【目次】
- 「えびす講」とは?読み方と意味、行事の由来
- 「えびす講」はいつ?10月・11月など地域による日程の違い
- えびす様はどんな神様?商売繁盛や豊漁を願う信仰
- 「えびす講」では何をする?神社と家庭での祝い方
- 「えびす講」のお供え物は?地域によって異なる食べ物や縁起物
- 「えびす講」と「十日えびす」「酉の市」の違いは?
【「えびす講」とは?読み方と意味、行事の由来】
■読み方
「えびす講」は、「恵比須講」「恵比寿講」「夷講」「戎講」など、いくつかの表記がありますが、どれも「えびすこう」と読みます。「えびす」といえば、釣りざおを持ち、大きな鯛を抱えた、にこやかな福の神を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
■意味
「えびす講」とは、七福神のひと柱である「えびす様」を祀り、商売繁盛や家内安全などを願う伝統行事です。
そもそも「講」とは、共通の信仰や目的をもつ人々が集まってつくる組織のこと。古くは仏教の経典を講じる集まりを指しましたが、やがて神社や寺院への参詣、地域の信仰などを目的とする集団にも使われるようになりました。
「えびす講」も、商家では同業者が集まってえびす様を祀り、農村では地域の人々が共同で祀ったり、それぞれの家庭で祝ったりする行事として受け継がれてきました。商売を営む人々にとっては商売繁盛を願う機会であり、農村では暮らしに福をもたらす神様を迎える行事でもあったのです。
■行事の由来
「えびす講」の由来には、旧暦10月の「神無月(かんなづき)」にまつわる伝承が関係しています。
古くから、旧暦10月には全国の神々が出雲に集まるため、各地では神様が不在になると伝えられてきました。ところが、えびす様は出雲へ出かけず、土地に残って人々を守る「留守神(るすがみ)」だとする言い伝えがあります。こうした言い伝えによって、ほかの神々が留守にする時期にも、えびす様を祀る理由が説明されてきたのです。
一方、えびす様も出雲へ出かけるものの、えびす講の前後だけ戻ってくるという伝承もあります。同じ行事でも、地域によって由来の説明が異なるのは興味深いところです。こうした伝承と、商人や農村の人々の信仰が結び付いて受け継がれてきたのが「えびす講」です。
【「えびす講」はいつ?10月・11月など地域による日程の違い】
■「えびす講」はいつ?
「えびす講」は、もともと旧暦10月20日に行われていた行事です。現在は10月20日、あるいは月遅れの11月20日に行う地域が多く、1月20日にも祝う地域があります。
■10月20日と11月20日、地域による違いは?
旧暦から新暦への移行によって日程が変わったことに加え、土地ごとの習わしもあるため、全国共通の開催日が決まっているわけではありません。
例えば、栃木県宇都宮市では、旧暦10月20日の行事を現在は11月20日に行い、1月20日にもえびす様を祀る風習が伝わっています。また、神奈川県伊勢原市にも、1月20日と11月20日の年2回、えびす講を祝う風習が伝わっています。市の文化財資料では、恵比寿・大黒を膳の上に祀り、御神酒や小豆飯、尾頭付きの魚などを供える習わしが紹介されています。
長野県長野市の西宮神社では、毎年11月18日から20日まで「えびす講」が行われ、商売繁盛や五穀豊穣などを祈願する人々でにぎわいます。これに合わせて始まった「長野えびす講煙火大会」は、晩秋の夜空を彩る花火大会として知られています。2026年の第120回大会は、11月23日(月・祝)に開催予定です。
ちなみに、関西では1月10日を中心に行われる「十日えびす」が有名です。同じえびす様を祀る行事でも、地域によって開催時期が異なるのですね。
【えびす様はどんな神様?商売繁盛や豊漁を願う信仰】
えびす様は七福神のなかで唯一、日本に由来する神様。ほかの6柱がインドや中国に由来するのに対し、えびす様は日本で生まれた信仰に基づく福の神なのです。ご存知でしたか?
■えびす様はどんな神様?
「えびす様」は、商売繁盛や豊漁をもたらす福の神として、古くから親しまれてきました。七福神のひとりで、釣りざおを手に鯛を抱えた姿でもおなじみです。
もともとは漁業に関わる神様として信仰され、海の向こうから福をもたらす神様とも考えられていました。やがて市場や商業の発展とともに、商売繁盛を願う人々からも厚く信仰されるようになったのです。
■「えびす様」には複数の由来がある?
