめ、各地で「畑」と直結したレストランが話題です。その土地で採れた、その土地ならではの新鮮な食材を真剣に愛する料理人と、彼らが手がける究極のひと皿。土地の魅力が詰まった究極の一皿に出会うべく、訪れる価値のあるレストランをご案内します。
奈良の食材でつむぐ料理に土地ならではの味や季節、生産者の想いをのせて。日本のモダンスパニッシュを代表する気鋭の一軒「アコルドゥ」(奈良県・東大寺旧境内跡地)
つくり手の想いや風土を感じるひと皿を
店名の「アコルドゥ」とはスペイン・バスク語で「記憶」の意味。
「僕の料理は、自分の記憶を綴った自叙伝のようなものだと思っています。料理って、味はもちろん、香りや温度、音など、記憶を呼び覚ます力がありますよね。
同じように、食材には、その土地ならではの香りや風味があって、さらには生産者が人生をかけてつくっている想いがある。食べる人が、その人自身の記憶と重ね合わせながら、料理や食材の背景も一緒に味わってもらえたらうれしいです」と川島シェフ。
奈良に店を構えて10年。つきあいのある生産者は増え、どんな想いでどんなふうにつくっているかを知っているからこそ、自由に料理ができる、と川島さんは言います。
「『こうあるべき』という型がしっかりとあるフランス料理に対して、バスク地方で学んだスペイン料理はとても自由。同じサラダでも毎日、味が違うんですよ(笑)。
朝、畑で採ってきたハーブや野菜を使うので、日によって素材の味は違うわけで、当然といえば当然。そんなふうに、自分たちの土地や環境、素材を大切にしながら、皿の中に投影する、バスクの料理人の姿勢に感動したんです」
明確な料理名はなく、あえて詳しい料理の解説もしないのが川島流。
「奈良には、野菜はもちろん、肉や米など独特の哲学をもった生産者が多く、つねに刺激を受けています。風土や歴史、想い、季節感を盛り込み、記憶に残るひと皿を追求したい。ぜひ、五感で楽しんでください」
食感や香りが一枚一枚違う! 「米とベビーリーフ やわらかなハーブ 循環し、巡る秋」
料理名は「米とベビーリーフ やわらかなハーブ 循環し、巡る秋」。米はチーズと塩だけでリゾットに。その上に透明シート状のトマトのジュレをのせて酸味を加え、米の甘みを引き立てる。10種以上の葉物やハーブで豊かな香りと食感を体感!
多品種少量生産農家ならではの、きめ細やかな味と香り
シェフと農家が二人三脚で作り上げる「いちじく、鴨 無花果と鴨 土の香り。木に実るものと足元にあるもの」
「いちじく、鴨 無花果と鴨 土の香り。木に実るものと足元にあるもの」という料理名のとおり、秋の大地を食らうイメージだとか。塩をふり低温でじっくり焼いた野性味あふれる鴨と、少し炙ったさわやかなイチジクの相性は抜群。根だけ揚げたプルピエとビーツのジェラートも力強い大地の味。
シェフが農家を育て、農家がシェフを育てながら進化する関係
大和郡山市で農園を営む中西拓彦(なかにしひらひこ)さんは、5月~7月が旬の大和丸なすほか、イチジクを生産。
「シェフとはオープン以来のつきあい。『完熟よりも、若いイチジクのほうが料理の幅が広がる』というのは料理人ならではの視点。学びが多いです」
ルッコラの鮮やかなグリーンが眩しい「ルコラと黒ごまの料理 金胡麻とルッコラ、カカオのタルト分解し繋がる奥行きの香り」
デザートは「ルコラと黒ごまの料理 金胡麻とルッコラ、カカオのタルト分解し繋がる奥行きの香り」。秋が旬の奈良の金ごまのコクと香り、さっぱりとしながらもエグみを感じるルッコラのソースの組み合わせは絶品。クセになります。
問い合わせ先
- アコルドゥ
- 営業時間/12:00~15:30(L.O.13:00)、18:00~22:00(L.O.19:00) 月曜休み(不定休あり)
- メニュー/ランチコース¥6,500~、ディナーコース¥13,000~(税・サービス料別)※要予約。写真の料理はディナーコースより。2020年にはカフェをオープン予定。
- TEL:0742-77-2525
- 住所/奈良県奈良市水門町70-1-3-1
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- PHOTO :
- 中嶋大助
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、佐藤友貴絵(Precious)