日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。

今回ご紹介いただくのは、輪島塗の伝統技術を守りながらも、新たなスタイルや分野への挑戦を続けている「輪島キリモト」の漆器です。

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「輪島キリモト」が展開する、蒔地仕上げの『すぎ椀』と『ぐい呑み』

数ある中から河井さんがセレクトしたのは、蒔地(まきじ)と呼ばれる伝統技法を独自に応用した「すぎ椀」と「ぐい呑み」の2種。漆器としては珍しいナチュラルなアースカラーをまとったアイテムの魅力を教えていただきます。

河井真奈さん
スタイリスト
(かわい まな)女性誌、CM、ドラマのスタイリング、トークショー、商品開発アドバイザーなど幅広く活躍。2016年、ギフトに特化したWEBサイト「futo」をローンチし、2019年6月には初の実店舗を南青山にオープン。著書に『絶対 美人アイテム100』(文藝春秋)、『服を整理すれば、部屋の8割は片付く』(立東舎)。https://futo.jp/

200年以上「木」と「漆」に携わってきた伝統の先にある新たな挑戦

「みなさんご存知のとおり、輪島塗といえば日本を代表する漆器のひとつ。石川県の能登半島に位置する輪島は、木地となる木材や良質な珪藻土が豊富に産出されるとともに、湿度の高い気候が製造に適していることから、江戸時代より漆器業が盛んに行われてきました。

珪藻土を混ぜた下地を何層にも塗り重ねる技法による強度の高さと、沈金や蒔絵の優美な装飾でも知られています。

今回ご紹介する『輪島キリモト』を営む桐本家は、江戸時代後期から約200年以上、七代にわたりこの地で木や漆の仕事に携わってきました」

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「輪島キリモト」の工房

「輪島漆器の製造販売からスタートした桐本家は、昭和のはじめより木地の製作に専念し、特殊木地や家具全般も手がける設備まで整えました。そして2015年、七代目となる現当主の桐本泰一さんのもと、『輪島キリモト』に屋号を変えます。

大学でプロダクトデザインを専攻し、企業でオフィスプランニングに携わった後に帰郷した泰一さんは、木地業の修行を経て、輪島塗の伝統を新たな形で開花させる漆器造形デザインを提案。器はもちろん小物や家具、ホテルのカウンターや壁在のような建築内装材に至るまで、木と漆が現代の暮らしに溶け込むようなもの作りに挑戦し続けています。

その姿勢が色濃く映し出された作品のひとつが、蒔地仕上げの『すぎ椀』と『ぐい呑み』なのです」

受け継がれてきた技法を新たな魅力へと一新させる“蒔地仕上げ”

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蒔地仕上げの「ぐい呑み」と「すぎ椀」

「輪島キリモトの“蒔地仕上げ”は、これまでにもあった下地の蒔地技法を独自に応用したもの。天然木の木地に漆で布を貼り付ける“布着せ”を行い、下地を施した後に、表面に近い部分でもう一度『輪島地の粉』を使ってさらに漆を塗り重ねて仕上げています」

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“布着せ”の作業風景
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下地を塗り重ねていく様子

「これによって表面硬度がいっそう高まり、摩擦に強く、金属のスプーンなどを使っても傷がつきにくいというのが特徴です。一般的な漆器には類を見ない少しざらっとした柔らかみのある質感は、手にしたときに心地よく、また陶器には出せない温かさがあります」

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蒔地仕上げが施されることで、独特の質感が生まれた「すぎ椀」

使うシーンの幅が広がる、モダンなフォルムとシックな色合い

「汁椀といえば丸みのある形状が定番ですが、輪島キリモトを代表的するスタイルである『すぎ椀』は、和洋問わずに料理が映えるすっきりと鋭角的なフォルム。逆さにすると杉の木のてっぺんの形に似ていることから名付けられたそうです。ころんとした『ぐい呑み』は、豆鉢としても活躍してくれます」

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あんみつを盛り付けた白の「すぎ椀」

「そして何より私が惹かれたのは、そのカラーリング。独特のナチュラルなアースカラーがとても新鮮で、和食以外のメニューや食器とも違和感なくなじむから、使い勝手が抜群にいいのです。

赤みのある色合いの『ベンガラ(弁柄)』と、こげ茶色の『うるみ』は漆の伝統的な色合いですが、マットに仕上げられていることで従来のものとは違ったシックなニュアンスが生まれています。

私が個人的にお気に入りの『白』と『グレー』は、深みのある表情が実に秀逸! 漆器とは思えないモダンさで、ひと目で虜になりました」

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4色並べた「ぐい呑み」。手前左から「ベンガラ」と「グレー」、奥左から「うるみ」と「白」

「塗りに厚みがあるため、見た目には重厚感があるものの、そこはやはり漆器。軽量かつ割れにくいという点でも、扱いが楽なのがいいですよね。傷がつきにくく仕上げられているから、重ねて収納するのも気軽にできます。

また、漆器は乾燥が大敵なので、大事にしまい込んでおくのではなく、日々使って水で洗うことが状態をキープするメンテナンスにつながります。もし傷がついたり、欠けてしまった場合も修理できるから安心。さまざまな面で、普段使いにぴったりのアイテムと言えるのではないでしょうか。

さらに、そうやって使い込んでいくほどに味わいが増していくのが漆器ならではの魅力でもあります。蒔地独特のざらっとした質感も、少しずつなめらかになっていき、全体的に艶が増して色も明るくなっていくそうなので、私もこれから育てていくのが楽しみです」

色違いで揃えたくなる、「輪島キリモト」の蒔地仕上げ2選

■1:すっきりとシャープな「すぎ椀」

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「すぎ椀」(ベンガラ、うるみ、白、グレー)各¥22,000【木地:ケヤキ サイズ:直径116×高さ83mm(約400ml)】

■2:ころんと愛らしい「ぐい呑み」

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「ぐい呑み」(ベンガラ、うるみ、白、グレー)各¥11,000【木地:ホオ サイズ:直径60×高さ37mm(約55ml)】

詳しくはこちらから

河井さんセレクトの職人技に触れるイベントを開催

これまでPrecious.jpでご紹介してきたプロダクトなど、河井さんが惚れ込んだ職人技が光る品々の展示販売会が開催されます。全11ブランドが参加予定。日本各地で育まれ、さらなる進化を目指すクラフツマンシップの魅力を確かめられる機会をお見逃しなく。

<イベント概要>

  • 「求める職人技」 
    会場/しろがねgallery
    期間/2021年10月15日(金)~10月20日(水)
    開催時間/11:00~19:00 (最終日は16:00終了)
    住所/東京都三鷹市下連雀3-29-1
    TEL:0422-43-3777
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今回は、木と漆の新たな可能性を追求する「輪島キリモト」から、独自の手法を凝らした2種類の器をご紹介しました。

特別なときだけに使うのではない、毎日の生活に寄り添う伝統工芸品は、日常を豊かに彩ってくれます。家で食卓を囲むことが多くなった今だからこそ、大切な人への贈り物として、あるいは自分へのご褒美に選んでみてはいかがでしょうか。

※掲載した商品の価格はすべて税込みで、記事公開時のものです。

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

Gift Concierge futo

TEL:03-3462-2036

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EDIT&WRITING :
谷 花生