夏旅といえばリゾートが定番ですが、新たな体験を求めている人におすすめなのが、温泉付きのオーベルジュ。オーベルジュとは、宿泊施設を備えたレストランのこと。温泉付きのオーベルジュでは、シェフがその土地の食材を使って腕を振るう美食に感動しつつ、心と体を解きほぐす名湯も満喫できてしまいます。

いわゆる温泉旅館とは一線を画す、夢のような滞在を叶えてくれる名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。

今回ご紹介するのは、山形県南陽市にある「オステリア・シンチェリータ(OSTERIA SINCERITÀ)」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

ミシュラン星付きシェフの絶品イタリアンに夜も朝も感動

JR山形新幹線「赤湯駅」より車で5分。赤湯温泉の老舗旅館「山形座 瀧波」の一角に、2023年春、1日3組限定の温泉付きオーベルジュ「オステリア・シンチェリータ」がオープンしました。料理長は、新潟県三条市でミシュラン1つ星レストランを営んでいた原田誠シェフ。「シンチェリータ」は、「誠実」「誠意」を表すイタリア語で、原田シェフの名前に由来します。

「オステリア・シンチェリータ」の玄関
隠れ家の入り口のような「オステリア・シンチェリータ」の玄関。

「開湯930余年の歴史を誇る赤湯温泉のなかでも、『山形座 瀧波』は湯遣いに格別のこだわりがあり、ホスピタリティに溢れる名旅館。その瀧波の別邸オーベルジュということで、予約段階から胸が弾みましたが、実際に訪れてみると食事、温泉、おもてなし…どこを切り取っても期待を上回るクオリティで、楽園気分を味わうことができました」(植竹さん)

ダイニング「スタンザ デラ シンチェリータ」
ダイニング「スタンザ デッラ シンチェリータ」。

「食事処の『Stanza della SINCERITÀ(スタンザ デッラ シンチェリータ)』は、天井が高く開放感のある空間。オープンキッチンを備えており、1日3組のゲストのためだけに、ミシュラン星付きシェフが目の前で調理してくれるのは、贅沢の極みです」(植竹さん)

「オステリア・シンチェリータ」の料理の一例
左上から時計回りに「雲丹のパスタ」、「アクアパッツァ」、「マッシュルームのオーブン焼き」、「ヒラメと雪菜」。※提供メニューは季節や仕入れ状況により異なります。

「夏のごちそうとして印象に残っているのは、三陸の雲丹。素材の魅力を最大限に引き出すようにシェフの創意工夫が凝らされており、私が訪問したときのメニューは、雲丹に帆立、つぶ貝を合わせて枝豆のエスプーマ仕立てにしたものでした。他の料理も一皿一皿がまるで芸術作品のようで、土地の食材とイタリアンが融合した美食コースに感動しきりです」(植竹さん)

「オステリア・シンチェリータ」の料理の一例
左上から時計回りに「米沢牛のステーキ」、「リゾット」、「白子とトピナン」、「ドルチェ」。※提供メニューは季節や仕入れ状況により異なります。

「朝食も、朝採り野菜のサラダ、米沢牛で作った山形名物の芋煮、黒澤ファームの日本一の米『夢ごこち』を土鍋で炊いたものなど逸品づくしで、原田シェフのこだわりが細部にまで行き届いています。

また、郷土料理である芋煮も、出汁が澄み切っていて五臓六腑にしみわたるような格別のおいしさ! 夕食の少し後に夜食のサービスもあり、美食三昧のステイを叶えることができました」(植竹さん)

「オステリア・シンチェリータ」の朝食の一例
朝食の一例。

地中から湧いたばかりの“十割源泉”を貸切風呂でひとり占め!

温泉は各部屋に設置されているほか、“湯室”と名付けられた貸切風呂がひとつ。客室でも貸切風呂でも、水で一滴も薄めない“十割源泉”の湯浴みを堪能できます。

貸切風呂
貸切風呂「湯室」。岩風呂と檜風呂の2つの浴槽を設置している。
貸切風呂に併設された畳の間
貸切風呂には畳の間を併設。

「神秘的なムードが漂う貸切風呂では、蔵王石をくり抜いた岩風呂の底面から、地中から湧いたばかりの源泉がポコポコと供給され湯の鮮度が抜群。湯温約42度の岩風呂と、約15度の檜風呂の2つがあり、あつ湯とぬる湯を行ったり来たりする温冷交互浴も癖になる気持ちよさです」(植竹さん)

植竹さんが宿泊した客室「ALBA(アルバ)」の露天風呂。
植竹さんが宿泊した客室「ALBA(アルバ)」の露天風呂。

「客室にも露天風呂が備えられており、温泉に入りたくなったらいつでも湯浴み三昧。こだわりの十割源泉の湯をひとり占めするのは至福のひとときです。私の宿泊した部屋にはサウナも付いており、じんわり発汗でデトックスしたり、セルフでロウリュも楽しんだりして、十二分に“ととのう”ことができました」(植竹さん)

客室「アルバ」のプライベートドライサウナ
客室「ALBA」のプライベートドライサウナ。

全3室が温泉露天風呂付き!別荘ライクな客室で優雅な旅時間を叶える

客室は「ALBA(アルバ)」、「MONTE(モンテ)」、「GRANO(グラーノ)」の全3室。3部屋とも135平米以上のメゾネットタイプで2ベッドルームと檜の温泉露天風呂を備えており、「ALBA」と「MONTE」の2部屋はプライベートサウナ付きです。

客室「ALBA」のリビングルーム。「ALBA」は“夜明け”を意味する言葉。
客室「ALBA」のリビングルーム。「ALBA」は“夜明け”を意味する言葉。
客室「アルバ」の書斎
客室「ALBA」の書斎。本棚も充実している。

客室に備えられた家具は、デンマークのフィン・ユールのデザイン。快適さを追求する北欧テイストを取り入れつつ、製作は山形県朝日町で行われており、メイドイン山形へのこだわりもうかがえます。

客室「MONTE」のリビングルーム。「MONTE」は“山”を意味する言葉。
客室「MONTE」のリビングルーム。「MONTE」は“山”を意味する言葉。
客室「GRANO」のリビングルーム。「GRANO」は“麦”を意味する言葉。
客室「GRANO」のリビングルーム。「GRANO」は“麦”を意味する言葉。
客室「GRANO」では美しい日本庭園を眺めることもできる。
客室「GRANO」では美しい日本庭園を眺めることもできる。

「三者三様それぞれ個性溢れるゲストルームはまるで別荘のよう。手厚いサービスとおもてなしに感動し、楽園のような非日常空間にて存分にリフレッシュできて、また明日から頑張ろう…と体の奥から自然と活力が湧いてきました」(植竹さん)


以上、「オステリア・シンチェリータ」をご紹介しました。ミシュラン星付きシェフが腕によりをかけた夏のごちそうに舌鼓を打ち、貸切・客室専用の温泉風呂で名湯に癒される…。そんなご褒美旅行を叶えたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)