実は、えびす様がどの神様にあたるのかについては、複数の説があります。
代表的なのが、日本神話に登場する「蛭子神(ひるこのかみ)」と「事代主神(ことしろぬしのかみ)」です。蛭子神は、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の間に生まれた神様。一方、事代主神は大国主神(おおくにぬしのかみ)の子で、国譲りの神話に登場します。
神社によって祀られている神様が異なるのも、えびす信仰の特徴です。
■商人たちにも広がった「えびす信仰」
海からもたらされる豊かな恵みは、人々の暮らしを支えるとともに、大切な商品でもありました。漁業との関わりが深かったえびす様への信仰は、時代とともに商人たちにも広がっていったのです。商家では、同じく福の神である大黒天とえびす様を一緒に祀る習わしも広まりました。「えびす大黒」という組み合わせを見かけるのは、そのためです。
【「えびす講」では何をする?神社と家庭での祝い方】
■神社では…
「えびす講」の時期には、えびす様を祀る神社で祭礼が行われ、商売繁盛や家内安全などを願う参拝者でにぎわいます。
地域によっては、神社の境内や周辺に露店が並び、「えびす市」と呼ばれる市が開かれることもあります。商売繁盛を願う縁起物が売られるほか、土地によっては農産物や日用品などが並び、地域の人々に親しまれてきました。神社によって祭礼の内容や参拝の作法は異なりますが、えびす様に日々の恵みへの感謝を伝え、これからの商売や暮らしの繁栄を願うことが、行事の中心です。
■家庭では…
「えびす講」は、神社だけでなく、家庭でも行われてきた行事です。
えびす様の神像や掛け軸を祀り、供え物をして家族でお祝いするのが、昔ながらの習わし。地域によっては、親戚や知人を招き、ごちそうを囲んでお祝いする風習もあります。農村では、えびす様を田畑の仕事に関わる神様と考え、農作業の節目にお祝いする地域もありました。
現在も祝い方は地域や家庭によってさまざまですが、神様に感謝し、これからの福を願う気持ちは共通しています。
【「えびす講」のお供え物は?地域によって異なる食べ物や縁起物】
■鯛や魚
えびす様といえば、釣りざおを持ち、鯛を抱えた姿がおなじみです。十日恵比須神社は、御神像や掛け軸に鯛や地元の食材を供える例を紹介しています。また、宇都宮の資料には、尾頭付きの魚をそばや餅、けんちん汁とともに供え、生きた魚を丼などに入れて供える例も記されています。かつては生きたフナを水を張ったたらいに入れ、えびす様にお供えする習わしもありました。
魚を供えるのは、豊漁をもたらす神様への感謝や、これからの豊かな恵みを願う気持ちの表れと考えられています。
■財布やお金を一升枡に
地域によっては、枡に小銭や財布を入れて供える風習もあります。宇都宮では、お金が「ますます」入ることを願い、小銭を入れた一升枡を供える習わしが紹介されています。
また、東京都小平市の熊野宮は、地域の家庭で福升に財布を入れて供える風習を伝えています。
【「えびす講」と「十日えびす」「酉の市」の違いは?】
■「十日えびす」との違いは?
「十日えびす」は、毎年1月10日を中心に行われる、えびす様のお祭りです。特に関西で盛んで、「えべっさん」の愛称でも親しまれています。
有名なのが、兵庫県西宮市の西宮神社で行われる「十日えびす」。1月9日の「宵えびす」、10日の「本えびす」、11日の「残り福」と、3日間にわたって多くの参拝者でにぎわいます。10日の早朝に行われる「開門神事福男選び」も、ニュースなどでおなじみですね。商売繁盛を願う参拝者が「福笹」などの縁起物を求めるのも、このお祭りの特徴です。
一方、「えびす講」は、えびす様を祀る地域や家庭の行事などを指し、開催日は土地によって異なります。1月の祭事を「えびす講」と呼ぶ例もあります。
■「酉の市」との違いは?
一方、「酉の市(とりのいち)」は、えびす様を祀る行事とは由来が異なります。
「酉の市」は、毎年11月の「酉の日」に、主に鷲神社や大鳥神社などで行われる祭礼です。商売繁盛や開運招福を願うお祭りとして知られ、特に関東地方で盛んに行われています。
代表的な縁起物は、福をかき集めるとされる「熊手」。おかめの面や小判、米俵などを飾った華やかな熊手がずらりと並ぶ光景は、酉の市ならではの風物詩です。11月の酉の日は年によって2回、または3回あり、それぞれ「一の酉」「二の酉」「三の酉」と呼ばれます。
2026年の酉の日は11月7日(土)と19日(木)で、浅草の鷲神社では、それぞれ「一の酉」「二の酉」が行われます。
「えびす講」「十日えびす」「酉の市」は、いずれも商売繁盛を願う行事ですが、『酉の市』は祀る神様が異なり、開催時期や縁起物にもそれぞれ特色があるのです。
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旧暦10月は、全国の神々が出雲に集まるとされる「神無月」。ところが、えびす様は土地に残って人々を守る「留守神」だという言い伝えがあります。神様の世界にも「お留守番」があるとは、ちょっとおもしろいですね。
しかも、えびす様は七福神のなかで唯一、日本に由来する神様です。商売繁盛の福の神として親しまれる一方で、地域の暮らしに寄り添ってきた存在でもあるのです。「えびす講」の季節には、そんな身近な福の神に、日頃の感謝とこれからの幸運を願ってみてはいかがでしょうか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /神奈川県立歴史博物館「エビス講」(https://ch.kanagawa-museum.jp/monthly_choice/2021_11) /宇都宮の歴史と文化財「恵比寿講」(https://utsunomiya-8story.jp/archive/contents_05/co_43/) /伊勢原市「エビス講」(https://www.city.isehara.kanagawa.jp/bunkazai/docs/2012100400411/) /長野市「全国の花火ファンを魅了し続ける長野えびす講煙火大会」(https://www.city.nagano.nagano.jp/n042000/contents/p016432.html) /西宮神社(https://nishinomiya-ebisu.com) /鷲神社「酉の市とは 御由緒」(https://otorisama.or.jp/sm/torinoichi/) :

















