ファッションの流行やマインドの変化と密接に関係する下着の歴史。「下着の歴史は女性の歴史」と語るランジェリーライターの川原さんが、4回にわたり下着の歴史を紹介しながら、その変容の行方を探ります。
最終回となる今回は、まだ記憶に新しい2010年代を振り返ります。自ら体を愛し、美しさの基準は自分自身が決めるボディポジティブの時代へと大きくマインドが変わった2010年代は、下着の選択肢も一気に広がりました。
第一回【日本の下着文化は戦後に変容!体型をより美しく見せたいという願望から西洋化がスタート】
第二回【1990年代は「寄せて上げるブラ」が大流行!女性達が自らのボディーをアピールすることに目覚めた、あの時代】
第三回【2000年代はライフスタイルもファッションも下着も多様化!ブラジャーは個々の機能と魅力を発揮】
震災後に変化した価値観。ボディーポジティブの時代へと突入した2010年代
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が米国人の心を大きく揺さぶり、その価値観を変えたように、2011年3月11日の東日本大震災は、私達日本人の心にも生活にも大きな影響を与えました。
そのひとつが、地球環境への関心の高まり。エシカルやサステナビリティーを意識したライフスタイルが確実に広がり始めます。地震後の余震が続く中、急な避難に備えて人々は、カップ付きインナーやカップ付きネグリジェ(ワンピース)を買い求めました。
楽なのにバストメイク機能も装備!ブラジャーの新カテゴリー「サードウェーブブラ」誕生
■2011年:スタイリッシュな補整下着「シェイプウエア」登場
その頃、海外ではスタイリッシュな補整下着「シェイプウエア」の人気が高まります。
それ以前の補整下着は「くずれてしまった体型を窮屈な下着で締めるもの」というイメージがありましたが、素材が進化したことで、快適な着心地と機能性を兼ね備えたモダンなデザインの補整下着が実現。それを「シェイプウエア」と呼ぶようになります。それは、自らのボディを「補整する」というより「より美しく見せるため」の下着。女性達の高い美意識を応援するものといえます。
そんなグローバルな流れを受け、2011年にトリンプ・インターナショナル・ジャパン(以下、トリンプ)から「シェイプセンセーション」シリーズが発表されます。
■2013年:まるで着けていないようなフィット感「きもちよすぎー。スロギー!」
そして2013年には、当時下着業界に広がっていた接着技術を駆使した、画期的な商品が誕生します。それが「スロギー ゼロフィール」です。
伸縮性に富んだ薄手の素材を、縫製ではなく接着して作られたその商品は「きもちよすぎー。スロギー!」のキャッチコピー通り、まるで着けていないような心地良さ。もともと「スロギー」は1979年に海外で誕生したブランドで様々なデザインが売られていますが、日本で開発された「スロギー ゼロフィール」は2020年2月末までにシリーズ累計760万枚を販売する人気に。この頃から、女性達はボディを解放しブラジャーにも心地良さを強く求めるようになります。
■2016年:最新の素材と技術で生まれた新カテゴリー「サードウェーブブラ」
そんな流れの中、2016年には、新たなブラジャーのカテゴリーといえる「サードウェーブブラ」が市場に広がります。
「サードウェーブブラ」とは、ワイヤー入りブラのバストメイク力とノンワイヤーブラの楽さを兼ね備えたもの。ワイヤーは入っていないのですが、カップの中にワイヤーに変わるシート状の物を入れたり、カップの形状やパターンを工夫したりしてバストメイク力を付加しています。その先駆けとなったのが、2015年春にトリンプから発売された「ワンダーメイクブラ」です。
そして2016年春にはワコールから「スハダ」、ユニクロから「ワイヤレスブラ」が発売され、他社からも工夫を凝らした「サードウェーブブラ」が続々と登場します。
2017年になると、海外で「ブラレット」がブームとなり日本でも人気に。
ブラレットの定義は定かではありませんが、S・M・L展開のおしゃれなノンワイヤーブラといったところ。着け心地が楽なブラジャーを求める動きは世界共通だったことがわかります。
この頃から欧米で聞かれるようになったのが、「ボディーポジティブ」という言葉。
「知らない誰かが決めた理想のボディを押し付けられ、それを目指すなんて無意味。美しさの基準は人それぞれ、自分の体型と個性に自信を持って」そんなメッゼージがこの言葉には込められています。もちろん、その背景には、「#MeToo」運動が活発になり、女性達が自らの意思をはっきりと主張するフェミニズムのムーブメント、多様性を認めるダイバーシティの流れがあることはご承知の通りです。
その結果、下着ブランドは広告ビジュアルなどに現実離れしたスタイルのモデルではなく、消費者に近い体型のリアルサイズモデルを起用するように。
日本ではピーチ・ジョンが2019年6月にSNSを通じてリアルサイズモデルを募集。約600名が応募して13名を選出し、彼女達は様々な場面で活躍しています。
これからの2020年代は、素材や技術がさらに進化し、デザインも機能も多様化して下着の選択肢は今以上に増えるはず。谷間を強調したバスト、ありのままのナチュラルシルエットのバスト、その中間の程々に盛ったバスト…なりたいバストに合わせてブラジャーを選べる今だからこそ、自身の体を愛し、「私ファースト」で下着を選ぶことが大切になるのではないでしょうか。
4回にわたり、下着の歴史を紹介してまいりましたが、いかがでしたか? あなたの思い出に残る時代はいつでしたか?
「下着の歴史は女性の歴史」。あなたの歴史を彩る下着を、どうぞあなたの意思で選んでくださいね。
※掲載の商品の価格はすべて税抜きです。
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- TEXT :
- 川原好恵さん ランジェリーライター
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- WRITING :
- 川原好恵
- EDIT :
- 石原あや乃