日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。
今回ご紹介いただくのは、金属加工の高い技術で世界的にも注目される新潟県・燕市で活躍する中野科学の自社ブランド「As it is」から生まれたカトラリー「SUGATA」です。
近年、モダンなデザインのカトラリーの人気が高まっていますが、「SUGATA」はまさにその究極形ともいえる逸品。研ぎ澄まされたフォルムの美しさだけでなく、「お箸のようなカトラリー」を目指し、サイズ感、口当たりの感触、重心のバランスなどあらゆる角度から使い心地のよさを突き詰めているのだそう。
また、その色も実に独特。世界で中野科学だけが行えるという特殊な表面処理などによって、ほかにはない「白」と「黒」が実現されています。
2021年4月のデビューを待ち望んでいたという河井さんに、その魅力を詳しく教えていただきました。
世界が認める「金物の町」、燕三条エリアの技術力
「新潟県の燕市と三条市を合わせた“燕三条”地域では、古くから金属加工が盛んに行われ、包丁や爪切りといった刃物や、鍋やフライパンをはじめとするキッチン用品など、さまざまな金属製品が生み出される『金物の町』として知られています。
特に燕市ではスプーンやフォークなどの洋食器を中心に金属加工が発達。その技術の高さは世界的にも認められていて、ノーベル賞授賞式の晩餐会で使用されているカトラリーも燕市のメーカー、山崎金属工業が作り上げたものだそうです。
そんな燕市で活躍する会社のひとつが、今回ご紹介するカトラリー『SUGATA』を作り上げた中野科学です。
彼らが専門としているのは、電気や薬品などの科学的な力を用いた金属の表面処理。たとえば職人が手で磨く方法とは違った技術で研磨したり、酸化発色により表面に色がついたかのように見せる加工を行っています」
「そして2017年、自分たちがこれまで培ってきた表面処理技術と、燕三条地域の金属製品を作り上げる高い技術を、製品を通してたくさんの方に感じてもらいたいという想いをこめて、自社ブランド『As it is』をスタート。『SUGATA』はその最新シリーズです」
日本人が慣れ親しんできた「お箸」感覚で使えるカトラリーを
「そんな『SUGATA』の開発に携わったのが、知人でもある鶴本晶子さん。2007年に燕三条のテーブルウエアブランド「SUSgallery」を立ち上げ、企画開発からマーケティング、ブランディングを行ってきたほか、日本のものづくりの伝統や町工場の技術を世界に通用するブランドに昇華させる取り組みを数多く手がけてきた方です。
ライフスタイルの中で“食”を大切に考えている鶴本さんが、『素敵なカトラリーがないな』と感じたことから、中野科学とともに企画をスタートしたそうです。
これまで西洋文化で発展してきた装飾的なカトラリーとはまったく違う文脈で、“お箸の文化”をもつ日本人に寄り添うデザインを追求。持ちやすさや食べ心地など、お箸の感覚をふくらませてカトラリーに表現するとどんなデザインになるのかを、3年近く試行錯誤を重ねて作り上げました」
「2021年4月に『SUGATA』がデビューする少し前に鶴本さんからこのプロジェクトについて話をうかがって以来、私も完成を待ちわびていたので、実際に目にしたときには本当にうれしかったのを覚えています」
計算しつくされたバランスが導く、極上の使い心地
「中野科学は金属の表面処理を担う会社なので、ベースとなる本体は別の会社が作ることになります。それを手がけたのは、先述したノーベル賞授賞式の晩餐会で使われているカトラリーを製作している山崎金属工業。日本最高峰のカトラリーメーカーと言ってもいいでしょう。
これまで山崎工業が世に送り出してきた多くの製品を実際に試しながら、“お箸のようなカトラリー”のイメージを形にしていったそうです。
たとえばスプーンなら、男性でも女性でも無理に大きく口を開けずともすっと口の中に入り、そして出ていく…必要最低限の自然な動作で使える皿部分のサイズや形状であると同時に、ちゃんとスプーンの上にものや液体が乗るための大きさや深さ、角度などさまざまな相反するバランスのせめぎ合いがそこにはありました」
「“そぎ落とし、そぎ落とし、あらわれた姿”というキャッチフレーズが示すとおり、スプーン、フォーク、ナイフそれぞれが繊細かつ洗練されたフォルムに仕上げられています。これは、洋食器にも和食器にも、どんな食事とも合うテイストを目指したもの。また、究極のシンプルさでありながら、大きさ、フォルム、角度、重さなど細部まで“使いやすさ”を追求したデザインでもあります。
柄の太さもそのひとつ。一見するとどれも同じように見えますが、実は少しずつ角度や重心が違っていて、実際に使ったときにいちばん心地いい感覚が検証されているのです。
使いやすさは、使う姿の美しさにもつながります。『SUGATA』はそのもののデザインとともに、毎日の食事シーンを美しく彩ってくれるアイテムだと思います」
ほかにはない「シルキーな白」と「艶やかで渋いブラック」
「中野科学の技術力により、色合いと質感にもほかに類を見ないオリジナリティが存分に表れているのが『SUGATA』のもうひとつの魅力。まず何より、塗装やコーティングをまったく行っておらず、素材となるステンレスのままであるということに驚かされます。
ホワイトは、中野科学独自の手法を用いたマット処理を採用。表面を加工することで、光の反射などいろいろな要素が絡み合って白く見えているのです。その質感はシルキーで、一般的な鏡面仕上げのものとは違う口当たりの心地よさを感じられます。もともとはカトラリーに使う技術ではなかったそうなのですが、これによりこれまでのカトラリーにはない仕上がりが実現しました」
「ブラックは、もともとステンレスにある酸化膜の厚さを変え、光の反射が変化することで見える色です。輝きがありながらも渋さのある色合いで、海外のトップシェフからも高い関心を集めたといいます」
「ホワイトとブラックのいずれも上から何かを付け加えていないので、傷などをきっかけにはがれることはありません。見た目の素敵さだけでなく、贈り物にふさわしい安全性や安心感の高い製品でもあるという点でも、『SUGATA』は自信をもっておすすめできますね」
パッケージまでもモダン!「SUGATA」のカトラリー
スプーンとフォークは“お箸感覚”で自然に口元に出し入れできるサイズ感。ナイフは華奢な見た目ながら刃付けが施されているので、無理に力を入れずともすっと切れる仕上がりです。
“そぎ落とした美しさ”はパッケージにも反映され、シンプルモダンなデザインに。
今回は、新潟県・燕市のメーカーが手がけたモダンなカトラリー「SUGATA」をご紹介しました。
生活に身近な実用品で、引っ越しや結婚祝いなどのギフト候補になりうるものの、意外とどこで探せばいいのか決め手に欠けるカトラリー。このアイテムなら、きっと喜んでもらえるのではないでしょうか。また、新しい季節に向けてライフスタイルに新しい風を吹かせるための、自分への贈り物にするのも素敵です。
※掲載した商品の価格はすべて税込みで、記事公開時のものです。
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- EDIT&WRITING :
- 谷 花生