KRUG最高醸造責任者ジュリー・カヴィルさんが働くメゾンの歴史とエスプリを継承する場所

「一歩足を踏み入れるとメゾンが語りかけてきます。歴史を受け継ぎながら挑戦する。私の役割を再確認させてくれます」
シャンパーニュ地方の中心地、ランス。老舗メゾン「KRUG」の初代創業者、ヨーゼフ・クリュッグがヨーロッパ中を旅した末、1848年に居を構えたのがその始まりです。当時はまだ野原だったこの場所にシャンパン工房と住居を建築。その後、2代目、3代目が隣接する建物を買い取り規模を拡大しました。現在、この地で働くジュリーさんは2020年1月、女性初のシェフ・ド・カーヴ(最高醸造責任者)に就任。
「主な仕事場は、ブドウ畑や地下のカーヴ、デスクがあるライブラリーです。敷地内には、ゲストの方をもてなすサロンや離れの瞑想ルームなどもあり、メゾンの世界観を体感できると同時に、長い歴史とエスプリを継承する場所でもあります」




とりわけ「サル・デ・キャトルソン・ヴァン(400本のワインという意味)」名付けられたテイスティングルームは大切な空間です。
「メンバーたちと真剣にテイスティングを行い、究極の味を探求します。壁一面に配されたボトルはコンテンポラリーアートのようで、音楽を聴きながらイマジネーションをふくらませます。シャンパンづくりはオーケストラの演奏に似ています。各楽器が調和してひとつの音楽となるように、シャンパンも土壌、ブドウ、天候、つくり手によって毎年の味が違う。
それらをどんな割合で配合させるか。半年後、7年後の風味をイメージしながら、アッサンブラージュする=クリエイションすることは、まさにオーケストラと同じ。キャラクターの強いワインを合わせて、色、香り、味、すべてが調和する瞬間こそが、仕事の醍醐味です」

30年以上使用されている古い小樽に入れ、低温で長期発酵させることでほかのシャンパンにはない複雑でダイナミックな味わいが生まれることから「交響曲」と異名をとるシャンパーニュ「KRUG」。また、館内のインテリアも「ミュージカル」がテーマ。素材や色合わせ、古きよきものとモダンなアートなど多彩なエレメントを調和させた趣のあるミックススタイルです。




「一歩足を踏み入れると、メゾンが語りかけてきます。歴史、リュクスの本質、エレガントなディテール。メゾンのヘリテージを継承しながら、モダンなアプローチへの挑戦…。私の役割がなんなのか、再確認させてくれるのです。




とくに、館内にある歴代当主や家族、シェフ・ド・カーヴの写真は、私に勇気をくれます。かつて、戦争でランスの街が焼け野原になったとき、創設者ヨーゼフ・クリュッグの孫、ヨーゼフIIの妻ジャンヌ・クリュッグは女手ひとつでブドウを育て、シャンパンづくりを再開、メゾンを存続させました。彼女の写真を見るたびに『KRUG』の強さを感じ、インスピレーションがあふれてくるのです」





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- PHOTO :
- 篠 あゆみ
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、古里典子(Precious)